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光ファイバの高性能化に関する先駆的研究

グレーデッドインデックス形多モード光ファイバ

図1 グレーデッドインデックス形多モード光ファイバ

W形光ファイバ

図2 W形光ファイバ

 高度情報化社会を支える要素技術として光ファイバ通信方式が重要であることはいうまでもない.光ファイバは多モード光ファイバと単一モード光ファイバに大別され,それぞれの適用領域を有するが,いずれも広帯域性・低損失性・高信頼性が通信路としての光ファイバの必須の要件である.

 本研究では光ファイバ通信研究の草創期から光ファイバ,光回路素子の研究に取り組んできた.まず、グレーデッドインデックス形多モード光ファイバの伝送特性を初めて解析し,ステップインデックス形と異なりモード間の群速度がほぼ一定になる効果があることを見出し,2乗形屈折率分布や,更に改良した分布で群速度差が極めて小となることを示した.また軸対称分布では光線理論の枠内でも群速度差を完全に零にすることはできず,下限が存在することを示した.以上の研究は1967~1968年に行われ,1970年代半ば以後に内外で広く行われた多モード光ファイバの研究開発の理論面の先導的役割を果たしたといえる.

 光ファイバの伝送帯域を更に広げるためには単一モード光ファイバを用いるのが有利である.本研究では信号光の波長(あるいは周波数)によりファイバ内の光の群速度が変化することが単一モード光ファイバの伝送帯域の制限要因になることに着眼し,光ファイバを構成するガラス材料の屈折率の波長分散の効果を導波構造に由来する構造分散を利用して打ち消す可能性を追究した.その結果,コア・クラッド間に低屈折率中間層をもつ3重構造を案出し,W形光ファイバと名づけた.それを用いれば単一モード領域内で構造分散の符号を正にも負にも自由に設計できることを1974~1975年に理論解析によって明らかにした.またW形ファイバでは単一モード条件を満たしつつコアの直径を大きくすることができ,従って光ファイバ間の接続損を小さくする上にも有効であることを示した.1983年ごろから,地上および海底の光ファイバシステムに広く利用されるようになった単一モード光ファイバには,W形光ファイバの範畴に属するものが米国を中心に多用されている.また偏波保持光ファイバ,単一偏波光ファイバにもW形分布の導波構造を利用するものが少なくない.また光技術開発の一つの重要な課題となっている非線形効果による短パルス発生にW形光ファイバの分散性を利用する研究も行われており,実用化が期待されている.このように,W形分布は今日では一つの基本形となっている.

 このほかにも本研究では多モード光ファイバの曲がりによるモード間の結合の機構を解析し,光ファイバの結合係数の性質を実験的に調べ主要な機構についてのいくつかの新しい結果を得た.

 以上述べたように,本研究は光ファイバの高性能化に関し新しい方向を開拓し先駆的役割を果たしてきた.これらの業績は誠に顕著である.

 本研究の業績に対して、電子情報通信学会は、1988年、川上 彰二郎氏に「電子情報通信学会 業績賞」 を贈った。


文献

[1] S. Kawakami and J. Nishizawa、An optical waveguide with the optimum distribution of the refractive index with reference to waveform distribution、1968年、IEEE Trans. Microwave Theory and Tech., vol. MTT-16, pp. 814-818, Oct. 1968
[2] S. Kawakami and J. Nishizawa、Anomalous dispersion of new doubly clad optical fibre、1974年、Electron. Lett., vol. 10, pp. 38-40, Feb. 1974
[3] 川上彰二郎, 西田茂穂、低屈折率中間層を持つ対称五層スラブ光線路におけるカットオフモ-ドの諸特性、1974年、電子通信学会論文誌, 57-C巻 9号, PP. 304-311(1974年9月)
[4] S. Kawakami and S. Nishida、Characteristics of a doubly clad optical fiber with a low-index inner cladding、1974年、IEEE J. Quantum Electron., vol. QE-10, pp. 879-887, Dec. 1974
[5] S. Kawakami、Relation between dispersion and power-flow distribution in a dielectric waveguide、1974年、J. Opt. Soc. Am., vol. 65, pp. 41-45, Jan. 1975
[6] S. Kawakami, S. Nishida and M. Sumi、Transmission characteristics of W-type optical fibers、1976年、Proc. IEE, vol. 123, pp. 586-590, June 1976

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キーワード

グレーデッドインデックス形多モード光ファイバ、W形光ファイバ、群速度、波長分散、構造分散
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