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低ビットレート高品質移動通信用音声コーデックの先駆的研究

 ディジタル方式携帯・自動車電話は、1993年(平成5年)3月のNTT移動通信網株式会社の商用開始以来、急速に普及し、現在ではすべての移動通信事業者がPDC(Personal Digital Cellular Telecommunication System)仕様に基づくディジタル移動通信サービスを提供している。その加入者数の急増には目を見張るものがあり、システム容量を大幅に増加させる技術を開発することが急務となっていた。

 現行のPDCでは、音声符号化アルゴリズムとしてフルレートとよばれる11.2kbit/s VSELPを用いているが、これと同等以上の音声品質と符号誤り耐性を有する半分の情報量の符号化方式(ハーフレート方式)を公募することになった。もしこれが実現されれば容量の倍増と送信電力の半減という大きな利点が生じるが、フルレート方式も1990年の標準化当時としては、最高の技術であったため、短期間でのハーフレート化は極めて困難とみられていた。守谷健弘氏、三木俊雄氏は、この課題の克服に中心となって貢献した。

 両氏は、ディジタル移動通信方式がアナログ方式と比較して電波利用効率、誤り耐性、コストなどすべての点で不利であった1980年代前半より、移動通信に適した音声符号化の研究開発に取り組んできた。冗長性を除去する情報圧縮と冗長性を付加する誤り耐性改善という一般的には矛盾する概念の両立を図るために、演算量やメモリ量、誤り耐性に利点をもつ2チャネルベクトル量子化や、少ない冗長ビットで効果を上げるビット選別誤り訂正法(BS-FEC)などを開発してきた。これらの手法はLSI製造技術の飛躍的進歩とも相まって、移動通信のディジタル化の大きな流れを作ることになった。

 両氏は、これらの先駆的研究開発の蓄積の上に新たな考案を加え、PSI-CELPと名付けられたアルゴリズムにまとめることにより、わずか3.45kbit/s(誤り訂正を含め5.6kbit/s)という低いビットレートでフルレートと同等以上の音声品質を達成することに成功した。これは、公衆移動通信サービス用の音声コーデックとしては、世界で最も低いビットレートである。

 PSI-CELPは低ビットレートでの品質改善効果が大きいピッチ同期励振技術が名前の由来となっている。上述の2チャネルベクトル量子化、BS-FECもより高性能化されており、更に伝送路符号の割当最適化、背景雑音抑圧など20件近くの特許出願技術が総合的に最適設計されている。

 これらの新技術を取り入れた実時間動作コーデックは、電波システム開発センターが実施したコンテストにおいて、多数の提案の中で唯一要求条件を満足することが立証され、PDCのハーフレート方式に採用された。この技術が開発されていなければ、ハーフレート化の大幅延期による深刻な電波帯域不足への懸念や、移動通信以外の幅広い応用分野への適用性があることを考えると、この技術の意義の大きさは計り知れない。

 以上のように、両氏は低ビットレート高品質移動通信用音声コーデックに関する先駆的な研究を行い、PSI-CELPや誤り保護技術の考案等により、音声符号化およびディジタル移動通信分野の研究開発の進展に大きく貢献した。

 この技術に対して、電子情報通信学会は、1995年、守谷健弘氏、三木俊雄氏に業績賞を贈った。


文献

[1] 三樹聡、守谷健弘、間野一則、大室仲、、ピッチ同期雑音励振源をもつCELP符号化(PSI-CELP)、1994年、電子情報通信学会論文誌、vol. J77-A, No. 3, pp. 314-324, 1994
[2] Hirohito Suda, Takehiro Moriya and Toshio Miki、An Error Protected Transform Coder for Cellular Mobile Radio、1991年、Advances in Speech Coding, Kluwer Academic Publishers, pp. 81-86, 1991.

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キーワード

移動通信、音声コーデック、携帯電話、PSI-CELP、音声・聴覚、無線通信システム
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