1. HOME
  2. 電気・情報関連(専門)
  3. 研究情報(登録番号903)

近距離24通話路PCM方式の実用化

 近年における搬送技術の発展はめざましいが、端局装置の価格がいまだに高いため20km以下の短距離においては搬送方式は有利ではなかった。

 日本においてPCM通信方式の基礎研究は戦争直後から多く行なわれたが、実用にはふみきれなかった。有線分野における実用のためには、現実の線路の高周波における特性が不明であり、かつ多中継に関する実験を欠いていたので方式としてまとまらなかったのである。

 1963年(昭和38年)電電公社が従来の研究に基づき、端局装置の経済化を見通して、短距離PCM方式の実用化を開始して以来、熊谷伝六、前田光治、村上隆一の3氏はこの仕事の中心的推進者として活躍してきた。すなわち第一に線路の特性を見出すため、4MHzまでにわたりペアケーブルの特性を実線路につき広く測定し、一方中継器の符号誤り累積特を実際に検討したのち、最終的な設計に入り多くの改良を施してシステムを完成した。

 特に注意すべき点としては、端局装置において数多く使用する双安定回路にトンネルダイオードとトランジスタの対を利用することにより従来の設計にくらべ、回路の簡単化、消費電力の著しい減少を図ったこと、これにより圧縮器および符号器を従来の二群構成から一群構成へと進歩させたこと、また共通回路の監視については新しく無通話時監視方式を採用し、監視用の特殊ビットを不用としたことがあげられる。また中継器については、架空ケーブル区間に本方式を適用する場合にも、広範囲の温度変化に耐えうるよう回路の改良によりS/Nの改善と符号誤りに対する余裕度の向上に成功したため、中継間隔を短縮する必要はなくなった。

 設計にあたって部品の故障率を十分検討したため製品の性能もよく、一時困難視されたダイオードによる圧伸器も恒温槽等の改善により所要の性能をみたしている。実装に対する配慮の結果、1架に120通話路を収容することも可能となった。

 1965年(昭和40年)より行なわれた商用試験の結果は良好でPCM方式がきわめて安定であること、また端局装置の低廉なため経済的な方式であることを実証した。

 以上のような慎重な計画のもとに2年という短時日のうちに全く新しい通信方式を完成し、近距離通信に経済化をもたらすとともに、将来の大容量PCM方式の実現に対して幾多の明るい見通しを与えた点は大きな功績といえよう。またPCM通信を実用に供した実績のために最近海外へも輸出が行なわれるに至ったことは、日本の技術に大きな勇気を与えている。

 この技術に対して、電子通信学会は、1967年、熊谷伝六氏、前田光治氏、村上隆一氏に業績賞を贈った。


文献

[1] 前田光治、電気通信技術開発物語-ディジタル伝送技術編(その一)-、1994年、電気通信 vol.57, no.567 (平成6年3月号、電気通信協会発行)

関連する研究を検索

分野のカテゴリ

通信
(通信に係わる技術)

関連する出来事

データなし

世の中の出来事

1967
佐藤首相が非核3原則を掲げる。
1967
イタイイタイ病など公害による病が明らかとなる。

Webページ

データなし

博物館等収蔵品

データなし

キーワード

PCM通信方式、24通話路PCM方式、通信方式
Page Top