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スペクトル拡散通信モデムの開発と実用化

 人々の交流が世界規模に広がる高度情報化社会は、ユビキタス化が進むネットワークの進化とともに発展してきた。このネットワークのユビキタス化には高速・広帯域で、かつ高信頼性である無線通信技術が必要不可欠である。

 坪内和夫氏は、第3世代携帯電話方式に採用された符号分割多元接続(CDMA)方式の基本技術であり、IEEE802.11規格の無線LAN方式にも採用されている高信頼性・高速・広帯域無線通信方式であるスペクトル拡散(SS)通信技術の先駆的研究開発に携わってきた。

 雑音に強く秘匿性に優れたSS通信技術のかなめは、広帯域に拡散された受信信号に対して逆拡散を行う相関器である。1988年の開発当時、ディジタル集積回路など、通常の電子回路で相関器を実現する場合、同期をとるまでには長い時間を必要とし、高速・広帯域通信には不向きであった。一方、固体の表面を伝搬する音波である弾性表面波(SAW)は、伝搬速度が数km/sと電磁波に比べ非常に小さく、波の発生・検出・制御を固体表面上で実現し、素子の小型化が可能であることから、当時テレビ用IF帯フィルタとして実用化されていた。同氏は、SAW素子はSS通信の実用化のカギを握るデバイスとの視点から、ZnO/Si構造の高効率SAWコンボルバを考案し、自ら基礎研究から開発まで行った。更に、このSAWコンボルバを用いて、日本で初めて通信に成功した微弱無線用SSモデムを開発し、米国の900MHzバンドにおける実用化を行った。これは、日本におけるSS技術の先駆的研究成果であり、これを契機に日本国内における民生向け2.4GHz SSバンドの認可に至った。その後、日本のSSバンド認可第1号となるSS無線LANモデム開発をクラリオン(株)と共同で行うなど、実用に供するSS技術を積極的に研究開発してきた。

 現在は、東北大学電気通信研究所附属21世紀情報通信研究開発センター(IT-21センター)のセンター長として、情報通信研究の拠点の整備に注力している。また、平成14年度から5年間のプロジェクトである文部科学省・科学技術試験研究RR2002(次世代モバイルインターネット端末の開発)のプロジェクトリーダーとして、産学官連携で研究開発を行っている。これまでに5GHz帯324Mbit/s無線LAN装置を開発し、現在は60GHz帯1.5Gbit/s無線通信装置の開発を目指している。更に、その成果をもってIEEE802.11n委員会などにおいての標準化活動も行っている。

 以上のように、同氏はスペクトル拡散通信モデムの開発と実用化に関して、キーデバイスである高効率SAWコンボルバの研究・開発に始まり、IEEE802.11方式など、現在の無線LAN方式の先駆けとなるスペクトル拡散通信モデムの実用化に至るまで、基礎研究・開発を行うことで主導的役割を果たした。

 この技術に対して、電子情報通信学会は、2006年、坪内和夫氏に業績賞を贈った。


文献

[1] H. Nakase, A. Namba, K. Masu and K. Tsubouchi、Full-Duplex Asynchronous Spread Spectrum Modem Using a SAW Convolver for 2.4-GHz Wireless LAN、1994年、IEICE Trans. Commun., E77-B(7), 868-875 (1994)
[2] S. Minagawa, T. Okamoto, T. Niitsuma, K. Tsubouchi and N. Mikoshiba、Efficient ZnO SiO2 Si Sezawa Wave Convolver、1985年、IEEE Trans. Sonics and Ultrasonics, SU 32(5), 670-674 (1985)
[3] K. Tsubouchi and N. Mikoshiba、An Asynchronous Multi Channel Spread Spectrum Transceiver Using a SAW Convolver、1989年、1989 Ultrasonics Symposium Proceedings, Montreal, IEEE 89CH2791-2, 165-172 (1989)

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スペクトル拡散通信モデム、符号分割多元接続(CDMA)方式、弾性表面波(SAW)コンボルバ、スペクトル拡散、超音波、無線通信システム、変復調
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