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低温不活性化の研究と開発

 半導体表面を不活性化しその特性を安定化することは半導体素子開発以来の懸案であり、特に最近大形システムへの半導体素子の適用と相まって高信頼化という面から重要視されている。

 シリコンを主材料とする半導体素子では、シリコンの表面を酸化して形成したSiO2膜を結合構造形成の過程で不純物拡散マスクとして使用し、これをそのまま素子表面に残すいわゆるプレーナ法が広く工業的に用いられている。この方法は接合構造の形成と表面不活性化を同一プロセスで行なう利点をもつが、それぞれのプロセスを最適化してさらに素子特性を向上させることは困難であり、特にトランジスタの雑音、増幅率、逆耐圧など表面特性によって主として支配される特性量の改善については限度があった。

 伴野正美氏、徳山巍氏、山本雅幸氏らは、1961年(昭和36年)ごろからこの問題解決のため接合構造形成後の半導体表面に接合を破壊しない低温で不活性化処理を行なうべく基礎的研究を開始し、1964年(昭和39年)には研究成果を応用してPM形トランジスタを開発しメサ形で表面不活性化のための被膜を備えた特長ある製品を世に送り出し、さらに研究を進めて電力用高逆耐圧PM形トランジスタを製品化し、1968年(昭和43年)についに量産性、高信頼性、低雑音性、レジンモールド化の特長をもったLTPトランジスタ(Low Temperature Passivation)を開発し量産化して半導体表面の低温不活性化技術の大規模工業化に成功した。

 三氏らはこの開発を通じて表面不活性化の被膜を従来のSiO2から鉛、アルミニウム、燐、硼素等金属の酸化物を含むシリケートガラスへと材料的に一般化し、これにより耐湿性など不純物透過能の制御とシリコン表面特性の制御を同時に行なう多層膜構造のガラス被膜を開発し、高信頼性レジン素子の技術的基礎を確立している。さらに被膜形成時の基板前処理の改善から従来不可能とされて来た低周波雑音の著しく低いトランジスタを量産的規模で製造する技術を開発している。

 これら開発された半導体素子は各種用途に広く用いられているが、中でも低雑音トランジスタはステレオ用として高く評価されている。

 三氏の業績は単に半導体素子の製造技術を開発したというにとどまらず、従来主として米国技術に依存してきたわが国の半導体工学の脱皮の契機を与えるものとして大きく寄与するものと考えられる。

 この技術に対して、電子通信学会は、1969年、伴野正美氏、徳山巍氏、山本雅幸氏に業績賞を贈った。


文献

[1] 徳山 巍、二層構造酸化物被膜によるシリコン表面の安定化、1966年、電気通信学会誌、Vol.49, pp.1335-1342, 1966
[2] 徳山 巍、山本雅幸、LTPトランジスタ、1969年、応用物理、Vol.38, pp.121-125, 1969
[3] 徳山 巍、半導体素子の表面安定化処理法、1967年、電気化学、Vol.35, pp.67-73, 1967
[4] T. Tokuyama, T. Miyazaki and M. Horiuchi、Low-Temperature deposited Glass for Passivation of Semiconductor Devices、1969年、Thin Film Dielectrics, Electrochem. Soc. Inc., New York 1969, pp.297-326
[5] T. Tokuyama、Passivation of Silicon Devices by Two Layer Oxide Coating、1965年、Electrochem. Soc. Extended Abstract 1965, San Francisco Mig, No.92, 1965

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表面不活性化、低温不活性化、シリコン材料・デバイス
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