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放電ランプの発光色制御

グロー放電とアーク放電における水銀―ネオン放電管の変色範囲

図1 グロー放電とアーク放電における水銀—ネオン放電管の変色範囲

電流波形変化法による水銀―ネオン放電管の変色範囲

図2 電流波形変化法による水銀—ネオン放電管の変色範囲

[従来技術]

 視覚に訴えるディスプレイは情報伝達手段として有効である。従来のディスプレイ用光源は一灯につき一色であるため、カラー表示しようとすると希望する色に発光する光源を併置して選択点灯しなければならない。その場合、色数を増加すると設置ランプ数が増加し、空間分解能も低下する欠点がある。


[解決すべき課題]

 1個の光源の発光色を電子的に変えることができると、発光色の数を増やしても光源の数を増やす必要がなく、空間分解能の低下も避けられる。

低圧気体放電における発光色は封入気体の種類と電子温度によって決まる。1個の放電管においても負グロー部分と陽光柱部分の発光色は異なる。それは両者の電子温度が異なるためである。陰極側の負グローの高電界は放電を維持するのに不可欠であるが、陽光柱は放電電流の通路の役割を果たしているのみであるから電界の強さを変えても放電を維持するのに困難を生じない。そこで簡単な装置により、陽光柱の電界強度を変えて電子温度を制御して変色させる方法を開発することと、変色範囲が広くディスプレイに適する気体を選択することが必要であった。


[課題を解決するための手段]

 低圧気体放電ランプの発光は、電子と原子・分子の非弾性衝突によってもたらされる。電子のエネルギー(温度)が高いほど衝突される原子・分子は高準位に励起されて発光する。電子の密度と速度に比例する放電電流を急増しようとすると、密度は急速な変化に付いて行けないので、まず速度が急上昇する。この時、電子のエネルギーが過渡的に高くなり、気体原子は高準位に励起される。その後、密度が増加してくるとともに速度が低下して定常放電に落ち着く。定常放電では電子は低いエネルギー状態で安定しているから高準位からの発光はなく、低準位からの発光のみになる。つまり高準位からの発光が得られるのは電流が急増している非定常放電期間においてのみである。電流の急増を繰り返し発生させるにはパルス放電が有効である。パルス放電により非定常放電における発光色と定常放電における発光色の割合を変えるのに次の5種類の方法がある。
(1) パルス幅変化法:パルス幅を狭くするほど定常放電期間に対する非定常放電期間の割合が増加する。
(2) 電圧変化法:電圧を高くするほど電流の立ち上がりが速くなり、非定常放電期間の電子温度が高くなる。
(3) 周波数変化法:パルスの繰り返し周波数を高くするほど放電休止期間が短縮して、次のパルス直前の残留イオンや準安定原子密度が高くなり非定常放電期間の電子温度が低下する。
(4) 直流電流重畳法:直流電流を重畳するとパルス印加直前のイオン密度が増加して非定常放電期間の電子温度が低下する。
(5) 電流波形変化法:電流の立ち上がりを速くするほど非定常放電期間の電子温度が高くなる。

(2)と(5)の方法では高準位からの発光色を強くするほど陽光柱の発光強度が強くなり、(1)と(3)および(4)の方法では高準位からの発光色を強くするほど発光強度が低下する。したがって、複数の変色法を併用すれば、陽光柱の明るさを一定に保ちながら発光色を変えることができる。

 封入気体の種類に関しては、水銀は青色に発光し、ネオンは赤色に発光する。また、前者の励起電圧は7[eV]から9[eV]の範囲にあり、後者の励起電圧は17[eV]から19[eV]の間にあって、両者に重なりがないため発光強度を独立して制御するのに適している。

水銀—ネオン封入放電管をパルス幅変化法と電圧変化法を併用してグロー放電させると、 CIE色度座標で青白色(0.22,0.20)から赤色(0.54,0.22)まで連続的に変色させることができる。定常放電においては水銀のみが発光するが、電子温度を高くして行くとネオンの発光が強くなる。輝度は、青白色のとき360[nt]であり、赤色のとき100[nt]である。この放電管をアーク放電させると、輝度は3,800[nt]に達する。定常放電においては水銀のみが発光するが、電子温度を高くしてネオンを発光させようとすると、電子温度の分布には広がりがあるため必ず低準位の水銀も発光する。しかし、アーク放電において、パルス幅を3μsまで狭くすると純ネオンの赤色(0.705,0.295)に近い発光色が得られる。


[効果]

 パルス放電による放電ランプの点灯法は、以後、一般照明用放電ランプの点灯にも応用されるようになった。


[応用] 

 蛍光体を塗布した水銀—ネオン放電管を、電流波形変化法によって水銀とネオンの発光色を、また周波数変化法で蛍光体の発光色を制御すると、変色範囲はCIE色度図上で直線から面に拡大する。このランプは「マルチネオン」という名で商品化された。このように本研究の技術は蛍光ランプの発光色の制御にも応用できる。

 本研究の成果に対して、照明学会は、1992年、青野 正明(愛媛大学)、黒河 久悦(愛媛大学)、久保 寔(愛媛大学)、板谷 良平(京都大学)に論文賞を贈った。

文献

[1] 青野正明、黒河久悦、竜子雅俊、藤野達士、板谷良平、久保  寔、可変色放電のディスプレイ装置への応用、1988年、照明学会誌、第72巻、第3号、pp.127-132
[2] 青野正明、神野雅文、丸山弘晃、久保  寔、板谷良平、蛍光ランプの発光色制御、1998年、電気学会論文誌A、第118・A巻、第1号、
pp.41-48 (平成10年)
[3] Masaharu AONO, Hisayoshi KUROKAWA, Makoto KUBO, Ryouhei ITATANI、The Control of Luminous Color of the Discharge Lamps、1989年、J. Light & Vis.Env., Vol.13, No.1, pp.1-9,

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キーワード

放電ランプ、パルス放電、発光色、水銀ネオン放電、気体放電、グロー放電、アーク放電、蛍光ランプ、光放射の応用、発光ディスプレイ
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