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超電導磁気浮上式鉄道における列車運転制御システムの開発

  • 写真なし長田 豊
  • 写真なし池田 春男
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  • 写真なし伊藤 健治
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山梨実験線での走行試験風景

写真1 山梨実験線での走行試験風景

山梨実験線の変電所全景

写真2 山梨実験線の変電所全景

南線用インバータ

写真3 南線用インバータ

山梨実験線の列車運転制御システム(片線分)

図1 山梨実験線の列車運転制御システム(片線分)

駆動制御システムの機能概要

図2 駆動制御システムの機能概要

北線用インバータの主回路構成(1相分)

図3 北線用インバータの主回路構成(1相分)

電力変換器の仕様

表1 電力変換器の仕様

東京~大阪間を1時間ほどで結ぶ新しい鉄道として、超電導磁気浮上式鉄道の開発が行われている。各種の基礎研究や、全長7kmの宮崎実験線での検証試験などを経て、1997年からはトンネルや橋梁、曲線、勾配、一部複線区間などを有する、全長18.4kmの山梨実験線で走行試験が行われている(写真1)。

超電導磁気浮上式鉄道では、車上の超電導磁石を界磁とし、地上に電機子コイル(推進コイル)を配置した、地上一次方式のリニア同期モータ(Linear Synchronous Motor:LSM)によって走行する。LSMを駆動するための電力は、沿線の変電所に設置された電力変換器から直接、推進コイルに供給される。それゆえ、変電所と沿線の電気設備は、LSMに駆動電力を供給することに加えて、当該区間に在線する列車を運転する機能を併せ持つことになる。山梨実験線では、このような給電と列車運転の機能が一体となった、列車運転制御システムの開発と検証が行われてきた。この列車運転制御システムの特徴を要約すれば、以下のようになる。
(1) 大容量インバータ
停止状態から超高速域まで、長大編成の列車を運転することから、LSMの駆動には大容量のVVVF電源が必要となる。従来は、この駆動電源としてサイクロコンバータを採用してきたが、入力側の無効電力や高調波電流を軽減できること、出力周波数を高くとることができることなどから、山梨実験線では新たにインバータを採用することになった。4MVA器や10MVA器を先行製作し、宮崎実験線での検証試験を踏まえて、38MVA器3台と20MVA器3台の、計6台のPWMインバータを山梨実験線に建設した。GTO素子を3~4直列にしたフルブリッジインバータユニットを、出力変圧器で直列に接続して大容量PWMインバータを構成している。また、低速域(低周波数域)では、一部のユニットを出力変圧器を使用しないように接続変更して、これに大きな電圧を分担させて出力変圧器の磁気飽和を防いでいる。
(2) 給電システム
推進コイルは一定の長さに区分し、走行列車に推力変動が発生しないように、変電所に設置された3台のインバータで順次、これらの推進コイルに給電する。このき電方式は三重き電方式と呼ばれており、1系統の故障時でも、残りの2系統で継続して運転することが可能である。
(3) 駆動制御システム
列車の速度制御や定点停止制御などは、変電所に設置された駆動制御システムで行われる。列車位置情報から、通電電流の位相を決定するとともに、列車の速度を演算する。また、上位のシステムから随時与えられる離散的なランカーブから、加減速度やその変化率を考慮した連続的な速度パターンを作成し、列車速度がこれに一致するようにインバータ電流を調整する。
(4) 変電所渡り制御
複数変電所から構成される場合には、列車が変電所間を渡る際に、両方の給電システム・駆動制御システム間でスムーズな制御の受け渡しを行う必要がある。また、隣接変電所からの延長き電や、変電所間の境界変更などによって、故障時を含めて柔軟な列車運転を行うことが可能である。
写真2は山梨実験線の変電所全景、図1は列車運転制御システムの構成、図2は駆動制御システムの機能概要を示したものである。また、写真3はインバータの外観、図3は主回路構成、表1はその仕様を示したものである。

このような、給電と列車運転の機能が一体となった列車運転制御システムを用いて、1997年12月には、5両編成で設計最高速度550km/hが達成された。また、1999年11月には、相対速度1,003km/hのすれ違い走行試験が行われた。さらに、北線と南線の二つのシステムを用いて、変電所渡りや複数列車制御などの機能も検証された。

なお、本列車運転制御システムの開発は国庫補助を受けて行われた。

2000年3月、超電導磁気浮上式鉄道に対して、旧運輸省・超電導磁気浮上式鉄道実用技術評価委員会は「実用化に向けた技術上のめどは立ったと考えられる」との評価を行った。

 本研究の成果に対して、電気学会は、2000年、長田 豊、池田 春男、小池 茂喜、伊藤 健治、成戸 昌司に電気学術振興賞進歩賞を贈った。

文献

[1] 池田春男,川口育夫,藤江恂治,内山豊春,中村 清,小池茂喜、複数の電力変換所に対応したLSM制御方式の検討、1989年、平成元年電気学会産業応用部門全国大会,No.5
[2] 加賀重夫,池田春男,堤 和哉,田上芳郎,田中実、LSM駆動用インバータの開発-4MVA器試作結果-、1990年、電気学会交通電気鉄道・リニアドライブ合同研究会,TER-90-26
[3] 池田春男、小特集;超電導磁気浮上式鉄道 Ⅳ.電力供給システム、1991年、電気学会雑誌,Vol.111,No.6
[4] S.Kaga, H.Ikeda, J.Kitano, A.Horakuchi, N.Kato, N.Morishima, H.Aizawa、Power Suppy System for Maglev System、1993年、Int. Conf. Speedup Tech.
[5] 北野淳一,位田 薫,池田春男,中島 強,小池茂喜,麦屋安義,石井秀明,枌原秀樹、山梨リニア実験線用駆動制御システムの開発、1997年、電気学会リニアドライブ研究会,LD-97-1
[6] H.Ikeda, S.Kaga, Y.Osada, J.Kitano, K.Ito, Y.Mugiya, H.Ito, K.Tutumi、Development of Power Supply System for Yamanashi Maglev Test Line、1997年、PCC-Nagaoka'97
[7] A.Okui, S.Kaga, H.Ikeda、Control Method of PWM Inverter for Driving LSM to Reduce the Burden of Output Transformer、1998年、IEEE-PESC'98, E-2-3
[8] 池田春男,北野淳一、山梨リニア実験線の給電システム、1998年、電気評論,1998.6
[9] 長田豊,北野淳一,池田春男,中島 強,水谷麻美,鶴田慎一郎,麦屋安義,伊藤健治、山梨リニア実験線の駆動制御システム、1999年、電気学会論文誌D,Vol.119-D,No.3
[10] 奥井明伸,中道好信,池田春男、LSM駆動用インバータの低速度域における出力電圧制御方式と出力電圧特性、1999年、電気学会論文誌D,Vol.119-D,No.6

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磁気浮上式鉄道、山梨実験線、列車運転、超伝導・超電導、パワーエレクトロニクス、リニアドライブ
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