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64kbit/s統合画像通信システムINVITE64

輝度色差差分ベクトル量子化における代表量子化ベクトルの削減

図1 輝度色差差分ベクトル量子化における代表量子化ベクトルの削減

システム構成

図2 システム構成

多重伝送のための固定長パケットの構成

図3 多重伝送のための固定長パケットの構成

INVITE64システムの諸元

表1 INVITE64システムの諸元

APC-MLQ音声符号化方式の主要諸元

表2 APC-MLQ音声符号化方式の主要諸元

統合通信の形態

表3 統合通信の形態

 テレビ電話やテレビ会議などのビデオ通信への期待は高いが、ビデオ(動画像信号)伝送には極めて広帯域の通信回線を必要とするため、だれもが自由に利用できるようなビデオ通信サービスを提供することは困難であった。この問題を解決する重要な鍵のひとつは、ビデオ信号の冗長成分を除去する高能率符号化技術であるが、従来技術では数百kbit/sから数Mbit/sの伝送路を必要とした。一方,通信網はアナログからディジタルへと移行し、ISDNのサービス開始も目前に迫っていた。従ってビデオ信号をISDNの基本レートである64kbit/s以下の速度で伝送することができれば、ISDNの普及発展と共に経済的にも利便性の点からもビデオメディアを従来の電話と同じように気軽に使用できるようになる。もちろん通信の基本は音声であるから、ビデオ信号と音声信号を同時に伝送する必要があり、またこのようなビデオ通信は当初はビジネスツールとして使用されることが多いと期待されることから、小規模な会議,打合せなどで用いる高精細なカラー静止画像、ドキュメント、ポインタなどの情報も同時に伝送する必要がある。

 本研究では、このような新しいビデオ通信方式の研究が進められ、64kbit/s回線1本のみでサービス可能な世界で最初の統合画像通信システムINVITE64が開発された。INVITEはIntegrated Visual Telecommunication System を表す。

 INVTE64は,ビデオ信号(カラー動画像)の高能率符号化技術、音声の高能率符号化技術およびマルチメディア通信技術によって構成されている。ビデオ信号の符号化技術では、ビデオ信号を通常の1/2000の50kbit/s以下に圧縮するため、新しい高精度動き補償予測符号化技術と輝度・色差差分ベクトル量子化方式を開発した。動き補償技術は、演算量を抑えながら効率的に最適な動ベクトルを推定する方式で、動ベクトル自体の予測を基本とする。ベクトル量子化方式は、輝度信号の変化が大きい部分では色差信号の誤差は知覚され難く、色差信号の変化が大なる部分では輝度信号の誤差が目立たないという視覚のマスキング効果に基づいて、代表ベクトル数を効率的に削減し情報圧縮を行う。さらに、静止した背景を分離して符号化する背景補償を加えている。この結果、非常に良好なカラー動画像再現特性を達成した。

 音声符号化技術は、音声信号を通常の1/4以下の16~9.6kbit/sに圧縮するため、APC-MLQと呼ぶ最尤量子化適応予測符号化方式を開発し、通常の電話と同程度の優れた音質を実現している。この方式では、短時間予測器と長時間予測器を用い、その予測誤差を最尤量子化器によりサンプルあたり1(9.6kbps符号化時)ないし2ビット(16kbps符号化時)に量子化する。特にこの最尤量子化では、符号化器内で局部復号された再生信号と入力信号との差を最小とするような最適量子化ステップを選択している。さらに品質改善のため、符号化雑音に対する聴感上のマスキング効果を利用した雑音整形フィルタを導入し、これら複合技術により良好な音声品質を実現した。

 これらの信号と、前述の静止画像など複数のメディア信号を効率よく統合して64kbit/s回線1本で伝送するため、新しいパケット多重マルチメディア通信方式を開発した。当時はCCITT(現ITU-T)において、回線交換ベースの規格H.221の勧告化作業が行われていたが、この方式ではダイナミックにビットレートの変動するメディア信号を効率よく伝送することが困難であった。本システムでは、固定長パケットを基本とする多重伝送方式を採用することにより、ビデオ、音声、静止画、データなど、それぞれ性質の異なる信号に柔軟に対応することのできる効率の高いマルチメディア通信を実現した。これは後のMPEGなどで採用されたパケット多重伝送や、インターネットビデオ伝送などの先駆的技術である。

 INVITE64システムは、1986年2月の完成以来、第7回国際デジタル衛星通信会議(ICDSC-7)におけるミュンヘン・東京を結んだ公開テレビ電話実験やテレコム'87等の国際デモにより、サービス品質の高さや安定性が実証されており、さらには商用目的にも使用され、その実用性、有効性が明らかになった。

 本研究の成果に対して、電子情報通信学会は、1988年、 山口 博久氏(KDD研究所) , 八塚 陽太郎氏(同左) , 和田 正裕氏(同左)に「電子情報通信学会業績賞」を贈った。

 電子情報通信学会ネットワークシステム研究専門委員会編集


文献

[1] 山口、和田、64kbit/sビデオ通信のためのカラー画像符号化方式、1985年、テレビジョン学会誌,VOL.39,No.10
[2] 和田正裕、山口博久、64kbps統合ビデオ通信におけるマルチメディア伝送方式、1987年、電子情報通信学会論文誌(B) Vol.J70-B No.4
[3] 和田正裕、山口博久、山本英雄、64kb/s Integrated Visual Telecommunication System、1986年、2nd International Conference on Image Processing and its Application

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分野のカテゴリ

通信
(通信に係わる技術)

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キーワード

画像工学、テレビ電話、マルチメディア、ベクトル量子化、パケット伝送
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