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パルス超電導マグネットシステムの開発

  • 写真なし立石 裕
  • 写真なし竹田 正俊
  • 写真なし川島 眞生
MJ級パルス超電導マグネットシステム

図1 MJ級パルス超電導マグネットシステム

パルス超電導導体(1)

図2 パルス超電導導体(1)

パルス超電導導体(2)

図3 パルス超電導導体(2)

パルスマグネットの巻線部の構造

図4 パルスマグネットの巻線部の構造

ダブルパンケーキコイル

図5 ダブルパンケーキコイル

4MJパルス超電導マグネット

図6 4MJパルス超電導マグネット

エネルギー移送の基本回路

図7 エネルギー移送の基本回路

エネルギー移送システム主回路

図8 エネルギー移送システム主回路

試験結果(最高速)

図9 試験結果(最高速)

試験結果(最大電流)

図10 試験結果(最大電流)

試験結果(双極運転)

図11 試験結果(双極運転)

MW級エネルギー移送装置の諸元

表1 MW級エネルギー移送装置の諸元

パルス超電導マグネットの諸元

表2 パルス超電導マグネットの諸元

 将来のエネルギー源として期待される核融合の中で、技術開発が最も進んでいるトカマク型炉では、プラズマ閉じ込め用のトロイダル磁界と、プラズマを誘導加熱するため、および平衡を維持するためのポロイダル磁界とを必要とするが、炉全体としてのエネルギー収支をプラスにし、正味の出力を取り出すためには、これらの磁界を発生させるためのマグネットを超電導化する必要がある。トカマクの炉工学研究開発では、超電導技術が直流応用を主に発展してきた関係でトロイダルコイルの超電導化が先行しているが、最終的にはポロイダルコイルも超電導化する必要がある。ポロイダルコイルのうち、プラズマを安定化させるための平衡コイルは、規模こそ直径20m級と大きいが、必要な磁界・掃引速度とも低く、超電導マグネット技術としては重大な障害はないと考えられる。これに対し、炉中心に置かれるOHコイルは、7T/1秒というパルス磁界を発生しなければならないので、その実現のためには、多くの課題を解決する必要がある。特に、
 ・パルス超電導技術における第一の問題である交流損失に関しては、線材レベルでは近年多くの進展が見られるが、マグネット設計という観点から導体レベルにおいて検討すべき課題が残っている。
 ・従来開発されてきたパルスマグネットは規模が小さいことから、運転中の擾乱に対する余裕度は必ずしも高くないが、核融合用超電導マグネットへの応用に際しては、当然高い安定性が要求され、パルスマグネットも直流マグネットと同様に、いわゆる完全安定化の方向に向かうものと予想される。完全安定化のような高い定常安定性は、一般にはパルスマグネット技術とは相反する要請であり、これをうまく調和させる必要がある。
 ・パルスマグネットが大型化するにつれ、その励磁運転に必要な電力が問題になってくる。ポロイダルマグネットシステムの全蓄積エネルギーは数ギガジュ-ルに達するものと考えられ、1秒で励磁する場合には、数ギガワットの電力が必要になる。これに対してエネルギー蓄積装置を利用する複数の案が出されているが、明確な解決策は今後の課題である。
 本技術開発は、こうした課題を解決すべく、蓄積エネルギー4MJおよび3MJのパルス超電導マグネットと、5MWの容量を持つ電力変換装置からなるシステム(図1表1表2)を開発し、90%を超える高い効率での、エネルギー移送方式によるパルス超電導マグネットの励磁試験に成功したものである。本システムの特徴と成果は次の通りである。

(1)アルミニウム安定化パルス超電導導体の開発
 マグネットに使用する超電導導体の設計においては、冷却端回復の意味での完全安定化の達成と、炉工学システム設計からの要請である、マグネット全損失を蓄積エネルギーの0.2%以下とすることを目標とした。

