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能動伝送回路網の設計理論

  • 写真なし柳澤 健
電流反転形NICを用いた能動RC回路の原理図

図1 電流反転形NICを用いた能動RC回路の原理図

NICを用いた集積化帯域通過フィルタのチップ写真

図2 NICを用いた集積化帯域通過フィルタのチップ写真

 通信機器の小型・軽量化に対する強い要望から、回路の小型化、集積化が進み、アナログ回路もまた例外ではない。アナログ回路を集積化する上で最大の障害はインダクタである。低周波領域においてインダクタの集積化は不可能であり、また、高周波領域においても特性の優れたインダクタを集積回路上に実現することは極めて困難である。このように、フィルタに代表される能動伝送回路網において、インダクタを用いない回路設計理論は、集積化のために必要不可欠であった。

 本研究では、インダクタを用いる代わりに、電流反転形負性インピーダンス変換器を使用することにより、任意の伝達関数を有する能動伝送回路網を実現できる設計理論を提案した。当時は任意の伝達関数を有する能動伝送回路網の設計理論が知られておらず、提案の設計理論は、当時の世界水準を凌駕する画期的な成果であり、能動伝送回路網の基礎理論となっている。現在でもこの分野の多くの著書に柳澤の構成法として引用されており、後に続く多くの研究者に多大な影響を与えている。

 次いで本研究では、容量と共に用いることにより、インダクタと等価な特性の得られるジャイレータの研究に着手し、薄膜集積回路によるジャイレータの実現、3端子対ジャイレータの提唱により、実用面からもフィルタの小型・軽量化、高信頼度化に大きく貢献した。さらに、多端子回路網に関しても、回路的自由度が多い、縮退した行列の復元アルゴリズムがないなどの理由により、多くの研究者はその研究を断念していた実現問題に関して、演算増幅器を用いて任意のコンダクタンス行列を実現する一つのアルゴリズムを提案し、多端子対回路網の実現に道を開いた。また、その具体的な応用として、多端子対多方向増幅回路という新しい機能回路を考案し、多端子対能動回路の新分野を開拓した。

 また、本研究では、能動伝送回路のモノリシック集積回路化に大きな成果をあげた。ビデオ信号周波数付近の高周波フィルタがモノリシック集積化に適していることに着目し、集積化に伴う各種の寄生素子の補償が容易な負性インピーダンス変換器を使用して、モノリシック集積化高周波能動フィルタの実現に成功した。負性インピーダンス変換器を用いた構成法は、その安定性から問題が多いとされ、実用面ではあまり注目されていなかったが、本研究では、負性インピーダンス変換器と抵抗によりジャイレータが実現できることを用いてLCRフィルタを模擬することで、安定性の問題を解決すると共に、回路を平衡化することにより、高周波化に伴う種々の問題点を解決した。これは、能動伝送回路のモノリシック集積回路化に対する大きな前進であり、その業績は非常に顕著である。

 その他本研究では、節点電圧シミュレーション法という新しい能動伝送回路網の構成法の提案、能動素子の非理想特性に対する対策等の数多くの論文を発表し、この分野の研究の進歩に貢献している。

以上のように、能動伝送回路網の基礎理論の確立から、モノリシック集積回路化という実用面にわたる一連の研究は、この分野において常に先導的な役割を果たし、その業績は極めて顕著である。

=電子情報通信学会回路とシステム研究専門委員会編集

 本研究の成果に対して、電子情報通信学会は、1986年、柳澤 健に業績賞を贈った。

文献

[1] 柳沢 健、能動RC伝送回路網、1957年、電気通信学会誌,39巻,1号
[2] 柳沢 健,金光 磐,庄司 保夫、薄膜回路を用いたトランジスタジャイレータ、1970年、電子通信学会論文誌(A),53-A巻,6号
[3] 柳沢 健,神林 紀嘉、演算増幅器を用いた任意のコンダクタンス行列の構成法、1976年、電子通信学会論文誌(A),59-A巻,5号
[4] 吉弘 貢,西原 明法,柳沢 健、低感度能動およびディジタルフィルタ-LCはしご形回路の節点電圧シミュレーション-、1977年、電子通信学会論文誌(A),60-A巻,7号
[5] 熊沢 正純,柳沢 健、平衡型NICを用いたビデオ帯域能動フィルタ、1985年、電子通信学会論文誌(C),J68-A巻,3号

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