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三次元走査フェイズドアレーの開発と実用化

  • 写真なし永井 淳
  • 写真なし久郷 幸次
  • 写真なし徳丸 仁
フェイズドアレーの二次位相給電と移相量子化の手順

図1 フェイズドアレーの二次位相給電と移相量子化の手順

ディジタル移相器のiビット番目の移相を与える部分が故障したときの位相誤差の確率密度を与えるチャート

図2 ディジタル移相器のiビット番目の移相を与える部分が故障したときの位相誤差の確率密度を与えるチャート

ディジタル移相器の故障率と利得の低下の平均値

図3 ディジタル移相器の故障率と利得の低下の平均値

固体送受信機形式における節約配列と位相誤差

図4 固体送受信機形式における節約配列と位相誤差

 マイクロ波半導体技術の進歩に伴い、アンテナ放射素子をアレー状に配列し、それぞれにマイクロ波移相器を接続してアンテナ指向性を電子的に制御するフェイズドアレーアンテナは、ビーム走査のための機械的なアンテナ回転可動部分がないためにアンテナビームを高速に走査でき、レーダや通信システムにおける目標の追尾や探索においてその実用化に大きな期待があった。

 フェイズドアレーアンテナに用いる移相器は、アナログ型とディジタル型があるが、ディジタル型は動作の安定性、制御のしやすさ等から多く用いられる。しかしフェイズドアレーの実現に不可欠なディジタル移相器を利用することにより、移相器の量子化位相誤差が放射特性を劣化させ不要な放射が生じる。この放射特性の劣化を低減し、更により小さい量子化ビット数の移相器でフェイズドアレーを構成することが重要である。特に、三次元的にアンテナビームを空間的に走査するフェイズドアレーでは、素子数が数千個に及ぶことが多く、特にその経済性、信頼性の優れた構成法が望まれた。

 このために、量子化位相誤差を低減させるための新しい給電方式である『二次位相給電方式』を提案し、その有効性を明らかにした。又、ディジタル移相器の故障とアンテナパターン劣化との関係、更には、経済性の観点からアンテナ素子を間引いたアレー、いわゆる節約アレーの設計手法について統計的手法により明らかにし、素子数の大きい大形フェイズドアレーについての設計手法を確立した。

これらの成果をもとに、レーダ及び航空機着陸援助装置等に用いられるフェイズドアレーの開発を行い実用化に大きく寄与した。

 以下に本研究開発の主要な技術である二次位相給電方式、移相器の故障とアンテナ指向性劣化の関係、アレーの節約配列の観点から解説する。

(1)二次位相給電方式
 フェイズドアレーアンテナに使うディジタル移相器はその性質上不連続な移相量をとる、このためアンテナ開口上の位相分布が量子化され所定の開口分布から乱れることにより放射指向性のサイドローブが劣化する。この劣化を防ぐ方法の一つが二次位相給電方式である。この方法は等位相で発振している多数の電源からそれぞれの放射素子までを給電線および移相器で接続して放射させる方法で、このときに各電源に適当な長さの給電線を接続し、移相器入力端の位相分布を人為的に二次位相分布とし、この位相も含めて移相器の移相量を量子化し、アンテナ素子上に現れる位相誤差を非周期的にしたり、この誤差の大きさを最小にすることでサイドローブを低くする方式である。図1に素子およびアレーの構成と二次位相給電によって得られる位相分布を示す。

(2)素子の故障が放射特性に与える影響
 数多くの素子で構成されているため、素子に故障が生じ易く、これらの故障素子を電気的に所定の制御をすることができなくなる。電源に故障が生じればアンテナ素子から電力が放射されず、またディジタル移相器が故障すればアレーの開口分布に所定の移相量を与えられず位相誤差が生じる。アンテナシステムのサイドローブ,利得の放射特性に対する故障素子との関係を指向性合成論の立場から検討した.故障として電源の故障のばあいとディジタル移相器の故障の2つを考慮してそれぞれの確率密度から放射指向性の統計的性質を定式化した。図2はディジタル移相器のiビット番目の移相を与える部分が故障したときの位相誤差の確率密度を与える図であり、図3は故障率と利得低下の関係の解析結果の例である。

(3)素子節約配列
 大形のフェイズドアレーでは制御回路の単純化とアンテナシステムのコストダウンのために放射素子数を節約する節約配列が望まれる。電源(固体化された送受信機)と移相器の節約を目的として各放射素子の省略および共用を行う方法について指向性合成理論の立場から解析した。大開口多素子配列の節約の状態を決める手順はマルコフ過程で近似でき各状態の確率が定まる。これから所望の開口分布の合成とその放射指向性を定式化し幾つかの解析例を示した。図4に素子節約の形式とそれらの位相誤差を示す。なお図中の節約形式(Ⅰ)~(Ⅳ)は以下である。

 (Ⅰ)配列格子点上で放射器・移相器・電源を省略しない(まったく素子の節約なし)

 (Ⅱ)配列格子点上で放射器・移相器・電源を全部省略する。

 (Ⅲ)相隣る配列格子点で移相器のみを共用する。

 (Ⅳ)相隣る配列格子点で移相器と電源を共用する。 

                                           (以上)

電子情報通信学会アンテナ・伝播研究専門委員会編集

 本研究の成果に対して、電子情報通信学会は、1982年、永井 淳、久郷 幸次、徳丸 仁に業績賞、1988年には永井 淳に功績賞を贈った。

文献

[1] 徳丸 仁,久郷 幸次,永井 淳、フェイズドアレイにおける二次位相給電方式-量子化位相誤差-、1971年、電子情報通信学会論文誌(B),54-B,No.5
[2] 徳丸 仁,久郷 幸次,永井 淳、統計的手法から見た二次位相給電方式、1971年、電子情報通信学会論文誌(B),54-B,No.6
[3] 徳丸 仁,久郷 幸次,永井 淳、統計的手法に基づいた面配列の素子共用理論、1971年、電子情報通信学会論文誌(B),54-B,No.10
[4] 徳丸 仁,久郷 幸次,永井 淳、固体発振器を用いたフェイズドアレイアンテナの新しい素子節約配列、1972年、電子情報通信学会論文誌(B),55-B,No.5
[5] 徳丸 仁,久郷 幸次,永井 淳、フェイズドアレイの素子の故障が放射特性に与える影響、1973年、電子情報通信学会(B),56-B,N0.6

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キーワード

アンテナ・伝播、マイクロ波、アレーアンテナ、電子走査アンテナ、デジタル移相器、二次位相給電方式、素子節約配列
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