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位相連続FSK方式に関する基礎研究

  • 写真なし宮川 洋
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通常の2進位相連続FSK方式における位相の変化

図1 通常の2進位相連続FSK方式における位相の変化

2モード2進位相連続FSK方式における位相の変化

図2 2モード2進位相連続FSK方式における位相の変化

 位相連続FSK方式(CPFSK、 Continuous Phase Frequency Shift Keying)では、位相の連続性という制約があるので、各タイムスロットの波形は独立ではない。すなわち、一つのタイムスロットで送る情報は、そのタイムスロットの波形を決めるだけでなく、その後のタイムスロットの波形にも影響を与える。そこで、複数タイムスロットにわたる波形観察によって復調を行うと、1タイムスロットごとの復調と比べて、誤り率特性を改善することができる。例えば、通常の2進位相連続FSK方式において、最適変調指数を用い、3タイムスロット観察のコヒーレント検波による復調を行うと、コヒーレント検波2相PSK(Phase Shift Keying)と比べて、同じ誤り率において1dB程度SN比が改善される。これは、米国の研究者が発表したことであるが、多くの研究者が驚きをもってその成果を見た。当時、コヒーレント検波2相PSKの誤り率特性が最も良いというのが常識であり、その常識を破る結果であったからである。しかし、コヒーレント検波2相PSKの誤り率特性が最も良いというのは、1タイムスロットごとに復調するという条件の下での話であり、皆その条件を忘れていたのである。

 通常の2進位相連続FSK方式では、観察間隔を3タイムスロットより長くしても、誤り率特性はそれ以上改善されない。これは、位相変化のパスを考えた場合、図1の太線で示すような2タイムスロットで閉じるパスがあるためである。図中のhは変調指数、Tはタイムスロットの長さ、0、1は情報を表す。10と01のパスは、2タイムスロットで閉じている。したがって、それ以上いくら長く観察しても両者の信号間距離が長くなることはなく、両者を区別することに役立たない。10と01以外の組合せに関しては、3タイムスロット以上観察すれば効果があるが、3タイムスロットで10と01の信号間距離と等しくなり、頭打ちになる。

 この限界を打破するために考案された方式が、本研究の最初の成果となった多モード2進位相連続FSK方式である。多モード2進位相連続FSK方式とは、2進位相連続FSK方式において、タイムスロットごとに変調指数を変化させる方式である。用いる変調指数の数がMであれば、Mモードとなる。Mモードの場合、パスが閉じるのは、少なくとも(M+1)タイムスロット以降になる。図2は、2モード2進位相連続FSK方式における位相変化を示したものである。h1とh2は、交互に用いる二つの変調指数である。この方式で初めてパスが閉じるのは、3タイムスロットであり、通常の2進位相連続FSK方式よりも長くなっている。これにより、二つの変調指数を最適に設定すると、2モード2進位相連続FSK方式は、コヒーレント検波2相PSKと比べて、同じ誤り率において3dB程度SN比を改善することができる。従来、誤り率特性の改善には誤り訂正符号が使われ、1dB、2dBのSN比改善ですら多大な努力の結果として得られていたので、3dBという値は驚異的であった。

 同様の効果は、多進位相連続FSK方式でも得ることができる。多進位相連続FSK方式では、情報伝送速度を一定とすると、2進位相連続FSK方式よりも単位タイムスロットが長くなるので、位相変化のパスが閉じるまでの時間長が大きくなる。多進位相連続FSK方式では、コヒーレント検波2相PSKと比べて、4dB程度までSN比を改善することができる。

 本研究では、ノンコヒーレント検波でも位相の連続性を利用した復調を行うことにより、位相連続FSK方式が優れた誤り率特性を有することを示し、また、コヒーレント検波における誤り波及をノンコヒーレント検波の併用で防止する方法の提案なども行っている。位相連続FSK方式は、占有帯域幅が狭く、非直線歪に強いという性質ももっており、本研究による成果が加わって、ますます優れた方式になった。

 本研究では、位相連続FSK方式に関するこのような検討を更に発展させて一般化している。すなわち、従来の誤り訂正符号による誤り率特性改善の方法では、誤り訂正符号により付加される冗長性と変調信号波形が無関係であった。そこで、符号器と変調器、復調器と復号器をそれぞれ一体として、符号と変調信号波形が関係をもつようにすれば、誤り率特性を大幅に改善することができる。この観点から、相関PSK方式、相関QAM方式などの提案を行っている。多モード2進位相連続FSK方式も、タイムスロットごとに変調指数を変化させることが、符号と変調を一体化させることに相当している。

 今日、「符号化変調」という名称は多くの技術者が知っているが、本研究は、世界で初めてその方式を考案したものである。なお、蛇足ながら、符号化変調の世界初の方式である多モード2進位相連続FSK方式は、Multi h CPFSKとも呼ばれている。変調指数hをマルチにするという意味である。Multi h CPFSKは、多モード2進位相連続FSK方式とまったく同じ方式であるにもかかわらず、多モードの発表から相当経った後に他の研究者が自分の成果として論文発表した。その研究者が多モードの文献を見ていたのか、見ていなかったのかは分からないが、文献検索が容易に行える今日では考えられないことである。

電子情報通信学会通信方式研究専門委員会編集

 本研究の成果に対して、電子情報通信学会は、1980年、宮川 洋、原島 博に業績賞を、田中 良明に業績賞と丹羽記念賞を贈った。

文献

[1] 田中良明,原島博,宮川洋、多モード2進位相連続FSK方式、1975年、電子通信学会論文誌(A), Vol.58-A, No.11, pp.712-718, 1975年11月
[2] 宮川洋,原島博,辰井教孝,田中良明、位相連続波を用いたディジタル位相変調方式、1975年、電子通信学会論文誌(A), Vol.58-A, No.12, pp.767-774, 1975年12月
[3] 田中良明,原島博,宮川洋、多進位相連続FSK方式のコヒーレント検波、1976年、電子通信学会論文誌(A), Vol.J59-A, No.3, pp.255-256, 1976年3月
[4] 田中良明,原島博,宮川洋、位相連続FSK方式における誤り制御の一方式、1976年、電子通信学会論文誌(A), Vol.J59-A, No.10, pp.893-895, 1976年10月
[5] 田中良明,原島博,宮川洋、相関QAM方式、1978年、電子通信学会論文誌(B), Vol.J61-B, No.2, pp.106-112, 1978年2月
[6] 田中良明,原島博,宮川洋、PSKにおける誤り率特性改善の一方式、1978年、電子通信学会論文誌(B), Vol.J61-B, No.7, pp.593-599, 1978年7月
[7] 田中良明,原島博,宮川洋、CPFSKへの誤り訂正符号の適用、1978年、電子通信学会論文誌(B), Vol.J61-B, No.10, pp.823-830, 1978年10月
[8] H.Miyakawa, H.Harashima, and Y.Tanaka、A New Digital Modulation Scheme、1975年、International Conference on Digital Satellite Communications, Kyoto, Japan, pp.105-112, November 1975
[9] 辰井教孝,田中良明,原島博,宮川洋、位相連続波を用いたディジタル位相変調方式、1974年、電子通信学会通信方式研究会資料, No.CS74-26, 1974年5月
[10] 田中良明,原島博,宮川洋、多モード2進位相連続FSK方式、1975年、電子通信学会通信方式研究会資料, No.CS74-185, 1975年3月

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