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極低損失長波長帯光ファイバの研究

極低損失長波長帯光ファイバの伝送損失特性

図1 極低損失長波長帯光ファイバの伝送損失特性

極低損失長波長帯光ファイバ断面の干渉顕微鏡写真

図2 極低損失長波長帯光ファイバ断面の干渉顕微鏡写真

極低損失長波長帯光ファイバの伝送損失要因の解析結果

図3 極低損失長波長帯光ファイバの伝送損失要因の解析結果

石英系光ファイバの損失機構モデル

図4 石英系光ファイバの損失機構モデル

 伝送媒体としての光ファイバの低損失化は、光伝送方式を実用化する上で重要な課題の1つである。光ファイバの伝送損失は、(1)材料による吸収損失、(2)コアの屈折率のゆらぎによるレイリー散乱損失、(3)コア・クラッド境界の不完全性による散乱損失、および(4)曲がり並びに接続により損失などに分類される。この中で、光ファイバ自身の低損失化には、材料中の不純物に基づく吸収損失の低減および導波構造の精密制御による散乱損失の抑制が最も重要である。

 堀口正治氏、小山内裕氏は、日本電信電話公社が1975年(昭和50年)度に開始した「光ファイバケーブル技術」に関する電線メーカ(古河電工(株)、住友電工(株)、藤倉電線(株))との共同研究推進の中で、光ファイバの吸収損失の主要因であるOH基の徹底的な除去を可能にしたガラス合成系の完成と導波構造の精密制御の達成、更に可視から近赤外波長領域まで高精度に測定できる光全損失自動測定技術の開発などにより、伝送損失に関しては極限にせまる極低損失光ファイバの実現に成功した。

 この光ファイバのOH基含有量は50ppb程度であり、従来の低損失光ファイバと比較して2けた以上の低減化が達成されており、その技術は世界で群を抜いたものである。

 又、この光ファイバの伝送損失特性は、波長1.20μmにおいて最低損失0.47dB/kmで極めて小さいだけでなく、波長0.95~1.37μmの広範囲にわたって1dB/km以下という画期的なものである。

 従来報告されている光ファイバの低損失波長領域は、半導体レーザ光源の波長0.85μm付近および固体レーザ光源の波長1.05μm付近とされているが、この研究の結果、光ファイバ固有の最低損失領域が更に長波長帯において存在することを明らかにし、これまでの概念を大きく変えた。又、材料分散が零になると理論的に推定される波長1.27μmで最低損失が実現されることを実証した意義も大きい。

 これらの成果は、光ファイバの伝送損失機構の解明に曙光をあてると同時に、国内外に対して、長波長帯用光源の開発をはじめ、光伝送方式の研究に多大の刺激を与え、新しい研究課題を提起している。

 以上述べたように、両氏のこの研究成果は、光通信方式の研究範囲を拡大し、我が国のこの分野における水準を更に高めた。

 この技術に対して、電子通信学会は、1977年、堀口正治氏、小山内裕氏に業績賞を贈った。


文献

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[7] M. Horiguchi and H. Osanai、Spectral loss measurement of low-OH-content optical fibers in the near-infrared region、1977年、Proc. of the 1977 IEICE Spring Conference, No.4, pp.125, in Japanese
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[11] M. Horiguchi、Study on transmission characteristics measurement of silica fibers for optical communication、1981年、Doctoral Thesis, University of Tokyo, No.5747, in Japanese
[12] M. Horiguchi and H. Osanai、Commentary on 'Spectral losses of low-OH-content optical fibers' (Electronics Letters, Vol.12, No.12, pp.310-312, 1976).、1986年、Contemporary Classics in Engineering and Applied Science, ISI Press, Philadelphia USA, pp.165, ISBN 0-89495-068-1
[13] M. Horiguchi and H. Osanai、Spectral losses of low-OH-content optical fibers、1989年、Electronics Letters, Vol.22, 25th year publication, pp.S20-S21
[14] J. Hecht、City of Light: The Story of Fiber Optics、1999年、Oxford University Press, Inc., Chapter 14, pp.176-200, ISBN 0-19-510818-3 & 0-19-516255-2
[15] J. Hecht、Building a fiber-optic communication industry、2001年、Optical Society of America, Optics & Photonics News, Special Issue Fiber Optics, March 2001, pp.22-26.

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