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大規模集積回路の設計自動化手法の先駆的研究

 近年の情報通信技術の急速な発展と普及と共に、各種システムの中核を形成する大規模集積回路の多様化・多機能化の傾向がますます増大し、これらの回路を短期間に設計する要求が極めて強くなってきている。特に半導体製造技術がサブミクロンからディープサブミクロン領域にまで遷移していく昨今、回路の集積度は急速に増加し、より高い設計技術ならびにその自動化が必要不可欠な状況に至っている。

 白川功氏は、長年にわたって大規模集積回路の設計手法、特にレイアウト設計に関する研究を進め、グラフ理論およびネットワーク理論的アプローチを導入することにより、幾多の革新的な手法を確立した。特に、一行配線手法、論理式からの自動レイアウト生成手法などを世界に先駆けて提案すると共に、実際の大規模集積回路に適用し有効性を確認した。これらは、現在産業界において自動設計システムとして実用化されている。また、従来から困難とされていた、並列回路解析やアナログ回路レイアウトの設計自動化なども本分野の発展に資するところ大である。

 同氏はまず、プリント基板配線や大規模集積回路の配線で利用される一行配線問題について、その最適解を求めるアルゴリズムを世界に先駆けて提案し、高密度プリント基板用自動配線システムを構築した。本アルゴリズムは、この最適配線経路を求める課題が最大の懸案事項であった当時では、世界の注目を浴びた卓越した業績であり、後の大規模集積回路のチャネル配線の自動化にも多大な影響を与えた。

 同氏はまた、電卓用のMOS型大規模集積回路向けのランダム論理部に対して、与えられた論理式群の入力からそのレイアウトを自動生成する手法、すなわちシリコン・コンパイレーション手法、を世界に先駆けて確立した。これは、論理式を表す根付木を構成し、これを基にレイアウトパターンを生成するものであり、複合ゲートも扱うことが可能な上に、自動生成されたレイアウトは当時主流であった人手設計の結果と比較して面積が1.2倍程度に抑えられているという極めて優れた成果が得られた。本研究は、現在一般に利用されている論理回路の自動レイアウト生成システムへの大きな指針となった。

 同氏は更に、大規模集積回路設計中特に困難とされていた過程の自動化について研究を遂行し、回路分割によるMOSディジタル回路を高速に解析する並列解析手法、信号の流れに沿ったバイポーラアナログ回路の自動レイアウト生成手法、ゲート敷き詰め型大規模ゲートアレーの分散処理による多層配線手法、製造プロセスの更新に必要なセルレイアウトの自動再生成手法、およびマイクロ波用高速集積回路のレイアウト手法など、幾多の革新的な設計自動化手法を確立した。

 以上のような同氏の一連の研究の中には、産業界との強い連携のもとに推進されたものも多く、その成果はアルゴリズムの提案だけにとどまることなく、広く実用的なシステムに組み入れられており、この分野の研究・開発の本来あるべき姿に一つの指針を与えた。

 このように、同氏は一貫して実用化を念頭に置きつつ世界に先駆けて大規模集積回路の設計自動化手法に関する研究を遂行した。

この技術に対して、電子情報通信学会は、1997年、白川功氏に業績賞を贈った。


文献

[1] 千葉徹、白川功、尾崎弘、配線問題における迷路法の多層基板適用への拡張について、1977年、電子通信学会誌論文誌、60-A巻、1号
[2] S.Tsukiyama, E.S.Kuh, I.Shirakawa、An algorithm for single-row routing with prescribed street congestion、1980年、IEEE Trans. CAS, CAS-27巻、9号
[3] 西岡郁夫、栗本卓治、西田久生、山本誠司、白川功、尾崎弘、会話型プリント基板設計システム、1979年、情報処理学会論文誌、20巻、6号
[4] I.Shirakawa, N.Okuda, T.Harada, S.Tani, and H.Ozaki、A layout system for the random logic portion of an MOS LSI chip、1981年、IEEE Trans. Computers, C-30巻、8号
[5] 原田育生、木本務、築山修治、白川功、ゲートアレイ方式LSIに対する一配置手法、1984年、電子情報通信学会論文誌、J67 - A 巻、12号
[6] 宇野祐史、熊谷貞俊、白川功、児玉慎三、MOSディジタル回路の並列解析、招待論文、1987年、電子情報通信学会誌、J79 -A 巻、3号
[7] K.Tani, S.Tsukiyama, S.Shinoda, and I.Shirakawa、On area-efficient drawings of rectangular duals for VLSI floor-plan、1991年、Mathematical Programming, 52巻、
[8] T.Shimamoto, I.Shirakawa, H.Hane, N.Yui, and N.Nishiguchi、A distributed routing system for multilayer SOG、1993年、Trans. IECE Fundamental, E76-A巻、3号
[9] Y.Shigehiro, T.Nagata, I.Shirakawa, I.Arungsrisangchai, and H.Takahashi、Automatic layout recycling based on layout description and linear programming、1996年、IEEE Trans. CAD of Integrated Circuits and Systems, 15巻、8号
[10] A.Nagao, I.Shirakawa, and T.Kambe、A layout approach to monolithic microwave IC、1998年、IEEE Trans. CAD of Integrated Circuits and Systems, 17巻、12号

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VLSI設計自動化、プリント配線基板配置配線、一行配線、シリコン・コンパイレーション、ゲートアレイ方式レイアウト設計、MOSディジタル回路の並列解析、矩形双対グラフによるフロアプラン、分散型多層配線、セルレイアウト自動再生成、方形パッキング、VLSI設計技術、回路とシステム、アルゴリズムとデータ構造、人工知能と知識処理
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