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世界ループ網の設計と動的ルーティングの効果

網のモデル

図1 網のモデル

網拡張シナリオ

図2 網拡張シナリオ

 従来の同軸方式に比べて、はるかに大容量の大陸間光海底ケーブルが実現可能となり、現在大西洋および太平洋地域で相次いで敷設されつつある。この大容量光ケーブルにより構成される国際通信網は、増大する国際通信需要の伸びとディジタル化の傾向にこたえるものであるが、実現のあかつきには世界全体のトラヒックの流れ、更には将来の国際通信網のアーキテクチャそのものへの多大なインパクトを与えるものと考えられる。

 本研究では、このような大容量通信網のアーキテクチャに関する基本的な考え方として、世界を東西方向に一巡するループ網構成を取り上げ、その計画ならびに設計法を提案し、更に設計例により網の具体的イメージを与えている。

 本研究の通信網アーキテクチャでは、各国間の通信回線群は、図1(a),(b)に示すように、このループ構成のケーブル伝送路網を通してメッシュ状に張られるものとする.ルーティング方式としては、(1)ノード間の直通回線のみを利用する固定ルーティング、,(2)直通回線に加えて、任意のノードを中継して2段中継してもよい動的ルーティング、の2種を検討の対象としている。トラヒック負荷は時間的に変化し、さらに、ノード間の時差によっても左右されるものとし、具体的には、旧CCITT勧告E.121で示されたトラヒック・パターンによるものとした。

 設計手法の概要は以下のとおりである.先ず,予備的な設計として、この網において通信フローと回線数に対するケーブル容量からくる制約式のもとで、総フローを最大にする問題を線形計画法で解く方法を示している.次いで、ループ網を構成するケーブルの任意の1本が障害となった時に、疎通しきれずに滞留するトラヒックの量によって障害の影響を評価することとし、この影響を最小にするようなフローの割当を再び線形計画問題として解く方法を示している。そして.信頼度対策としてこの障害の影響を所定の範囲内に保つという条件のもとに許容できるトラヒック量を求める。

 以上の予備的な設計手法を用いて、最小ループ網、すなわち、各ノード間のケーブル本数が1本の網が正常時および障害時に処理できるトラヒック量を求める。この最小網から出発して.その後のトラヒック需要の伸びに応じて、どのような順序でケーブルを増設して行けばよいかを検討している。具体的な設計例としては、極東、東南アジア、中東、ヨーロッパ、アメリカ大陸を想定した5ノードの網{A1,A2,A3,A4,A5}(Aiはノードi,i+1間のケーブル本数)をとり上げ、最小ケーブル網{1,1,1,1,1}から出発するケーブルの増設シナリオを作成している。図2に得られたシナリオを示す。この設計例では、固定ルーティングの網にくらべて、動的ルーティングを採用することにより、ケーブルの増設時期を1~2年先延べできることになる。

 以上の所論から、 西回り、東回りの二とおりの伝送路に回線群を分散収容できるループ網が伝送路障害に対して有効なこと、時差のある国際網の特長により動的ルーティングが有効なことを定量的に評価できた。また、光海底ケーブルによる世界的なループ網のイメージと設計手法を与えることができた。

 以上のように、本研究は、網の有効性と信頼性を体系的に扱い、単なるアカデミックな検討に留まらず、将来の国際通信網のアーキテクチャ、網の発展形態をより現実的なモデルにより定量的に評価したものであり、今後の国際網の検討を進めていくうえで極めて有効なものである。この点から本研究は、通信網工学に対して大きく貢献する貴重な研究といえる。

 本研究の成果に対して、電子情報通信学会は、1988年、森 弘道(KDD)に「電子情報通信学会論文賞」と「電子情報通信学会米沢ファウンダーズメダル受賞記念特別賞」を贈った。

 

=電子情報通信学会ネットワークシステム研究専門委員会編集


文献

[1] 森 弘道、世界ループ網の設計と動的ルーティングの効果、1984年、電子通信学会論文誌'86/12 Vol.J69-B No.12

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