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K-3型VLBIシステムの開発

  • 写真なし佐分利 義和
  • 写真なし川尻 矗大
  • 写真なし河野 宣之
鹿島26mアンテナ

図1 鹿島26mアンテナ

水素メーザ周波数標準

図2 水素メーザ周波数標準

K-3VLBI処理装置の外観

図3 K-3VLBI処理装置の外観

 電波天文学の分野において、複数個のアンテナを用いた干渉計方式により、電波天体の構造やそれからの放射を分解能高く測定する技術は、1960年代から急速に発展してきた。しかし共通の基準発振器を用いる限りにおいては、ある程度以上アンテナ間距離を大きくとることはできず、従って分解能にも限度があった。

 その後、水素メーザを用いた高安定原子標準器の実現に伴い、アンテナ間の距離によらない、独立基準発振器をもつVLBI(超長基線干渉計)技術が誕生した。電波天文学的利用を目的に開発されたこの技術は、準星を受信対象とすれば、その電波が複数のアンテナに到達する時間差を高精度に測定することにより、測地学や地球回転研究に応用でき、また人工衛星を対象とすれば、その軌道・運動を極めて精度高く測定でき、更に人工衛星を介して、遠隔地点間の時刻同期を精密に行えるなど、非常に広い応用分野をもっている。

 VLBI技術は、1970年代後半から、米国NASAを中心に、測地学的利用を主目的としたシステムとして開発が進められ、1980年にMark-III型VLBIシステムの完成を見た。

 一方我が国においては、1974年より、電波研究所により開発が進められ、K-1型、K-2型と逐次その性能を高めながら、1979年からはK-3型システムへと発展してきた。その途上において日米科学技術協力計画の果たした役割は誠に大きく、大陸間距離を局間基線とするVLBI観測では、参加するシステム間の整合性をとることが必須条件であり、従ってK-3型システムの開発に際して、NASAより提供されたMark-III型システムの仕様は、重要な情報であった。しかしK-3型システムは、完全に日本独自の技術を駆使して開発されたものであり、現在世界中で稼動中のVLBIシステムの中で、Mark-III型システムは別として、自主開発に成功した例は日本のK-3型システムをほかにおいてない。

 VLBI技術は、基本的には、10数億光年隔たった準星からの微弱な電波を追跡し、受信する宇宙通信技術、独立した基準発振器を用い、受信波の位相を保持したまま、百億分の一秒(0。1ナノ秒)の精度での時間相関の検出を行うための高安定原子時計の技術、そして大量のデータを高速かつ高精度に相関処理を行う技術を前提としている。これらの諸技術を合せ所有していた電波研究所において、鋭意K-3型システムの開発が進められ、1983年に完成した。 1984年には、このシステムを用いて史上初めての本格的日米共同実験が行われ、鹿島局、カリフォルニア州モハービ局とハットクリーク局の3局間の基線長が誤差3cmで測定された。引き続き太平洋周辺の五つのVLBI局による実験が、1985年にわたり実施されたが、実験データを解析したところ、カウアイ局(ハワイ)やクエゼリン局(マーシャル群島)が、1年間に約5~8cmのスピードで日本に近づいていることが判明し、プレートテクトニクス理論を実証する輝かしい成果を収めた。

=電子情報通信学会宇宙・航空エレクトロニクス研究専門委員会編集

 本研究の成果に対して、電子情報通信学会は、1986年、佐分利 義和、川尻 矗大、河野 宣之に電子通信学会業績賞を贈った。

文献

[1] 超長基線電波干渉計(VLBI)特集号、1978年、電波研究所季報, Vol. 24, No. 130 (1978).
[2] N. Kawajiri, T. Ojima, N. Kawano, F.Takahashi, T. Yoshino and K. Koike、The First VLBI Experiment in Japan、1979年、Journal of the Radio Research Laboratory, Vol. 26, No. 119, pp. 13-64 (1979).
[3] 独立行政法人情報通信研究機構VLBIグループ、VLBI測地技術の開発とプレート運動の実証、2004年、Journal of the Geodetic Society of Japan, Vol. 50, No. 4, pp. 245-262 (2004).

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1979年4月
K-3システム開発開始
1983年11月
日米VLBI試験観測

世の中の出来事

1986
男女雇用機会均等法が施行される。
1986
三原山が209年ぶりに爆発する。

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キーワード

超長基線干渉計、水素メーザ原子時計、相関処理技術、時刻同期、宇宙・航行エレクトロニクス
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