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光ソリトン伝送技術に関する先駆的研究

 光ファイバ伝送方式が実用化されて以来、中継光伝送システムの性能向上は目覚しく、今や10Gbit/sのシステムが実用化されようとしている。しかしながら、来るべきマルチメディア通信時代の実現に向けて、アクセス系への光ファイバの導入と共に、より大容量の中継伝送システムが必要とされ、現在国内外の研究機関でさまざまな研究開発が進められている。

 このような超大容量伝送システム構築のための一つの有力候補が光ソリトン伝送方式である。通常の伝送方式では、ファイバ中を進む光パルスの幅が群速度分散の影響で伝搬距離と共に広がるため、[ビットレート×伝送距離]の値に上限が存在する。一方ソリトン波は、光ファイバ中の群速度分散と非線形光学効果が釣り合って、パルスが幅が広がらずに伝搬する波であるため、光損がなければ上記値の制限がなくなる特長を有している。

 このように光ファイバ中においても、異常分散と自己位相変調効果を釣り合わせることによりソリトン波が伝搬し得ることは、長谷川晃氏によって世界で最初に理論的に予測された。更に同氏と藤井陽一氏は、光ファイバに損失がある場合のソリトン伝搬特性を理論的に明確にすると共に、位相を考慮したソリトン相互作用、ラマン周波数シフトならびに高次分散の影響等の解析を行い、高速光ソリトン伝送技術の基礎理論を確立した。

 これらの検討を受けて、中沢正隆氏は光ファイバアンプ技術を駆使して、アンプを適当な間隔で設置することによりソリトンの多中継伝送が可能となるダイナミックソリトン法を提案し、実験室レベルで10Gbit/s、1.8億kmの周回伝送実験に成功し、ソリトン制御により伝送距離に制限がなくなることを理論的・実験的に示した。更に同氏は分散値がばらついている現実の光線路においても、平均として異常分散領域にあればソリトン伝送が可能であることを理論的に示すと共に、NTTが商用に使用している現場布設された中継光ファイバ伝送路を用いて、20Gbit/s、2,000kmの多中継伝送実験に成功した。

 以上のように、光ファイバ中をソリトン波が伝搬し得ることを初めて予測すると共に、その特性を理論的に詳細に明らかにしたこと、更に実際の光ファイバ伝送路を用いて、単純な構成で超高速・超長距離光ソリトン伝送システムが構築できることを実証したことは、我が国が世界に誇れる成果である。

 更に上述の光伝送分野での展開に加えて、藤井氏は光ソリトン技術の新しい展開として結合ソリトンやソリトンスイッチ等の新技術を提案しており、将来、光情報処理分野等への幅広い応用が期待される。

この技術に対して、電子情報通信学会は、1996年、中沢正隆氏、長谷川晃氏、藤井陽一氏に業績賞を贈った。


文献

[1] A. Hasegawa, and F. Tappert、Transmission of stationary nonlinear optical pulses in dispersive dielectric fibers, I. Anomalous dispersion、1973年、Appl. Phys. Lett., vol. 23, pp. 142-144 (1973).
[2] M. Nakazawa, Y. Kimura, and K. Suzuki、Soliton amplification and transmission with Er【上付き:3+】-doped fibre repeater pumped by GaInAsP laser diode、1989年、Electron. Lett., vol. 25, pp. 199-200 (1989).
[3] M. Nakazawa, K. Suzuki, and Y. Kimura、3.2-5 Gb/s, 100 km error-free soliton transmission with erbium amplifiers and repeaters、1990年、IEEE Photon. Technol. Lett., vol. 2, pp. 216-219 (1990).
[4] M. Nakazawa, K. Suzuki, H. Kubota, E. Yamada, and Y. Kimura、Dynamic optical soliton communication、1990年、IEEE J. Quantum Electron., vol. QE-26, pp. 2095-2102 (1990).
[5] M. Nakazawa, H. Kubota, E. Yamada, and K. Suzuki、Infinite-distance soliton transmission with soliton controls in time and frequency domains、1992年、Electron. Lett., vol. 28, pp. 1099-1100 (1992).
[6] M. Nakazawa, Y. Kimura, K. Suzuki, H. Kubota, T. Komukai, E. Yamada, T. Sugawa, E. Yoshida, T. Yamamoto, T. Imai, A. Sahara, O. Yamauchi, and U. Umezawa、Soliton transmission at 20 Gbit/s over 2000 km in Tokyo metropolitan optical network、1995年、Electron. Lett., vol. 31, pp. 1478-1479 (1995).
[7] 外林秀之, 藤井陽一、3コア光ファイバ非線形方向性結合器による光ソリトンスイッチングと結合ソリトン伝搬、1995年、電子情報通信学会論文誌C-I, vol. J78-C-I, pp. 157-165 (1995).
[8] A. Hasegawa, Y. Kodama、Solitons in Optical Communications、1995年、Clarendon Pr
[9] 藤井陽一 監修、ブロードバンド光ファイバ、2007年、シーエムシー出版, 第4章 ソリトン光通信システム

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光ソリトン伝送方式、エルビウム光ファイバ増幅器、ダイナミックソリトン法、光通信システム、レーザ・量子エレクトロニクス、光伝送、光エレクトロニクス
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