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国際長距離光海底ケーブル方式(OS-280M)の開発

光海底中継器の構成

図1 光海底中継器の構成

光海底ケーブルの構造図

図2 光海底ケーブルの構造図

OS-280M方式の主要諸元

表1 OS-280M方式の主要諸元

 1980年代、わが国の著しい国際化を反映して国際通信は年々増大し、伝送路の大容量化とサービスの多様化が求められていた。現在では、国際通信回線の90数%以上が海底ケーブルにより構成されており、国際伝送路の幹線である。1970年代までの海底ケーブルは、同軸ケーブルによるアナログ伝送技術を用いており、ケーブルの大口径化、帰還増幅器が発生する混変調ひずみ雑音の増加などにより大容量化は技術的限界に達していた。

 このような状況を克服するため、KDD(国際電信電話株式会社)では、1970年代後半から国際伝送路の大容量化のみならず、ディジタル化をも目的として、国際長距離光海底ケーブル方式(OS-280M)の開発実用化を積極的に推進してきた。OS-280M方式は、光通信技術を長距離海底ケーブルに導入した初めてのシステムである。光波長1.3μmを用い、1光ファイバ対当り約4,000回線(64kbit/s換算)のディジタル信号を、大平洋を横断して10,000kmにわたり伝送可能とするものである。最大3ファイバペアが実装可能で、システムの最大容量は840Mbpsである。また、太平洋横断には不可避な日本海溝横断のため、8,000mの深海底へも敷設可能な設計が行なわれている。

 以下に本研究開発に関する成果を具体的に紹介する。

(1)長距離高信頼性光海底ケーブル
低損失単一モード光ファイバを最大800気圧(敷設水深8000mに相当)の高水圧から保護するため、扇形三分割鉄パイプによる耐水圧層を発明考案した。また、ケーブル切断時の水走防止技術や、長期にわたりファイバの損失増加を招く水素ガスの発生しにくい材料選定などの技術を確立した。これらにより、25年以上の長期にわたり安定した伝送特性を維持し、かつ50km以上の長尺連続製造が容易な光海底ケーブル技術を確立した。
(2)高信頼性光海底中継器
光海底中継器の再生中継方式として我が国で始めてのNRZ方式を実用化し、集積回路化を実現した。また、監視方式について、光折返し方式を発明考案し、障害位置測定の高精度化を実現した。中継回路を構成する集積回路部品、半導体レーザ部品、受光部品、光スイッチ等について、25年以上にわたり高度な信頼性を実現するため、高信頼設計と長期の加速寿命試験を実施し、個々の部品の高信頼性を実現するとともに、信頼度保証管理技術を確立した。
(3)海中分岐装置
海底ケーブルによる通信網構成上の自由度を増大させるため、光海底ケーブルを海底で分岐する海中分岐装置を実現するため、光ファイバ切換回路、給電路切換回路を開発・実用化した。
(4)相互接続技術
国際通信ネットワークでは、2国で別々に開発されたシステムを海底で直接、相互接続する方式技術の実現が要求される。AT&Tベル研究所との共同開発により、実現のための技術要素、特に給電方式、伝送符号、伝送速度、フレーム構成の統一化を推進した。これにより、異なるシステム間の国際接続技術が確立され、国際光海底ケーブル方式の標準化が推進された。
(5)高信頼性光伝送端局装置
光海底ケーブル系とインタフェースする高信頼性光伝送端局装置、直流定電流を中継系に供給する高信頼性給電装置、高精度の障害位置測定を行うための中継器監視制御装置を開発実用化した。


 以上の諸技術を集積して、国際長距離光海底ケーブルを実用化し、1989年に建設された第3太平洋横断ケーブル(TPC-3)に適用した。TPC-3により大量の高品質国際ディジタル通信サービスが提供できるようになり、国際間のサービス総合ディジタル網(ISDN)の構築が可能となった。

 また、本研究開発で確立された光海底ケーブル技術は、その後開発された1.5μmを用いるOS-560M方式の基礎技術としても活用された。更には、光増幅技術を用いる現在の光海底ケーブル技術にも応用されており、海底ケーブルの基本技術である。

 本方式の研究開発と実用化は、光ファイバを用いる海底ケーブル技術の基礎を確立し、その後の光海底ケーブル方式にも応用されている。

 この業績に対して、電子情報通信学会は、1990年、新納康彦氏(KDD)、若林博晴氏(同左)、山本 均氏(同左)に電子情報通信学会業績賞を贈った。


電子情報通信学会光通信システム研究専門委員会編集


文献

[1] Y.NIIRO, H.WAKABAYASHI, H.YAMAMOTO、The OS-280M Optical Fiber Submarine Cable System、1984年、IEEE Journal Lightwave Tech / VolLT2, pp767-772
[2] 新納、布川、山本ほか、深海用光海底ケーブルの設計と評価結果、1985年、電子通信学会論文誌 85/1 Vol.J68-B No1 PP85-92
[3] 若林、新納、常盤ほか、長距離用280M光海底中継器の設計と試作評価、1983年、信学技報 CS-83-149, pp53-60 (Dec.1983)
[4] Y.Niiro, H.Yamamoto etc.、The First Transpacific Optical Fiber Submarine Cable System、1986年、ICC'89 BOSTON USA (JUNE 1986)

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分野のカテゴリ

通信
(通信に係わる技術)

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Webページ

データなし

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キーワード

光通信システム、電線・ケーブル、光伝送、信頼性、光エレクトロニクス
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