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移動体衛星通信の研究開発

Lバンドアンテナカバレッジ

図1 Lバンドアンテナカバレッジ

実験システムの概念図

図2 実験システムの概念図

航空機搭載アンテナ

図3 航空機搭載アンテナ

 衛星通信の実用化から約30年、衛星通信は成熟期に入ったといえる。しかるに、極最近まで国際線の航空機ではテレビはもちろん、電話すら不可能であった。船舶についても一部の大型船舶を除き状況は同様である。

 郵政省および運輸省では、宇宙通信の恩恵から遠く取り残されている航空機や小型船舶の情報通信環境の抜本的な改革のため、両省および宇宙開発事業団が共同で開発した技術試験衛星V型(ETS-V)を用いて航空機、小型船舶、自動車などを対象とした移動体衛星通信システムの研究開発を進めてきた。ETS-V衛星を用いた実験は、陸海空のすべてにわたり行われ、研究成果も移動体搭載用アンテナ、伝搬特性、通信方式、伝送品質、航行援助等多岐にわたる。

 小型船舶を対象とした衛星通信では搭載アンテナの高能率・小型化、および小型化に伴う海面反射によるフェージングの除去が大きな研究課題であった。小型化はショートバックファイアアンテナの改良により小型で高能率・高利得を実現した。フェージング除去については、海面反射フェージング取得の実験を行うと共に理論的検討を進め、波の高さとフェージングの関係を解明すると共に海面反射波と円偏波アンテナの特性を有効に利用したフェージング除去アンテナを提案し、実験的にその有効性を実証した。本方式の検証を含め、実験は太平洋上で行われ、通信実験、測距実験、伝送品質評価実験、船上構造物による衛生信号のプロッキング等多くの研究成果をあげた。

 航空衛星通信においても、搭載用高利得フェーズドアレーアンテナおよび通信機器を研究開発し、世界初の商用定期航空機に搭載しての通信実験に成功した。また、将来の衛星を用いた航行援助システムの研究開発のために、低利得アンテナを搭載した航空機を用いて、洋上航空管制用の通信実験を行うと共に、ETS-V衛星と地上模擬との2機の静止衛星を用いた測距・測位実験を行い、実用化への見通しを得た。本研究開発の成果の一部である航空機搭載アンテナは既に商用航空機に搭載されて実用に供されている。

 陸上移動の分野でも樹木、建物によるブロッキングのデータ取得、その定量的解析等を進め衛星通信の適用範囲を明らかにしたり、陸上移動通信環境に適した通信方式の研究開発を進めた。また、商用システムの導入を計画しているオーストラリアからは共同実験の提案がなされるなど、国際的にも評価が高い。

 これらの多彩な実験による取得データや明らかにされた研究成果は、国内の関連機関のみでなく国際無線通信諮問委員会(CCIR)および国際民間航空機関(ICAO)へも提出されており、「移動体衛星通信システム」の開発・規準作りに大きく貢献している。

 近藤喜美夫氏、大森慎吾氏、石出明氏は、本計画の推進、実験の実施および研究の推進において中心的な役割を演じ、移動体衛星通信システムの研究開発を総合的に集大成した。衛星通信にとってまだ多くの未開発の分野が残っていた「移動体衛星通信システム」の研究開発にいち早く取り組み、世界に先駆けて多くの研究成果をあげたことは、移動体衛星通信分野の発展に大きく寄与した。

 この技術に対して、電子情報通信学会は、1992年、近藤喜美夫氏、大森慎吾氏、石出明氏に業績賞を贈った。


文献

[1] S. Ohmori, A. Irimata, H. Morikawa, K. Kondo, Y. Hase, and S. Miura、Characteristics of Sea Reflection Fading in Maritime Satellite Communications、1985年、IEEE Trans. AP-33, No.8, pp.838-845, Aug. 1985
[2] 近藤喜美夫、浜本直和、石出明、星野尾一明、山田重雄、二川憲夫、玉井保男、ETS-V搭載移動体通信実験用トランスポンダの設計と特性、1989年、信学論B-Ⅱ, Vol.J72-B-Ⅱ, No.7, pp.343-350, 1987
[3] K. Kondo, N. Hamamoto, A. Ishide, K. Hoshinoo, S. Yamada, N. Futagawa, and Y. Tamai、Design and Performances of Transponder on ETS-V for Mobile Communication Experiments、1989年、Trans. IEICE B-2, Vol.J72-B-2, No.7, pp.343-350, 1989
[4] 石出明、藤田光紘、奈須英臣、星野尾一明、伊藤実、新美賢治、山田多津人、西周次、技術試験衛星V型(ETS-V)を用いた航空機データ通信実験、1990年、日本航海学会論文集、82号、pp.113-119, 平成2年3月
[5] A. Ishide, M. Fujita, H. Nasu, K. Hoshinoo, M. Ito, K. Niimi, T. Yamada, and S. Nishi、Aeronautical Data Communication Experiment Using Engineering Test Satellite V (ETS-V)、1990年、Journal of Japan Institute of Navigation, 82, pp.113-119, Mar. 1990

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