1. HOME
  2. 電気・情報関連(専門)
  3. 研究情報(登録番号955)

ディジタル信号処理に関する基礎的研究

 ISDN(Integrated Services Digital Network)あるいはINS(Information Network System)構想に見られるように、ディジタル化による通信網の一元化が進められている。また、通信以外の工学の諸分野においても、ディジタル化が盛んに推進され、高度情報化社会へ向けての準備が着々と進められている。こうした時代を担う技術として、情報のディジタル伝送ならびに記録、またそれに伴う各種のディジタル信号処理技術は、最も基本的かつ不可欠な技術の第1に挙げることができる。

 辻井重男氏は、早くからディジタル信号処理技術の重要性を認識し、ディジタル信号処理に関する方式の開発、設計論ならびに構成論に関する基礎的研究を行い、多くの新しい成果を挙げている。同氏の研究は、1次元ならびに多次元ディジタルフィルタの設計・構成論、エコーキャンセラや自動等化器等の適応型ディジタル信号処理方式に関するアルゴリズムの提案等多岐にわたり、これらの分野の進歩に大きく貢献した。

 同氏は、まず、整合Z変換されたディジタルフィルタの特性改善法を確立すると共に、けた加算型構成による効率の良い構成法を提案し、更に、仕様を満たすのに必要なフィルタ係数の最小語長を与える推定式を導出することにより、ディジタルフィルタの構成・設計論の基礎を確立した。

 また、PCM伝送に用いられる波形整形用フィルタとして、ディジタルナイキストフィルタの線形計画法による設計法を提案し、その設計手法を確立すると共に、波形の最適化ならびに波形等化の経済効果を含めた検討を行い、PCM伝送方式の基礎に大きく貢献した。

 更に、再帰型ディジタルフィルタで大きな問題となるリミットサイクルに関して検討を加え、リミットサイクルの上界を導出すると共に、その新たな軽減法を提案し、再帰型ディジタルフィルタの設計理論に大きく貢献した。

 次に、画像等のディジタル信号処理に必要となる多次元ディジタルフィルタに関し、その安定性判別法を理論的に確立すると共に、テゲール関数を用いた2次元再帰型ディジタルフィルタの設計法ならびに円形な減衰等高線を有する2次元フィルタの設計法を確立し、ディジタル画像処理の基礎に大きな一石を投じた。

 また、演算誤差のないことで注目されている数論変換を用いたディジタル信号処理方式に関して、新しいダイナミックレンジの拡大法を提案することにより、数論変換の応用分野を拡大し、新しい形式のディジタル信号処理方式の道を開いた。

 更に、インパルス応答長の長いシステムに対するエコーキャンセラとして、再帰型構成のキャンセラを用いることを提案し、簡便な安定性判別の手法を与えると共に、それを応用した新形式のエコーキャンセラを提案した。

 以上のように、ディジタル信号処理の方式開発、設計ならびに構成理論に関する同氏の研究は、多くの有用な信号処理手法の基礎を与えるものであり、これらの分野の発展に大きく寄与するものと考えられる。

 この技術に対して、電子通信学会は、1985年、辻井重男氏に業績賞を贈った。


文献

[1] 辻井重男 他、ディジタル信号処理、1975年、電子情報通信学会出版
[2] 辻井重男 他、ディジタル信号処理の基礎、1988年、電子情報通信学会出版
[3] 趙 晋輝 辻井重男、ダブルトーク期間において制御可能な3端子対エコーキャンセラーの提案、1988年、電子通信学会論文誌 Vol.J71-A No.2
[4] 辻井重男、他7名、ディジタル信号処理の応用、1981年、電子情報通信学会出版
[5] 辻井重男、伝送回路、1983年、コロナ社
[6] 辻井重男、久保田一、古川利博、趙晋輝、適応信号処理、1991年、昭晃堂
[7] 辻井重男、林達城、波形整形伝達関数の一近似法とPCM通信への応用、1969年、電子通信学会論文誌 vol. J52-A no. 4
[8] 高橋貞良、辻井重男、画像処理用2次元巡回型ディジタルフィルタのラゲール関数による設計法、1977年、電子通信学会論文誌 vol. J60-A no.1
[9] 枝並隆文、辻井重男、数論変換を利用したディジタルフィルタの新しい構成法、1981年、電子通信学会論文誌 vol. J64-A no. 12
[10] 趙晋輝、エクトル・ペレス、辻井重男、適応信号処理における跳躍アルゴリズムの提案、1990年、電子通信学会論文誌 vol. J73-D-1 no. 7

関連する研究を検索

分野のカテゴリ

通信
(電子情報通信の基礎・境界技術)

関連する出来事

データなし

世の中の出来事

1985
つくば市で科学万博が開幕する。
1985
電電公社が民営化され、NTTが発足する。

Webページ

データなし

博物館等収蔵品

データなし

キーワード

ディジタルフィルタ、エコーキャンセラー、最適化アルゴリズム、ディジタル信号処理
Page Top