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交換機のデータフロー制御とそのソフトウェア設計法の研究

プログラム表現法の比較

図1 プログラム表現法の比較

データ駆動プログラム(DDMP)とC言語記述の比較

図2 データ駆動プログラム(DDMP)とC言語記述の比較

実用DDL(※1)図の一部

図3 実用DDL(※1)図の一部

CX5000形デジタルPBX交換機

図4 CX5000形デジタルPBX交換機

 近年、交換システムの機能向上が著しいが、その多くをソフトウェアに依存している.パケット交換の発展をはじめとする交換機能の変容に伴って、このソフトウェア依存の傾向はますます強まりつつあり、ソフトウェアの生産性と安全性の向上が交換システム分野における緊急の課題となっている。 一般的にソフトウェアの開発を難しくしている諸要因の中で、記述性と読解性およびモジュール化への適合性の問題は、通常使用されている逐次実行形の計算機アーキテクチャに由来するものであるが、このことは必ずしも充分に解明されていなかった。 本研究では,データ結合が構造化設計のなかで、ソフトウェアの理解性を増す最良の方法として扱われていること、および自然の仕様論理ないしプログラム論理の中に多くの並列性(二次元性)が存在することに着目し、これらに良く適合するデータフロー方式により上記の問題を解決すべく研究を行ってきた。


 本研究では、世界で初めてデータフロー制御を交換機に適用することを提唱し、ハードウェア,ソフトウェアの試作を通じて、データフローグラフとよぶ図によってプログラムを記述することが、データの従属関係を陽に示すことになり読解性が高まること、各プロセッサエレメントの機能の独立性が高く、機能の追加変更に対する融通性が高まることを確認した。更に,データフローアーキテクチャにおける障害処理、再開処理といった未知の問題にも取り組まれ、そのアルゴリズムを提案されて、実システムへの適用の道を開いた。 (文献1,2,図1


 本研究では、また、階層化設計を強く意識して上位から下位まで一貫した図的な記述形式を導入することを提唱し、上位の仕様記述が含んでいる並列性と明示されている処理構造を、下位に至るまで保存することが可能なデータ駆動原理の採用を提言した。またその具体化のためにデータフロー方式のプロセッサアーキテクチャと汎用的な図的データ駆動言語体系を開発した。この開発を通じてプログラムを図で記述する手法の有用性を確認し、これを交換機制御のみならずパケット交換制御にも適用することを提案した。 更に現在の通念ではソフトウエアとハードウエアが画然と区分された異なる技術として扱われているが、それは現在のソフトウエア技術の基礎がフォンノイマン形アーキテクチャを前提として構築されていることに起因すること、よってデータ駆動の概念を基礎にするパラダイム変換により両者を同じ基盤の上で扱い得ること、結果として安全で開発生産性の高いシステムを構築できることを提言した。この考えを実現すべく、組込みソフトシステム応用に向けたLSIを試作してその有効性を検証した。(文献3,4,図1, 図2


 さらに、本研究では、データフロー動作を逐次実行形プロセッサ上で実現させる実行制御手法と、あらかじめ決められた処理を行うソフトウェア部品相互の入出力データの従属関係をデータフロー図形式で記述することによりソフトウェア設計を行う手法を提案し研究を行った。その結果、実用上問題となる実行オーバヘッドの低減策を見出し、交換機用ソフトウェア部品の選定、関連サポートプログラムの開発を行って、世界で初めて実際の製品に適用して、生産性と保守性の向上およびモジュール化への適合性を確認した。プログラム制御による交換システムの開発においては、それ以前のハードウェアによるシステム開発と比較して、設計(プログラミング)工数の大幅増大が大きなブレークスルーと指摘されつつも未解決だった。本研究開発を通じてその原因がフォンノイマンアーキテクチャの本質に由来すること、そしてデータ駆動原理によって克服しうることを実証した。(文献5,図3, 図4


 以上述べたように、本研究では、プログラムをデータフロー原理による図で記述することに大きな特徴がある。これは、プログラムはテキストという従来の概念を打破するものであって、交換機・ルーターのみならず、組込み型システムをはじめ広くソフトウェア工学全般にもインパクトを与えよう。また依然在来型プロセッサのパラダイムから脱却できない計算機分野へのクレームともいえよう。

 本研究の成果に対して、電子情報通信学会は、1988年、秋山 稔氏(東京大学)、寺田 浩詔氏(大阪大学)、白須 宏俊氏(日立製作所)に「電子情報通信学会業績賞」 と「電子情報通信学会小林記念特別賞」 を贈った。


電子情報通信学会ネットワークシステム研究専門委員会編集


文献

[1] 秋山,山下,三栖、データフロー制御交換機DATAFLEX-1のソフトウエア構成、1989年、信学論文誌,J67-B, 11, pp.1262-1269(1984-11)
[2] M. Akiyama, M. Yamasita, T. Misu、An Experimental Data-flow Computer Controlled
Electronic Switching System、1987年、ISS'84, Florence, 23B-2 (1984-05)
[3] Hiroaki Terada, Souichi Miyata, and Makoto Iwata、DDMP's: Self-Timed Super-Pipelined Data-Driven Processors," (Invited paper)、1999年、Proceedings of the IEEE, Vol.87, No.2, pp.282-296, Feb. 1999
[4] Makoto Iwata, Michihiro Ogura, Yuko Ohishi, Hideki Hayashi, and Hiroaki Terada、100MPacket/s Fully Self-Timed Priority Queue: FQ,、2004年、Digest of Technical Papers, ISSCC 2004, San Francisco, USA, Session 8, No.1, Feb.
2004.
[5] 鈴木太平,前島幸仁,田辺史郎,白須宏俊,大坪東光、データ駆動論理方式交換ソフトウェア設計手法、1989年、信学論(B), vol.J72-B-1,no.4,pp.343-352,Mar.1989.

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通信
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キーワード

交換ソフトウエア、計算機アーキテクチャ、データフローアーキテクチャ、データーフロー図、データ駆動
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