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新しい回路網論の体系化

 回路網理論は、フォスタによるリアクタンス定理の発見と、ブルネによる(一変数)正実関数の提案を端緒として、美しい理論体系に発展し、現在では単に電気回路に関する理論として用いられるばかりではなく、広く線形システム理論の分野に適用領域を持つ、応用数学の典型的な一部門とみなされるに至っている。

 さきに、尾崎弘氏は従来の一変数の正実関数を拡張して、新しく多変数正実関数という概念を導入し、回路網理論の発展に新しい途を拓いたが、この成果は世界の注目を浴び、以後現在に至るまで十数年間、この関数の理論と応用に関して国内および国外において活発な研究がなされてきた。特に、この理論は集中定数素子と分布定数素子の混在する系の取扱いに多くの成果が得られている。

 ところで、従来の回路網理論では、「(i)変数Piで表される関数は複素周波数Sの正実関数である。(ⅱ)Piで表される素子(順素子)に対してPi-1で表される素子(逆素子)が定義されていなければならない」という制約がその根底に潜在していた。

 今回、同氏は回路網理論を線形システム理論の1つの体系とする立場から、このような制約条件を取り除き、回路網は素子と接続という2つの概念から成るものと規定し、素子とは変数Pi、Pi-1、又は正の実数に1対1に対応するものなら何でもよいとし、且つ接続とはグラフと理想変成器(ジャイレータを加えることもある)であると定義して、回路網の概念を大幅に拡張した。そして、このような新しい概念と定義とによって一般化された広義の回路網を、まずリアクタンス回路とそれ以外の回路とに二分し、その各々をPi-1に対応する素子(逆素子)が全く含まれていない(又は定義されていない)もの、一部の変数についてだけ定義されているもの、及びすべての変数についてだけ定義されているもの、の3つに分け、結局すべての回路網を合計6種類の場合に分類し、これら6種類の回路網の数理的モデルとして、それぞれ多変数正実関数の組を定義して、これらの関数の諸特性を解明している。

 この理論体系は、回路網理論の取り扱う範囲を飛躍的に拡大し、回路網理論発展の新しい扉を開いたものである。

 この技術に対して、電子通信学会は、1976年、尾崎弘氏に業績賞を贈った。


文献

[1] 尾崎弘、理想変成器を含まない対称RC三端子回路網の構成について、1952年、電気通信学会雑誌、35巻、9号
[2] 尾崎弘、RC伝送函数の実現について、1953年、電気通信学会雑誌、36巻、7号
[3] 尾崎弘、RC伝送函数の必要充分条件について、1955年、電気通信学会雑誌、38巻、1号
[4] H.Ozaki and J.Ishii、Synthesis of transmission-line networks and the design of UHF filters、1955年、IRE Trans. Circuit Theory, vol.CT-2, no.4
[5] H.Ozaki and J.Ishii、Synthesis of a class of strip-line filters、1958年、IRE Trans. Circuit Theory, vol.CT-5, no.2.
[6] H.Ozaki and T.Kasami、Positive real function of several variables and their applications to variable netsorks、1960年、IRE Trans. Circuit Theory, vol.CT-7, no.3.
[7] 保田豊、嵩忠雄、尾崎弘、渡部和、±R.L.C.はしご回路の構成、1962年、電気通信学会雑誌、45巻、5号
[8] I.Shirakawa, H.Takahashi, and H.Ozaki、Synthesis of some classes of multivariable cascaded transmission-line networks、1968年、IEEE Trans. Circuit Theory, vol.CT-15, no.2.
[9] 尾崎弘、回路網理論の形式的定義と新しい多変数正実関数の組、1974年、電子通信学会論文誌、57-A巻、5号
[10] 尾崎弘、多変数正実関数の分類とその上半面・右半面特性、1974年、電子通信学会論文誌、57-A巻、8号

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キーワード

回路網理論、線形受動回路、集中・分布定数素子混在系、多変数正実関数、可変回路、回路とシステム、その他(通信一般)、その他(電気・電力一般)
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