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省電力エアコン用高効率リラクタンストルク併用希土類磁石モータの開発

  • 写真なし大山 和伸
  • 写真なし山際 昭雄
  • 写真なし武田 洋次
永久磁石モータの回転子構造

図1 永久磁石モータの回転子構造

各種モータの回転数-効率特性

図2 各種モータの回転数-効率特性

リラクタンストルク併用希土類磁石モータ搭載圧縮機

図3 リラクタンストルク併用希土類磁石モータ搭載圧縮機

リラクタンストルク併用希土類磁石モータ

図4 リラクタンストルク併用希土類磁石モータ

業務用エアコンの概観図

図5 業務用エアコンの概観図

 1981年に世界初のインバータエアコンが我が国で発売されてから、その快適性・利便性が急速に認知され、今や一家に複数台設置されることが常識となってきた。エアコンの特徴は冷房・暖房両方に使える、クリーンである、ヒートポンプで高効率などである。しかし、使用時間・台数の増加に伴い、家庭内使用電力量の20%を超えるに至り、ユーザの年間消費電力量(年間電気代)低減や地球温暖化防止の観点から省電力化の要求がますます高まっている。初期のインバータエアコンは圧縮機を駆動するモータとして、誘導モータ(IM)や表面磁石構造の永久磁石モータ(SPMモータ)が使われていた。このため、エアコンの運転時間の最も長い中低速回転域の効率が不十分であった。更に、快適性の面から冷暖房能力を強化しようとすると、圧縮機の回転数をより高くする必要があり、その結果中低速効率が益々低下する問題があった。

 そこで、1990年12月から1993年3月の大阪府立大学とダイキン工業(株)の産学協同研究において、モータの回転子内部に希土類永久磁石を埋め込む構造(IPM)の採用(図1)と電流ベクトルの適切な制御を行うことにより、1)永久磁石により発生するトルクに加えてリラクタンストルクも効果的に利用できること、2)弱め磁束制御が実現でき、インバータの電圧を上げることなく高速運転にも対応できることを理論的、実験的に検証し、低速から高速までの広い速度範囲で高効率なモータの基礎研究に成功した。その後、1993年4月から1995年3月までエアコンへの応用研究を大阪府立大学との産学協同研究を活用したダイキン工業(株)内の社内プロジェクトで行い、圧縮機駆動用モータとしての最適化技術開発を完成させた。1年間の商品化技術開発を経て、高効率リラクタンストルク併用希土類磁石モータを1996年3月発売の省電力家庭用エアコン・小型壁掛形「SXシリーズ」で世界で初めて実用化した。これにより、圧縮機モータの効率をインバータエアコンの中で多数を占めていた誘導モータに比べて中低速回転域で約30%、高速回転域で約10%も良くする事に成功し、エアコンの省エネ性を画期的に向上し、年間消費電力量半減(年間電気代半減)に大きく貢献した(図2)(図3)。このモータは、1997年1月中大型ルームエアコンに搭載され、1998年4月には高効率化の壁と言われていた省エネ50%を突破する省エネ60%の業務用エアコン・スカイエア「スーパーインバーター60」に搭載し、(財)省エネルギーセンター省エネ大賞を受賞した。次年度以降、ビル用マルチエアコンへも順次搭載を拡大(図4)(図5)し、家庭、事務所からビルにいたるまで、広い範囲での電力使用量の削減に大きく貢献している。

 省電力化の最大のポイントは、リラクタンストルクを有効に使い圧縮機の回転に必要なトルクを約半分のモータ電流で発生できるようにし、損失の極小化を達成し、エアコンの省電力化に最も効果的な中低速回転域の効率を小容量家電モータでは前例のないレベルの95%もの高効率化を達成した事にある。さらに省電力化の第二のポイントは、高速回転域での弱め磁束制御の実現で永久磁石モータ固有の課題であった回転限界を2倍以上に高めることに成功し、エアコンの冷暖房能力の増大要求に対しても中低速回転域の高効率特性を犠牲にすることなしに、低速~高速回転の広い範囲での高効率化を達成した事にある。

 地球環境問題に対する省エネルギーへのユーザの意識が高まってきている中で、より少ないエネルギーでより快適な室内環境を提供できるエアコン用モータの基本技術として、また、高効率・低速大トルク・高速回転の要求を全て満たすモータとして産業機器や自動車(ハイブリッドカー)などの他業界からの注目度も高く、省電力モータ技術の大きな方向を示したものである。

 この産学協同研究においては、武田 洋次(大阪府立大学)、森本 茂雄(大阪府立大学)、大山 和伸(ダイキン工業)、山際 昭雄(ダイキン工業)が主たる役割を果たした。

 本研究の成果に対して、電気学会は、1998年、この基礎研究から実用化に対し、大山 和伸(ダイキン工業)、山際 昭雄(ダイキン工業)、武田 洋次(大阪府立大学)に電気学術振興賞進歩賞を贈った。

文献

[1] 大山和伸、松野澄和、エアコンにおけるパワーエレクトロニクス技術の変遷、pp.772-775(2005年12月)、2005年、電気学会誌、Vol.125,No.12
[2] 大山和伸、リラクタンストルク応用電動機の高性能化動向、pp.63-66(2003年2月)、2003年、電気学会論文誌D,Vol.123-D,No.2
[3] 武田洋次、松井信行、森本茂雄、本田幸夫、埋込磁石同期モータの設計と制御、2001年、オーム社(2001年10月25日出版)
[4] 松野澄和、板垣哲哉、溝部浩伸、山際昭雄、大山和伸、正弦波駆動による空調機用IPMモータの高効率運転制御法、pp.1171-1176(1999年10月)、1999年、電気学会論文誌D,Vol.119-D,No.10
[5] 大山和伸、省エネルギーエアコンの開発 ~消費電力が半分になったわけ~、pp.813(1998年6月)、1998年、電気学会論文誌D,Vol.118-D,No.6
[6] 武田洋次、森本茂雄、大山和伸、山際昭雄、PMモータの制御法と回転子構造による特性比較、pp.662-667(1994年6月)、1994年、電気学会論文誌D,Vol.114-D,No.6
[7] 森本茂雄、上野智広、武田洋次、埋込磁石構造PMモータの広範囲可変速制御、pp.668-673(1994年6月)、1994年、電気学会論文誌D,Vol.114-D,No.6
[8] 森本茂雄、畠中啓太、童毅、武田洋次、平紗多賀男、PMモータの弱め磁束制御を用いた広範囲可変速運転、pp.292-298(1992年3月)、1992年、電気学会論文誌D,Vol.112-D,No.3
[9] 童毅、森本純司、森本茂雄、武田洋次、平紗多賀男、ブラシレスDCモータの省エネルギー高効率運転法、pp.285-291(1992年3月)、1992年、電気学会論文誌D,Vol.112-D,No.3
[10] 森本茂雄、弓削靖、武田洋次、平紗多賀男、PMモータの機器定数と出力範囲、pp.1171-1176(1990年11月)、1990年、電気学会論文誌D,Vol.110-D,No.11

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埋込磁石同期モータ、リラクタンストルク、希土類磁石、省エネルギー、エアコン、IPM、リラクタンスDCモータ、回転機
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