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高速ディジタル移動通信の多重波伝搬と変復調方式の研究

 自動車電話、携帯電話に代表される移動通信は最近の通信のパーソナル化の動きと相まってますます重要度を増し、特に最近はディジタル化とマイクロセル化による大容量化が進められつつある。しかし需要の集中する市街地やビルの内部では、電波は複数の伝搬路を経て受信点に到達する多重波伝搬となり、受信信号波形はひずみを受けてビット誤り率が著しく劣化する。

 吉田進氏、竹内勉氏、池上文夫氏は、早くから将来の高速ディジタル移動通信を予見し、その特性に最も重大な影響を与える多重波伝搬と、アンテナならびに通信方式の研究に取り組み、特色ある顕著な成果を挙げた。すなわち、誤り率劣化の最大の原因である多重波伝搬の物理的構造を研究し、多重波発生の機構とその特性を解明した。この成果は、平均電界強度の理論的予測や指向性ダイバーシチ受信などの独創的な新概念を生み、その後の誤り率特性の解明や多重波の理論的予測の研究に指導的役割を果たした。

 更に、高速のディジタル伝送における周波数選択性フェージングによる誤りの発生をミクロに観測・解析して、バースト誤りのメカニズムを物理的に解明した。すなわち、バースト誤りは、フェージングに伴う急激なアイパターンの時間揺らぎに受信機のクロック再生回路が追従できないために発生し、SN比が十分高くアイパターンが閉じないときでもバースト誤りが発生し、いわゆるフロア誤りが生ずることを、理論および実験により明らかにした。

 この結果を基に、三氏はDSK、マンチェスター符号化PSK、PSK-RZなど、多重波伝搬に強い耐多重波変調方式を新たに提案した。この方式は占有帯域幅が2倍に広がるものの、多重波の遅延時間差がある値以下ならば多重経路ダイバーシチ効果により多重波がないときよりもビット誤り率が著しく改善される。発生した誤りを軽減する従来の対策とは全く異なり、バースト誤りの発生機構の解明により誤り発生の原因を除去するという画期的発想の変調方式である。

 三氏は送受信機を試作して京都市内で野外実験を行い、実環境で誤り率と多重波遅延プロフィールの両者を比較測定することにより、誤り率と多重波の微細構造の詳細な関係を解明した。更に、多重波遅延時間が耐多重波変調方式の有効範囲にあるとき、優れた耐多重波効果をもつことを実際に確認した。逆にこの結果はバースト誤りの主な原因がアイパターンの急激な揺らぎであることを実証した。

 また最近では、BPSK、QPSK変調方式を採用したディジタル移動通信において、通信品質の評価尺度となる多重波の遅延分散に対応する実行遅延時間を測定する手法を提案した。この方法は、ディジタル移動通信の情報伝送中に、特殊な信号を用いず極めて簡易にリアルタイムで通信品質を監視する方法として多方面で注目されている。

 以上のように、三氏は高速ディジタル移動通信に関する先駆的な研究を行い、移動通信における電波の伝搬現象と、アンテナ、通信方式の物理的関係を解明して三者を一体化する研究によりユニークな数多くの成果を挙げており、ディジタル移動通信研究の進展に大きく貢献した。

 この技術に対して、電子情報通信学会は、1993年、吉田進氏、竹内勉氏、池上文夫氏に業績賞を贈った。


文献

[1] S. Yoshida, F. Ikegami, and T. Takeuchi、Causes of burst errors in multipath fading channel、1988年、IEEE Trans. Communications, vol.36, no.1
[2] S. Ariyavisitakul, S. Yoshida, F. Ikegami, and T. Takeuchi、A novel anti-multipath modulation technique DSK、1987年、IEEE Trans. Communications, vol.35, no.12
[3] 吉田 進、池上文夫、竹内 勉、耐多重波変復調方式について、1990年、電子情報通信学会論文誌、J73-B-Ⅱ巻、11号
[4] S. Yoshida, F. Ikegami, and T. Takeuchi、On anti-multipath modulation/demodulation techniques、1990年、Trans. IEICE, vol.J73-B-II, no.11

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キーワード

ディジタル移動通信、多重波伝播、耐多重波変調方式、携帯電話、無線通信システム
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