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情報セキュリティの基礎技術に関する先駆的研究

 情報システムの浸透、高度化によって深刻化するセキュリティ侵害やプライバシー侵害に効率良く対処し、安心して情報システムを利用できるようにすることが社会的に大きな課題となっている。情報セキュリティ技術はそのために開拓されてきたが、これにはまた、魅力的な新サービス、例えば、ソフトウェア流通、電子取引、電子決済、電子投票、分散共同作業、遠隔治療などの市場創造技術としての側面もあり、重要性を増しつつある。

 暗号技術は情報セキュリティ技術の中核をなす技術であり、情報の発生・加工・送受等の活動を行う多数の要素を含む世界において、特定の知識、または、その知識を内蔵する装置やプログラムを使えるか否かにより、ある操作を効率良く行えるか否かを制御し、守秘性や認証性等の、情報セキュリティを達成するための技術をいう。

 今井秀樹氏、松本勉氏は、1980年代はじめから暗号技術を中心とする情報セキュリティ技術に関する研究を行い、多くの独創的成果を挙げている。特に、1988年に提案した多変数多項式に基づく公開鍵暗号は、暗号研究の新たな分野を切り拓き、多くの研究がなされ、暗号の国際標準化にも大きな影響を与えた。この公開鍵暗号は現在、松本・今井暗号と呼ばれている。このほか、人間的要素を重視した個人識別方式にも取り組み、新しい研究分野を開拓しているが、以下では評価の確立している2点に絞り紹介する。

 第1は、依頼計算という新しい概念の創造と具体化である。依頼計算とは、計算能力は高いが必ずしも信用のおけない装置(サーバ)に秘密を漏らすことなく計算を依頼し、計算能力の低い装置における秘密計算の処理時間を短縮する方法である。典型的な状況は、電子取引において、秘密の署名鍵を格納したICカードが多数のディジタル署名を短時間で生成しなければならないときなどに生じる。従来は署名鍵をサーバに渡し、サーバに署名を生成してもらったため、サーバから署名鍵が他に流出する恐れがあったが、依頼計算によりこれを防ぐことが可能となった。これは、計算能力の低いICカードのような装置の可能性を飛躍的に高める。依頼計算は、多くの研究者によって引き継がれ、新しい研究分野を形成し、情報セキュリティ技術の基本的手法の一つになっている。

 第2は、大規模ネットワーク向きの暗号鍵共有方式KPSの発明と実用化である。大規模で開放型の計算機ネットワークが急速な勢いで普及すると共に、ネットワーク上でだれとでも手軽に暗号通信をしたいという要求が顕在化してきた。しかし、これは通信するもの同士が簡単に暗号鍵を共有する方法がない限り、容易なことではない。だれと暗号通信するかはあらかじめ決まっているわけではないし、ネットワークの形態も時々刻々と変化するからである。KPSという決定的な解決策により、通信できる相手となら、手軽に暗号通信ができる道が開かれ、今後の普及が期待されている。

 以上のように、両氏は暗号技術を中心とする情報セキュリティ技術に関して、先駆的かつ独創的な研究を行い、安全な情報化社会構築を目指すこの分野の進展に大きく貢献した。

 この技術に対して、電子情報通信学会は、1995年、今井秀樹氏、松本勉氏に業績賞を贈った。


文献

[1] T. Matsumoto and H. Imai、On the key predistribution systems: A practical solution to the key distribution problem、1987年、LNCS 293, Advances in Cryptology --- CRYPTO'87: C.Pomerance ed., Berlin, Springer-Verlag, pp.185-193(1988)
[2] T. Matsumoto, K. Kato and H. Imai、Speeding up secret computation with insecure auxiliary devices、1988年、LNCS 403, Advances in Cryptology --- CRYPTO'88: S. Goldwasser ed., Berlin, Springer-Verlag, pp.497-506(1990)
[3] Neal Koblitz、Algebraic Aspects of Cryptography、和訳:林彬訳「暗号の代数理論」シュプリンガー・フェアラーク東京、1998年、Springer-Verlag

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通信
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キーワード

依頼計算、暗号鍵共有方式KPS、暗号技術、松本・今井暗号、情報セキュリティ
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