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蛍光体の帯電傾向と蛍光ランプの黒化現象

蛍光体(Y[sub]2[/sub]O[sub]3[/sub]:Eu)のコロイド処理法のSEM写真

写真1 蛍光体(Y2O3:Eu)のコロイド処理法のSEM写真

コロイド付着蛍光体の帯電傾向

図1 コロイド付着蛍光体の帯電傾向

蛍光体の帯電蛍光とランプ光束比

図2 蛍光体の帯電蛍光とランプ光束比

蛍光体の帯電傾向とランプ中の蛍光体への水銀付着量

図3 蛍光体の帯電傾向とランプ中の蛍光体への水銀付着量

[従来技術]

一般に蛍光ランプは点灯時間と共に明るさが低下する。明るさ低下には幾つかの原因がある。まず蛍光体自身の劣化が挙げられる。紫外線やイオン衝撃、温度で蛍光体は劣化する。希土類化合物からなる3波長混合蛍光体は紫外線やイオンの影響を受けにくく、現在蛍光ランプに広く用いられている。

 
[解決すべき課題]

 3波長混合蛍光体を用いても蛍光体自身の劣化の他に着色物質である水銀或は酸化水銀の蛍光体の付着による明るさ低下がある。この付着現象に対して蛍光体保護膜等の実用的な対策も行われている。また蛍光体の種類により付着量の異なることも知られている。しかし蛍光体の特性を系統的に変化させて付着量を調べた研究は無く、何故付着量が蛍光体によって異なるのか理由が判っていなかった。

 
[課題を解決するための手段]

 水銀やその化合物の蛍光体への吸着能はこれらの物質の帯電傾向の違いに起因する可能性がある。近年、粉体の接触帯電量がブローオフ装置などによって定量的に測定出来るようになり、同じ基準物質に対する帯電量測定から単純な無機化合物の帯電傾向が調べられている。これに拠ると異なる物質の間に発生する電荷量は両者の帯電傾向の違いが大きいほど大きい。

 本研究では、蛍光体の帯電傾向がランプ光束低下と水銀付着量に及ぼす影響を実験的に求め、これが蛍光体と黒化物質の帯電傾向の差に起因することを明らかにする。光束低下には蛍光体自身の劣化が含まれ、また粒子径の異なる蛍光体の帯電傾向を定量的に比較する正確な方法は今の所無い。従って市販蛍光体を用いたランプ光束維持率の比較から帯電傾向の影響だけを抜き出すのは困難である。このため各蛍光体の帯電傾向を表面処理によって系統的に変化させ、それぞれの蛍光体の系の中で帯電傾向の影響を比較した。

 同一種類の蛍光体で帯電傾向を変化させるためと、蛍光体の種類による違いよりも広い範囲に帯電傾向を変化させるために、粉体粒子の表面に固有の帯電傾向を持った金属酸化物コロイド微粒子を付着させ、コロイドの種類と付着量を変えることにより蛍光体の帯電傾向を制御した。コロイドには、正に帯電しやすい傾向を持つMgOとZnO,負に帯電しやすい傾向を持つSiO2を選んだ。コロイドの付着および乾燥処理は、蛍光体の懸濁液にコロイドの懸濁液を加えて攪拌した後、吸引ろ過して125°C以上、約16時間乾燥して行った。懸濁液中でコロイドの一部が水酸化物に変わっている可能性を除去する為に、この後、水酸化物が酸化物に変わる空気中350°C5時間の条件で再加熱し、得られた蛍光体を200メッシュナイロンに通した。 

 試料の帯電傾向を、ブローオフ装置を用いて、還元鉄粉に対する帯電量として測定した。直管形の蛍光ランプ用バルブの内壁に帯電傾向を制御した試験用蛍光体を塗布した。管内には水銀とArガスを封入した。点灯中の余剰の水銀は、全てランプの最冷部である細管内に凝集する構造とした。

 なお、吸着水銀あよび酸化水銀量は 点灯後の供試ランプの蛍光体を回収し酢酸に可溶性の酸化水銀と不溶性の水銀を分離し それぞれ原子吸光法で定量した。


[効果]

 0時間の光束値に対する300時間点灯後の光束比と蛍光体の帯電傾向を調査した結果、光束比は蛍光体の帯電傾向に大きな依存性を示す。負の帯電傾向では帯電量が多くなると低下し、正の帯電領域では、負の帯電領域に比べて光束比は大きく、光束比が最大値になる領域がある。

 また300時間点灯後のランプの蛍光体中の酸化水銀量は、蛍光体の帯電傾向に大きく依存し、酸化水銀付着量と帯電傾向を表す曲線の形は、ランプ光束比と帯電傾向を表す曲線の形とほぼ反対象の形となる。光束低下は水銀より酸化水銀の影響が大きい事が判った。また光束比最大および酸化水銀付着量最小となる蛍光体の帯電傾向位置は酸化水銀の帯電傾向位置に近い事が判った。

 以上の結果より、酸化水銀吸着量が蛍光体と酸化水銀の帯電傾向の差に依存し、光束維持率の大きな部分が蛍光体の帯電傾向に支配されている事が判った。


[応用]

 蛍光体の帯電傾向を制御することにより、蛍光ランプの長寿命化などに応用出来る。

 本研究の成果に対して、照明学会は、1993年、伊藤 秀徳(東芝ライテック(株))、弓削洋二(東芝ライテック(株))、田屋 明(東芝ライテック(株))、玉谷正昭((株)東芝)、寺島 賢二((株)東芝)に論文賞を贈った。

文献

[1] 伊藤、弓削、田屋、玉谷、寺島、蛍光体の帯電傾向と蛍光ランプの黒化現
象、1992年、照明学会誌 第76巻 第10号
[2] 伊藤、田屋、玉谷、寺島、蛍光ランプ用蛍光体の帯電傾向とライフ特性、1990年、第233回蛍光体同学会講演予稿集17-16
[3] 伊藤、寺島、蛍光ランプ用蛍光体の表面帯電量と光束維持率、1990年、平成2年照明学会全国大会予稿集-12

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蛍光体、帯電、黒化、酸化水銀、光束維持率、蛍光ランプ、光源関連材料、その他(光源)
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