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高性能D10形自動交換機の実用化

多接点封止形スイッチの基本構造

図1 多接点封止形スイッチの基本構造

SMMスイッチパッケージの構造

図2 SMMスイッチパッケージの構造

スイッチグリッドの比較

図3 スイッチグリッドの比較

直接走査方式

図4 直接走査方式

トランクパッケージの比較

図5 トランクパッケージの比較

 電子交換機は1972年の商用サービス開始以来全国的に導入が進められ、D10形自動交換機は1978当時ですでに250システム以上に達し、安定なサービスが提供されていた。そして、電話網の拡充とともに、サービスの多様化、網としての機能の高度化が強く要請されるようになってきたので、これにこたえて,効率的に導入されてゆくためには、その処理能力の強化ならびに一層の経済化が望まれてきた。

 高性能D10形自動交換機は、このような要請にこたえるべく、既に導入されている既存D10との両立性を保ちつつ、新たに考案した多接点封止形スイッチの採用を主体とした通話路系の経済化ならびにLSI論理回路、磁気バブル記憶素子の使用による中央処理系の高性能化を図ったものである。

 本実用化には種々の新しい技術の実現に努力と工夫が払われているが、その主なものは次のとおりである。

 (1) 通話路系については、D10形の8×8スイッチによる8段通話路構成、ソフトウェアの継承などを前提として、新しい通話路スイッチの開発により経済化、小型化、軽量化を狙ったものである。通話路スイッチとしては、和動選択による複合鉄心材料を開発し、部品点数の削減を可能とした多接点封止スイッチを完成した.そして、このスイッチを適用する新しい通話路系装置(スイッチ架,トランク架、通話路系制御装置など)を実用化した。 新しい回路方式的な考案として、電話機の起動電流を直接走査し、加入者ごとに必要とした監視リレー等を削除する方式が挙げられる。

(2) 中央処理系については、論理素子として外部とのインタフェースは汎用のECLのままで、内部論理はより低電力、より高速な論理動作を可能とするマスタスライス形の200ゲート規模の高性能LSIを実用化した。制御方式として、多段先行制御を伴うマイクロプログラム制御方式を採用し、処理能力の大幅な向上を達成した。データチャネル装置では、時分割制御方式を採り入れ、小型化・高性能化を達成した。さらに、主記憶装置には、高速半導体メモリ素子(アクセスタイム:100ns、4kb/chip MOSメモリ)を採用し、小型化・経済化に大きな進展を果たした。これらの新しい技術を集約して、従来のD10用中央処理装置に対しコスト、推定故障率はほぼ同等のままで、4倍の処理能力が達成された。

(3) D10形電子交換方式では、プログラムや加入者データなどを記憶しておくファイル記憶装置として、磁気ドラム装置が使用されてきたが、高速中央処理系装置の実用化に際して、ファイル記憶装置の性能、保守性、経済性の向上を狙って、磁気バブル記憶装置の実用化が進められた。記憶素子として、64kビットの素子を使用し、複数チップを一括して制御することにより、周辺回路を削減するマルチチップ方式および交換の処理に必要な動作速度を確保するための並列制御方式を考案し、全固体のファイルメモリが実用化された。 その結果、磁気ドラム装置に比較して、約2倍の速度向上、2分の1の小型化、同等の情報不揮発性が達成された。

 本実用化により、性能の大幅な向上(処理能力で3倍の改善)、装置の経済化(創設費で3割の削減)と装置の小形化(設置面積で3割の削減)を同時に実現したものであり、その技術的独創性および先駆性は高く評価される。又、その後の電子交換機の経済的な導入と新サービスへの効率的な対処を可能とした。

 なお、本交換機については1978年(昭和53年)より商用試験を開始し、その後の標準機種として全国に導入されてきた。

 D20形自動交換機は、中小規模交換領域に適用するために開発された電子交換機で、1976年から導入されてきたが、D10形交換機の高性能化に引き続いて、同様の技術を適用して、改良形D20自動交換機の実用化も進められ、30%の床面積削減、大幅な経済化、信頼度の向上が実現された。

 本研究の成果に対して、電子情報通信学会は、1980年、池田博昌(日本電信電話公社通信研究所)、向井久和(日本電信電話公社通信研究所)、加藤勝洋(日本電信電話公社通信研究所)に電子通信学会業績賞を贈った。

文献

[1] 神宮司順,池田博昌,倉橋和夫、D10形交換機用新通話路系装置の実用化、1978年、電電公社研究実用化報告,Vol.27,No.5
[2] 向井久和,片岡啓介、マスタスライス形ECL LSIの研究、1977年、電電公社研究実用化報告,Vol.26,No.4
[3] 加藤勝洋,鈴木英雄,高橋政次,清水湧一、多接点封止形スイッチ、1978年、電電公社研究実用化報告,Vol.27,No.5
[4] 神宮司順,保坂 務、D10形高速中央処理系装置の概要、1977年、電電公社研究実用化報告,Vol.26,No.12
[5] 布谷正勝,三瀬啓介,古川純男,天野宣夫、電子交換機用磁気バブル記憶装置、1980年、電電公社研究実用化報告,Vol.29,No.3
[6] 上野隆男,柳沢孝俊,武井 章、D10形交換機用新通話路制御系装置の構成、1978年、電電公社研究実用化報告,Vol.27,No.5
[7] 小野堅一,富島 浩,高橋俊夫、多接点封止形スイッチ用複合磁性鉄心、1978年、電電公社研究実用化報告,Vol.27,No.5
[8] 松山謙太郎,田部井久男,田中啓順,奈良茂男、鉄板コア印刷配線板、1978年、電電公社研究実用化報告,Vol.27,No.5
[9] 中島孝利,寺田康和,井鍋泰宣、D10高速CP用LSIの設計、1977年、電電公社研究実用化報告,Vol.26,No.4
[10] 加藤満左夫,加藤 隆,保坂 務,鈴木昇夫、D20形自動交換機の改良、1978年、電電公社研究実用化報告,Vol.28,No.3

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キーワード

交換システム、空間分割形通話路スイッチ、交換処理用LSI論理回路、磁気バブル記憶装置、多接点封止形スイッチ、マスタスライスLSI、複合磁性鉄心、鉄板コア印刷配線板、半導体主記憶装置
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