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データ通信可能な高信頼度列車無線システムの実用化

  • 写真なし八木 正夫
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LCX方式新幹線列車無線システム概要図

図1 LCX方式新幹線列車無線システム概要図

空間波方式とLCX方式との周波数配列比較

図2 空間波方式とLCX方式との周波数配列比較

LCX布設位置と車上アンテナ

図3 LCX布設位置と車上アンテナ

 国鉄の東海道・山陽新幹線の列車無線は、開業時から列車公衆電話・指令電話および業務電話により、乗客にサービスを行うと共に走行中の列車と運転指令等との電話連絡を適確・確実にすることを可能にして、安心して乗客に御利用いただける新幹線の重要設備の一つになっていた。

 その後、世の中のデータ通信の利用増加に伴い、新幹線列車無線においてもデータ通信の適用が嘱望されていた。

 しかし、当初の列車無線システムは、基地局と移動局間の電波伝搬に空間を利用する、いわゆる空間波方式であり、両者間の移動する伝搬路がクリアであれば最良であるが、地形条件および設備建設後の都市化に伴う伝搬路の遮へい等によるマージン低下で、無線回線の信頼度低下が問題となることが予測され、必ずしも高信頼度列車無線システムには適していなかった。

 そこで高信頼度・高品質な新幹線列車無線回線を提供すると共にデータ通信を行うために、漏えい同軸ケーブル(LCX)の新幹線沿線への全線布設と、上り線・下り線のLCXを相互にバックアップさせる新しい新幹線列車無線システム(LCX方式)を開発し、これを1983年開業の東北・上越新幹線において実用化した。

この結果、次の事柄の実現が可能となった。

1. 列車公衆電話の全国即時ダイヤル化

通話回線S/Nが35dBから40dBに、単音明瞭度が67%から87%へ改善されたことにより、ダイヤルパルス・課金信号等の通話接続制御信号の送受信が高信頼度化され、東海道・山陽新幹線では実現できなかった列車発信通話の全国即時ダイヤル化が可能となった。特にこのサービスは、利用者の好評を博している。

2. データ通信

210km/hの高速走行時においてもFSK 1,200bit/sの伝送速度で、ビット誤り率は設計値の1×10-4以下に対して、1×10-5~10-6の実績値でデータ通信の運用を行っている。

具体的システムとしては、新幹線運転席に車両機器の動作状況を表示する車両モニタ装置の情報を東京にある指令所へデータ伝送する車両モニタ回線を構成し、指令による車両機器の状況把握および保全効率の向上が図られ、新幹線列車の正常ダイヤ確保に寄与している。

その後、1989年の東海道新幹線の列車無線の設備更改にあたり前記システムを発展的に拡張し、データ通信の伝送方式をGMSK 64kbit/s(8kbit×8ch)に変更し、実積ビット誤り率1×10-6~10-7を実現するとともに回線数の増加により、旅客へのサービスの向上、新幹線の信頼度向上が図られている。

このデータ回線の増は次のような用途に使用されている。

1. 基地局毎の列車番号登録(列車の在線位置)を行い、次項を可能としている。

2. 列車無線移動局機器の動作状況や在線位置を指令所に表示する列車無線モニタ回線を構成し、この在線位置情報により、交換台からの呼出を当該列車の在線ゾーンに直接掛ける方式を可能とし、業務・公衆電話の効率的運用に寄与している。

3. 文字情報として、事故発生時の状況及び新聞4社から提供される毎時10分毎のニュースを、客室でのテロップによる旅客への情報提供を行い、旅客サービスを向上している。 

4. 車両の異常動揺の施設指令へのリアルタイムデータ伝送により列車の安全性の向上に寄与している。

尚、このシステムの技術的な特色として、次のような点が挙げられる。

1. 一般の空間波方式の移動無線での受信電界の変動幅90dBより、少ない30dB程度の変動幅で収まるシステムであるため、データ伝送の誤り率が良好である。

2. 移動局送信出力が低くてすみ、且つ変動幅が少ないことから、LCX中継機の増幅器等の過負荷が無く、相互変調による不要波が発生しないので、使用周波数が連続して使用でき、同一帯域で多数の周波数を使用したシステムである。

3. 列車無線は公衆通信と異なり、トンネルと平野部分が連続する鉄道沿線に、線状でオーバリーチの無いサービスエリアを確保する必要があり、特にVHF帯、UHF帯では、このLCX方式が最適の方式である。

                 =電子情報通信学会無線通信システム研究専門委員会編集=

 本研究の成果に対して、電子情報通信学会は、1984年、八木 正夫(当時国鉄)、赤川 馨(当時国鉄)、岸本 利彦(当時国鉄)に業績賞を贈った。

文献

[1] 赤川馨、岸本利彦、その他、全国新幹線の列車無線計画、1973年、鉄道におけるサイバネティクス利用国内シンポジウム論文集320p-328p
[2] 岸本利彦、佐々木伸、LCX通信システム(単行本)、1982年、電子通信学会
[3] 松本和臣、東海道新幹線列車無線取替工事を終えて、1989年、鉄道通信協会 会誌40巻、7号

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(通信に係わる技術)

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1969年
トンネル対策として、大阪地下鉄等民鉄、東海道、山陽新幹線で実用化、
1973年
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世の中の出来事

1984
グリコ・森永事件が起こる。

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キーワード

列車無線システム、高信頼度移動通信、データ通信、移動無線の周波数有効利用、線状無線エリアの形成
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