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負荷分散型大容量パケット交換方式の実用化

Switch Linkで結合したマルチプロセッサ

図1 Switch Linkで結合したマルチプロセッサ

マルチプロセッサの構成

図2 マルチプロセッサの構成

 1970年代後半に各国でパケット交換網の建設が始まった。当初はその需要が未知のため、パケット交換機は既存のミニコンピュータにパケット向き機能を付加した構成が主であり、その性能は毎秒数十~数百パケットであった。1~2年の商用運転の結果、トラヒックが予想以上の伸びで、いずれ,網の経済的な成長に支障を来すことがわかってきた。このため,需要傾向を見て1万パケット/秒以上の処理能力を持ち、ビルディングブロック的に増設が可能でかつ保守運用機能の充実した大容量のパケット交換機が必要となってきた。

 上述の要求条件から、マルチプロセッサ制御が好ましいことがわかるが、プロセッサ間の機能分担とその結合形式の選択に当り,以下の課題を解決する必要があった。①プロセッサ間でパケット交換メモリを共用するとアクセス競合で性能が飽和する、②稼動率の低い保守運転機能をプロセッサ間で共用したい、③多くの実回線を終端するための実装空間により、終端メモリから交換メモリまでの結線距離が伸び、メモリアクセス速度が低下する、④プロセッサ間で負荷アンバランスが生じると負荷の集中したプロセッサでシステム性能が抑えられる.このため,次の方式構成を選定した。

 交換処理をリンクレベル処理(レイヤ2)、パケットレベル処理(レイヤ3),保守管理処理の3階層に分けて機能分散する.レイヤ2処理はLSI化して所要容積を抑え、回線対応に設置する。レイヤ3を処理するプロセッサは48Mbit/sバスで疎に結合し負荷に応じて増設するが、メモリは共用しない.プロセッサ間の情報送信権はポーリングにより制御する。保守管理プロセッサはパケット処理プロセッサの負荷状況を把握し、中継パケットの送信方路選択を管理することによりプロセッサ間の負荷アンバランスを平滑化する。

 本方式の特徴は,実回線収容のための物理的な距離による性能低下を極力抑える点に着目したこと、システム構成要素の稼動率をバランスさせるトラヒック制御、プロセッサの増設が容易な単純なバス結合の採用にあり、1982年春に構想発表以来、内外の大規模パケット交換機に対して先導的役割を果たしてきたが、1985年末に32ビットμプロセッサ64台を結合して1万パケット/秒の目標性能を満たして稼動させたことにより、世界最高性能のパケット交換機としてその実用性を証明した。

 本方式は電話網の共通線信号の中継にも適用されたが、更にISDNのパケット処理ノードとしても採用される予定である。また、回線対応部のLSIはデータ端末等にも適用され,X.25プロトコルの普及にも寄与しており、本業績のパケット交換網以外への影響も絶大である。本方式による高性能処理方式は、その後プロセッサを高速化した改良版にも採用され、次期バージョンでは約10万パケット/秒に性能アップしている。

 本実用化の成果に対して、電子情報通信学会は、1987年、石野 福彌氏 , 門田 充弘氏 , 砺波 修一氏に「電子情報通信学会業績賞」 を贈った。

電子情報通信学会ネットワークシステム研究専門委員会編集


文献

[1] Fukuya Ishino, Kazuo Watanabe, Shigeru Oyama, Zenichi Yashiro、A High Thoughput Packet Switching System、1982年、IEEE ICC'82, p.5C.3.1-p.5C.3.5
[2] Zenichi Yashiro, Shuichi Tonami, Mineo Nishiwaki, Fukuya Ishino、Disributed High-Throughput Packet Switching System、1985年、IEEE ICC'85 p27.1.1-p27.1.5
[3] Fukuya Ishino, Shuichi Tonami, Michihiro Monden、High-Throughput Packet Swithing System、1986年、Review of The ECL, Vol.34, No.6, p677-p682

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1987
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キーワード

パケット交換、マツチプロセッサ、負荷分散型並列処理、X25
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