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ISDNシステムの実用化

ソフトウェア階層構成

図1 ソフトウェア階層構成

 情報が企業活動や社会生活においてますます重要となるに伴い、その伝達手段である通信網の果たす役割も社会のインフラストラクチャとして増大する一方である。こうした情報化社会の発展に応えるため、NTTでは従来より電話系サービスの高度化、各種非電話系サービスの実現を図ってきた。しかし、従来の通信網は電話サービス主体に構成され、データ通信や画像通信等のサービス提供には個別の通信網を構築する必要があり、ユーザにとってもマルチメディア通信サービスの利用にはサービス毎の専用設備や契約が必要となるなど、総合的に非効率・不経済となる問題があった。一方、近年のディジタル技術の進展により、各種サービスの統合化が現実的なものとなってきた。

 このような背景から、音声・データ・画像等の各種情報を一元的に扱う総合通信網の概念が芽生え、1970年代後半からサービス総合ディジタル網(ISDN)に関する検討がCCITT(国際電信電話諮問委員会、現ITU-T)を中心に全世界的に進められた。我が国では、NTTを中心に1984年からINSモデルシステム実験が行われ、ISDNの国際標準化にも多くの貢献をしてきた。これと並行してISDNシステムの実用化を鋭意進め、国際標準の確定を踏まえ1988年4月よりISDNの基本インタフェース、1989年6月より一次群速度インタフェースによるサービスを世界に先駆けて全国的に展開した。1995年にはISDNを利用しPHSサービスが開始され、その普及が携帯電話市場を刺激し現在の市場へ拡大した。また、その頃より一般に普及し始めたインターネット接続はISDNの高速性に促進されて利用者数は急激に増加した。NTTのISDN利用加入者は2002年3月には1,032万加入に達した。

 実用化したISDNシステムは、CCITTの標準化仕様に準拠し、B系回線交換、パケット交換のほかにH系回線交換までを公衆網として全国的レベルで提供可能としている点が特徴的である。本システムは、ディジタル加入者線伝送技術、Iインタフェース信号処理技術、各種サービス統合交換技術、オペレーションシステム構成技術、新しいソフトウェア構成技術等の各種の先端技術を採用し、モジュール化思想をもとに統合システムとして構成したものである。

 加入者線伝送技術としては、既設の加入者線を利用した経済的なディジタル伝送方式である2線時分割伝送方式(ピンポン伝送方式)を実現し約7kmまでの伝送を可能とした。これにより、全国の加入者線損失累積分布の99%をカバーできる。また、導入初期の地域分散的需要に対して、経済的に加入者の張出し収容可能な遠隔加入者線多重伝送方式を実現した。更に、一次群速度インタフェース用に光ファイバ加入者線伝送方式を実現した。

 Iインタフェース信号処理技術に関し、加入者線信号処理の面では、加入者対応に高速で高度なDチャネル信号処理を必要とし、かつ多数の加入者を収容可能とするため、加入者単位の信号処理回路と一定規模の信号処理回路毎に集中制御する共通制御回路を設け、処理装置のスループットとビルディングブロック性を向上した。更に、T点バス上の複数端末からの制御信号、パケット情報を効率的に処理する1対nの信号処理技術等を実現した。一方、局間信号方式としては、ディジタル1リンク制御や発信者の各種情報を転送可能なISDN用共通線信号処理方式を実用化した。

 各種サービスを統合して提供する上で、B系、H系の各種速度の呼の交換が求められる。これらを1種類の通話路で効率よく交換するため、Bチャネルの64kbit/sを基本ベアラとした多元速度通話路とし、H系呼は複数のタイムスロット(n×64kbit/s)による交換とした。この場合、複数タイムスロットの時間順序を保証する必要があり、ダブルバッファ時間スイッチにより実現した。

 ソフトウェア構成としては、従来の専用的な構成から、将来的なサービス追加変更等への対応の容易性、技術の進展に伴う汎用的なプロセッサ等の普及を考慮して汎用OSを指向するとともに、基本OS、拡張OS、アプリケーションの3階層の構成とした。基本OSにはCTRON仕様のカーネル部を採用している。また、付加サービスによる擾乱から基本呼接続機能をガードする構成とし、基本呼接続を継続したままでアプリケーション部のみの部分再開機能を実現した。これらにより、変更の容易性、信頼性の確保が可能となった。

 これらの技術は次世代のノードシステムへの基礎となっている。

 本開発の成果に対して、電子情報通信学会は、1990年、江川 哲明氏 , 小宮 菱一氏 , 秋野 吉郎氏に「電子情報通信学会業績賞」を贈った。


=電子情報通信学会ネットワークシステム研究専門委員会編集


文献

[1] 江川哲明、毛利陸郎、河西宏之、石川宏、Evolution of Digital Network Toward ISDN、1987年、第12回国際電子交換シンポジウム
[2] 江川哲明、菊池隆、千葉由一、ISDN Trial and System Evolution in NTT、1987年、1987世界電気通信会議
[3] 池田博昌、塚田啓一、木村英俊、江川哲明、INS伝達システム、1987年、NTT研究実用化報告, 第36巻
[4] 江川哲明、吉田真、ISDNシステムの概要、1989年、NTT R&D, Vol.38
[5] 江川哲明、ISDNシステムの高度化と経済化小型化、1990年、NTT技術ジャーナル, 1990.6

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分野のカテゴリ

通信
(通信に係わる技術)

関連する出来事

1984年9月
INSモデルシステム実験
1988年4月
基本インタフェースサービス開始
1989年6月
一次群速度インタフェースサービス開始

世の中の出来事

1990
大学センター試験が始まる。
1990
東西ドイツが統一される。

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キーワード

ISDN、交換システム、Iインタフェース、プロトコル、多元速度、ピンポン伝送、ディジタル伝送、マルチメディア通信
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