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長距離大容量光通信用光半導体デバイスの開発

InGaAsP-DFB-DC-PBH単一波長半導体レーザの構造

図1 InGaAsP-DFB-DC-PBH単一波長半導体レーザの構造

InGaAs/InP-PLEG高感度プレーナ型APDの構造

図2 InGaAs/InP-PLEG高感度プレーナ型APDの構造

 近年、光通信システムの開発は、シリカ系単一モード光ファイバの低伝送損波長帯である1.3~1.5μm波長帯を用いた伝送システムの実用化推進と有効性確認の段階を経て、その可能性を大きく顕在化させる大容量化、長中継距離化へと進展している。このような光通信システムを実現する上で、鍵となるのが安定な単一軸モードで動作する半導体レーザと高感度の受光素子の開発・実用化である。

 光ファイバが波長分散特性を有することからギガビット帯伝送容量で数十kmの中継伝送を行うには、従来の多軸モード半導体レーザ光源に代わる単一波長動作半導体レーザの開発が必須となる。小林功郎氏、水戸郁夫氏は、そのころまだ発振がやっと確認された段階のInGaAsP/InP分布帰還形半導体レーザの開発に取り組み、1983年には単一波長動作cw光出力20mWと、通常動作出力レベルの5mWに対し十分高い値が得られることを示し、1985年には最大cw出力103mWの値を記録した。いくつかの構造が検討されていたなかで、分布帰還形半導体レーザが実用化に対し十分高い可能性を有することを実証したことは、以後の世界の研究開発の先導的役割を果たしたといえる。また、分布帰還形半導体レーザの主モードと副モード間の発振しきい値利得差が光ファイバ伝送特性に深くかかわることを実験的に見いだす一方、最大のしきい値利得差を有する位相シフト型の分布帰還形半導体レーザを開発し、Gbit/s帯高速変調における単一波長動作の安定性を確立する結果を導いた。

 田口剣申氏はInGaAs/InPなだれ増倍型受光素子の開発に取り組んだ。1982年、高純度のエピタキシャル層が得られるハイドライド気相成長法を用いて受光素子用の結晶薄膜成長を開始し、以後、酸素添加法等によりなだれ倍増に必要な1015/cm3の不純物キャリヤ濃度を実現した。直径数十μm受光部に高電界が印加されるなだれ倍増型受光素子では、pn接合面の曲率が最大になる受光部周辺部におけるブレークダウンの抑制が大きな技術課題である。田口剣申氏は、受光部周辺に二重にBeイオン注入を行いガードリング部のpn接合面の曲率を小さく設計した選択的横広がりガードリング構造を設計・製作することにより受光部とガードリング部のブレークダウン耐圧差を増大させた。耐圧差を増大させることは、なだれ増倍型受光素子の性能指数を示す利得・帯域の積を70GHzにまで向上させることを可能とし、更には生産性、信頼性の向上をもたらす結果を導いた。

 三氏が開発に取り組んだInGaAsP分布帰還形半導体レーザ、InGaAsなだれ増倍型受光素子は1988年に10Gbit/s-80kmという大容量、長距離の伝送実験を成功させるまでに性能が向上されている。商用の光通信システムでは565Mbit/s、1.12Gbit/sおよび1.6Gbit/s伝送システムの光源、受光素子として用いられている。十分な信頼性が確認されたことから、100km程度の中継距離が計画される海底中継光ケーブル通信システムへの導入も予定されている。

 この技術に対して、電子情報通信学会は、1989年、小林功郎氏、水戸郁夫氏、田口剣申氏に業績賞を贈った。


文献

[1] Kohroh Kobayashi and Ikuo Mito、High Light Output-Power Single-Longitudinal-Mode Semiconductor Laser Diodes、1985年、J. Lightwave Tech., vol.LT-3. no.6, pp.1202-1210, Dec. 1985
[2] Kohroh Kobayashi and Ikuo Mito、Single Frequency and Tunable Laser Diodes、1988年、J. Lightwave Tech., vol.6, no.11, pp.1623-1633, Nov. 1988
[3] Kenko Taguchi, Toshitaka Torikai, Yoshimasa Sugimoto, Kikuo Makita, and Hisahiro Ishihara、Planar-Structure InP/InGaAsP/InGaAs Avalanche Photodiodes with Preferential Lateral Extended Guard Ring for 1.0-1.6 um Wavelength Optical Communication Use、1988年、J. Lightwave Tech., vol.6, no.11, pp.1643-1655, Nov. 1988

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分布帰還形半導体レーザ、なだれ増倍型受光素子、半導体レーザ、受光素子、レーザ・量子エレクトロニクス
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