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情報スペクトル理論の創始とその展開

 "情報理論"とは、一般に「情報」の変換・加工・伝送・蓄積などに関する数理的学問の総称である。学問体系としての情報理論は、ディジタル通信の黎明期であった1948年に、クロード E. シャノンが天才的洞察力によって創始したものである。それから半世紀を経た21世紀の今日では、情報理論とその実際的応用技術のレベルは、質、量共に目覚ましい発展を遂げ、正に隔世の感を禁じ得ない。その成功の鍵は、「符号化」という操作的・工学的概念を創出することによって情報理論を"工学的科学理論"として確立したことにあった。誕生以来様々な評価を受けてきた情報理論であるが、それが今や、高度情報化社会を担う情報通信技術の中核的理論体系を形成していることは何人も否定できないであろう。

 ところで、ディジタル情報通信技術に対する時代的要求は、加速度的かつ爆発的な勢いで増大し続けている。シャノン自身の予想をはるかに超える各種各様の複雑な情報源や通信路が現実のものとして登場し、情報通信技術の更なる革新が求められている。このような高度な情報通信における技術的諸課題を、理論的に正しく洞察し、解決するためには、既存の情報路論をひたすら外挿したり拡張するという従来の手法はもはや限界を迎えつつある。情報理論の体系自体を根本的に再検討することが求められている由縁である。

 このようなすう勢の中にあって、韓太舜氏は、情報スペクトルという画期的な理論方法論に立脚して、従来の情報理論を全面的に見直し再構築したうえで、情報スペクトル的新世界の全体像を我々の前に提示してくれた。"情報スペクトル理論"は、その一般性と簡明性に大きな特徴があり、同氏は既に情報理論の主要な分野である「情報源符号化」、「乱数生成」、「通信路符号化」、「仮説検定」、「レート・ひずみ理論」、「同定符号とResolvability」、「多端子情報理論」のすべてに対して、情報スペクトル的方法を適用することによって、それぞれの分野における最も一般的な公式を導出することに成功している。

 また、"情報スペクトル理論"は情報理論の枠組みの中のみではなく、統計学や量子情報理論との関連においても有効であることが示されている。実際、長岡(電通大)らは、情報スペクトル的方法を一種のガイドラインとすることによって、非常に一般的な新しい量子情報理論の体系を構築する試みをしており、既に幾つかの具体的成果を得ることに成功している。ここにおいては、ニュートン力学から量子力学への橋渡しを解析力学が果たしたと同様の動きを、古典的情報理論から量子情報理論への橋渡しを"情報スペクトル理論"が果たしていると見る研究者もいる。今後、その著しい特質である一般性と簡明性を徹底的に追及し、かつ適用範囲を拡大していくことによって、一般論の構築が難しいと考えられてきた情報理論的諸問題に対しても、新たな光を与えることが期待されている。

 以上のように、同氏が構築した"情報スペクトル"という理論的方法論は、既に国際的に大きな影響を与え、更に21世紀の情報科学、情報工学の発展に重要な指針を与えるものである。

 この技術に対して、電子情報通信学会は、2004年、韓太舜氏に業績賞を贈った。


文献

[1] Te Sun Han and Sergio Verdu、Approximation Theory of output statistics、1993年、IEEE Transactions on Information Theory},
vol.IT-39, no.3, pp.752-772, 1993
[2] Sergio Verdu and Te Sun Han、A general formula for channel capacity、1994年、IEEE Transactions on Information Theory},
vol.IT-40, no.4, pp.1147-1157, 1994
[3] Te Sun Han、Information-Spectrum Methods in Information Theory(book in English)、2003年、Application of Mathematics, Springer-Verlag, 2003

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