これらの条件下で5kA級パルス超電導導体を設計し、完全安定化を高電流密度下で実現するためには、銅による安定化ではなく、高純度アルミによる安定化が必要である。また、CuNi外皮超電導素線の使用と、導体構造の工夫により、高純度アルミを用いても結合損失を設計条件内に抑えられる。試作した導体(図2図3)の特性は次の通りである。
一次撚線において、臨界電流の三倍強の回復電流が得られたことから、撚線の形で組み込んでも、高純度アルミニウムは安定化材としてきわめて有効である。
導体における回復電流の測定結果から、三重撚線構造のために、設計条件を満たすに十分な有効冷却表面積が確保されている。
導体の交流損失を測定した結果、設計条件を満足する低損失であった。
圧縮試験の結果から、多重撚線形導体単独では機械的に弱いため、マグネット巻線時に電磁力に対する補強が必要である。
(2)MJ級パルス超電導マグネットの開発
 開発した導体を用いて、蓄積エネルギー4MJのパルスマグネットを設計製作した(図4図5図6)。マグネットの設計に際しては、巻線各部の交流損失を求めることにより、安定性を検討した。また、交流損失により発生したヘリウム気泡の速やかな除去と、巻線の電磁力による動きの防止に重点を置いた。設計の特徴は次の通りである。
マグネットの全交流損失は、蓄積エネルギーの0.06%であり、0.2%以下という条件を十分に達成している。
交流損失による蒸発ヘリウムガスがすべて導体近傍に残留しても、ベーパーロックを起こす危険性はないが、安全のため1サイクル分の蒸発ヘリウムガスを収容できる冷却チャネルを設けた。これにより6T/secの運転でも不安定性は起きないと考えられる。
マグネットに発生する圧縮電磁力は、巻枠で支えるには大きすぎるので、巻線自身で支持する必要がある。この時、導体内部ステンレス鋼帯の挫屈を避けるために、補強用に外部ステンレス鋼帯を入れなければならない。巻線を模擬した圧縮試験の結果から、この外部補強鋼帯を有効に作用させるために導体の初期ひずみを取り除いておく必要があることが分かったので、マグネット製作時には予備圧縮を加えた。
拡張電磁力に対しては、導体ならびに外部補強鋼帯に張力をかけて巻線することにより、内向きの力を発生させ、ステンレスの材料強度内で支持させる。必要な巻線張力値は、導体の初期ひずみを取り除き、半径方向内向きの圧力伝達を良好にするという条件で決定すればよい。また、巻線張力による内向き圧力の積算は、各ターン間の圧力伝達に強く依存しており、伝達率を上げるためにも強い巻線張力が必要である。
(3)MW級エネルギー移送装置の開発
 マグネットのパルス励磁試験については、将来のポロイダルマグネットシステムへの適用を考慮して、通常行われるような電力系統からの直接受電による励磁ではなく、5MW級の移送容量を有する並列キャパシタスイッチング方式による電力変換装置を開発し、エネルギー移送方式による励磁を採用した。
図7に本変換装置の基本回路を示す。エネルギー貯蔵マグネットLs(SMES-4)、負荷マグネットLp(PSM-3)、それぞれのチョップ部、転送用キャパシタから構成される。サイリスタおよびダイオードの開閉を組み合わせることにより、3種類の運転モードを実現できる。図8は、負荷マグネットの通電方向を反転する双極性運転を行うために、チョップ部を追加した、最終的なシステムの主回路図である。表1に移送装置の諸元を示す。

(4)エネルギー移送方式によるパルス超電導マグネットの運転試験
 エネルギー移送試験の成果は次の通りである。
エネルギー移送システムの重要な課題である移送効率について、3MJ級の移送実験で、往復で80%を超える高い値を実現した。運転条件の最適化を図ることにより、さらに高い移送効率が期待できる。
システムの運転特性は、回路損失を考慮したエネルギー保存方程式により記述できる。これにより、実用電源として使用する場合の回路設計の指針を得た。
本方式によるエネルギー移送システムは、低電圧、低電流リップルという大きな利点と高速移送にも容易に対応できる優れた応答性を持つ。また、負荷マグネットの通電方向を反転する双極性運転も容易に実現できる。こうしたことから、将来のポロイダルマグネットの励磁電源として有望である。
マグネットのパルス励磁特性に関する成果は次の通りである。
3MJマグネットは4950A(5.94T)まで1.5秒というパルス運転(これは4MJマグネットを定格まで1秒で励磁したことに相当する)でも安定であった。(図9図10)従って、外皮層全体をCuNiにした三層構造超電導素線は、結合損失の低減にきわめて有効であり、パルスマグネットに用いても熱的な不安定性をもたらさない。
交流損失が少ないため、損失による導体の温度上昇は0.05K程度であり、パルス励磁への影響はほとんどない。
損失による温度上昇と、電圧計測におけるスパイク電圧の上限値から、3MJマグネットが定格において臨界電流マージン安定化されており、そのために安定なパルス励磁が達成された。
マグネットの通電方向を反転する双極性パルス運転を行っても、電磁気的および機械的な不安定性は生じず、実用上問題ない。(図11
3MJパルスマグネットの定格運転時における全交流損失は2.3kJであり、蓄積エネルギーの0.2%以下というポロイダルマグネットの設計基準の1/2という低損失を達成した。
4000A/1.5Sの双極励磁を55サイクル繰り返すという疲労試験ではマグネットの各種計測パラメータに変化は見られなかった。これを含めて、一連の運転実験により約1000回までのパルス励磁運転ではマグネットに疲労劣化が生じないことを明らかにした。


 本研究の成果に対して、電気学会は、1986年、立石 裕、竹田 正俊、川島 眞生に電気学術振興賞進歩賞を贈った。

文献

[1] 立石 裕、大西利只、小室和男、小山健一、アルミ安定化超電導線を用いた3MJパルス超電導マグネットの設計製作と通電特性、1985年、電気学会論文誌B分冊、105巻B、7号
[2] 立石 裕、小室和男、大西利只、竹田正俊、市原直、川島眞生、チョッパ回路を用いた超電導マグネット間のエネルギー移送システムの運転特性、1986年、電気学会論文誌B分冊、106巻B、2号
[3] T. Onishi, H. Tateishi, K. Koyama and C. Suzawa、Dc and Pulse Operations of 4MJ Pulsed Superconducting Magnet and Its Stress Analysis、1985年、IEEE Trans. on Magnetics,MAG-21

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キーワード

パルスマグネット、エネルギー移送、超伝導・超電導、核融合、電力貯蔵
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