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開閉式膜構造物の全天候条件での昼光照明計算と視環境予測

任意の形状、任意の開口部、任意の多角形要素で構成される空間の例

図1 任意の形状、任意の開口部、任意の多角形要素で構成される空間の例

外野手の視野の輝度分布とフライボールの輝度対比

図2 外野手の視野の輝度分布とフライボールの輝度対比

[従来技術]

 従来の昼光照明設計では、天空輝度分布は一様と仮定し、直射日光は無視していた。また、従来の照明計算では、直方体や円柱など整形な空間に近似するのが一般的であった。さらに、相互反射による間接照度は簡易な近似式(作業面切断公式)で求められてきた。


[解決すべき課題]

 膜構造物など、非整形で開口部の大きな空間では従来の昼光照明設計の手法では誤差が大きくなるため、天空輝度分布や直射日光を考慮し、相互反射計算を行って照度を算出する必要がある。また、このような空間では室内表面積に占める光源としての開口部の割合が高いため、視環境の悪化を予測して対策を検討するためには、内部の任意の位置における視野内の輝度分布および視対象の輝度対比を算出する必要がある。


[手段]

 快晴から曇天までの天候条件のパラメータとして正規化クラウドレシオの概念を新しく考案し、CIE標準晴天空~中間天空~CIE標準曇天空までの全天候条件での天空輝度分布を数式でモデル化した。また、晴天空のクラウドレシオと太陽高度の関係から直射日光照度を算出する手法も考案した。

 非整形な空間を扱うために、室内表面を任意の多角形要素に分割し、それら全てに拡散透過率、正透過率、反射率を設定できるようにした。ガラスもない完全な開口部では、正透過率100%、反射率0%、拡散透過率0%となる。 透過率が正である全ての要素を昼光光源として、全ての要素の直接照度を計算した。また、任意の位置に任意の配光を持つ人工照明による全ての要素の直接照度も計算した。

 相互反射による間接照度を精度よく求めるために、全照度を未知関数とするフレドホルムの積分方程式を離散化して連立一次方程式とし、ガウスザイデル法により各要素の全照度を求めた。

 視環境予測のために、内部の任意の位置における視野内の輝度分布を、各要素の全照度に反射率を乗じて求めた。正透過率が正である要素の輝度は、その方向の天空輝度に正透過率を乗じて求めた。

 野球場でのフライボールのような視対象の輝度対比は、視対象表面の照度を室内表面の要素を光源として算出し、視対象の反射率を乗じて求めた。


[効果]

 任意の形状、任意の開口部、任意の反射率・透過率の多角形要素で構成される空間を対象として、任意の立地(緯度、経度)、任意の月日、任意の時刻、任意の天候条件における、内部空間の照度分布、内部の任意の位置における視野内の輝度分布、任意の視対象の輝度対比を算出することが可能となった。

 ケーススタディーとして、野球場において、夕方のフライボールの輝度対比が時間とともに負から正へと変わり、特に輝度対比の絶対値が0.15を下回る約10分間はボールを見失う恐れがあるので人工照明を補助的に用いる必要があることを示した。


[応用]

 この昼光照明計算法は、一般的な事務室を含めてあらゆる空間の照度分布や輝度分布を算出することができる。 また、昼光照明設計における予測計算だけでなく、CO2発生の1/3を占める建築の運用時においても人工照明の省エネルギー制御に用いることができる。魚眼レンズ付デジタルカメラにより測定した天空輝度分布や、静止気象衛星画像による日本全国の任意の地点における全天空照度および直射日光照度から、室内の昼光照度を予測し、基準照度に不足する照度だけを補うように人工照明を準リアルタイムに調光するシステムを考案した。このシステムの実現可能性を実験により示し、天空輝度分布の年間データを用いたシミュレーションにより、一年を通じて省エネルギーの効果があることを示した。

 多くの建築では、昼間でも人工照明を点灯して夜間と同じ照明電力を浪費している。このシステムにより、昼光照明を活用してCO2削減に貢献することが可能である。

 本研究の成果に対して、照明学会は、1993年、上谷芳昭氏(京都大学)、岩田朋子氏(京都大学)、松浦邦男氏(摂南大学)、斎藤 満氏(株式会社大林組)に対して「照明学会 論文賞」を贈った。


文献

[1] Daylight Calculation under All-Weather Conditions and Prediction of Luminous Environment for the Membrane Structures with Open and Closed Roof、(社)照明学会英文誌(平成3年)、1991年、J. Light & Vis. Env. Vol.15, No.2, pp.117-125

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キーワード

照明設計、照明計算、相互反射、輝度分布計算、天空輝度分布、直射日光照度、非整形空間、光計測、照明計算
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