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誘導反発式磁気浮上・案内とリニア同期電動機推進システムの開発

  • 写真なし井上 等
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ML-100

図1 ML-100

実験車両ML-500と逆T型ガイドウェイ

図2 実験車両ML-500と逆T型ガイドウェイ

ガイドウェイおよび実験車両ML-500の概念図

図3 ガイドウェイおよび実験車両ML-500の概念図

517km/h達成時の走行曲線

図4 517km/h達成時の走行曲線

ML-500R

図5 ML-500R

ML-500の主要諸元

表1 ML-500の主要諸元

 従来型の鉄道は、速度が増すにつれてレール-車輪間の摩擦(粘着)力が減少するため加速が困難になる。そのほか大電力の集電が難しくなる、車両に搭載する駆動用機器の容積・重量が増す、蛇行動など車両の運動が不安定になる、といった問題点が指摘されていた。

 そこで日本国有鉄道(現JR)は1970年、次世代超高速鉄道の研究開発は超電導磁石を用いた誘導反発磁気浮上・リニアモータ推進方式で進めることを決定した。リニアモータによる直接駆動は粘着に頼らず、地上1次型リニアモータならば駆動用機器の大半は車両に搭載しなくてもすみ、集電の必要もない。しかも電磁気的支持・案内により超高速でも車両運動の不安定現象は回避できる。

 基礎実験を積み重ねてから「日本の鉄道100周年」に当たる1972年、東京都国分寺市の鉄道技術研究所(現在の(財)鉄道総合技術研究所)の構内に小規模な走行路を建設し、超電導磁石を搭載した車両ML-100の実験走行を公開した(図1)。そして営業線の目標速度500km/hが確認できる本格的な実験設備として、延長7kmの宮崎実験線の建設を決定した。

 最初に開発したML-100は地上1次リニア誘導電動機(LIM)推進方式であったが、超高速の輸送機関としては地上1次リニア同期電動機(LSM、リニアシンクロナスモータ)の方が適していると考えられ、さらに電機子コイルに車両の左右案内力を発生させる推進案内兼用方式が考案されたため、宮崎実験線で採用されることになった。まずML-100の走行路を改造して誘導反発磁気浮上・地上1次LSM推進方式のML-100Aを開発し、この実験車を使って非接触で安定な走行が可能なことを確認した。

 宮崎実験線のガイドウェイは逆T型断面で、中央の突部コンクリートの側面には推進・案内用の地上コイルが、ガイドウェイ底面には浮上用地上コイルが敷設された。実験車両ML-500は突部コンクリートにまたがる跨座型車両である(図2)。逆T型を採用したのは、バックアップの摩擦ブレーキを構成しやすかったからである。中央突部コンクリートの上にH鋼を設置した。電気的ブレーキが破損した場合に備え、台車に設けたシューでこのH鋼を両側から押さえて安定・確実な制動力が得られるようにしたので、全長7kmの実験線を終端まで使えるようになった。

 車両に搭載される超電導磁石はL型で、地上コイルに対向して推進・案内用超電導コイル(SC)が垂直に、浮上用SCが水平に配置された。表1に宮崎実験線およびML-500の主要諸元を、図3にガイドウェイと実験車両の概念図を示す。

 ML-500の走行実験は1977年、まず1.3kmのガイドウェイを使って始まり、これが延伸されるに従い速度を上げていった。単車でしかも車長が短いため、空気力の影響を強く受け、車体の進行前側が持ち上げられる現象に悩まされたが、片側4極の浮上用SCのうち先頭と最後尾の起磁力を上げ、中央の2SCの起磁力を下げることによりピッチングバネを固くして、前上がりの姿勢を抑えることにした。1979年12月には7kmのガイドウェイにより目標速度を超す517km/hを達成し(図4)、ML-500による走行実験を終了した。

 初めML-500は超電導磁石から蒸発するヘリウムガスは大気中に放出していたが、1979年5月、ML-500の台車上に新たに冷凍システムを搭載して、ヘリウムの循環使用を試みた。この実験のために製作された車両をML-500Rと呼ぶ(図5)。この実験は、現在の超電導リニアモータカーの基本技術の1つである車載冷凍システムの先駆けをなすものであった。

  ML-500によって誘導反発磁気浮上・地上1次LSM方式が安定な500km/h走行に適していることが実証された。このシステムの実用化を進めるに当たり国から新たな補助金も交付され、宮崎実験線のガイドウェイはより実用的なU型断面に改造され、箱形断面の実験車両MLU001、続いてMLU002、MLU002Nの走行実験が行われた。その後、宮崎実験線U型をベースとする実規模の山梨実験線が建設され、1997年4月より3~5両編成列車による走行実験が続けられている。

 本研究の成果に対して、電気学会は、1980年、これらの開発研究の先導役を果たした井上 等、辰巳 保、久山 研一、荻原 宏康に振興賞進歩賞を贈った。

文献

[1] T.Iwahana、Study of Superconducting Magnetic Suspension and Guidance Characteristics on Loop Tracks、1975年、IEEE Trans. on Mag.,MAG-11,6, 1704-1711, 1975
[2] 京谷、超高速鉄道について、1971年、電学誌,91,4,581-587, 1971
[3] 京谷、超電導磁気浮上列車開発の現状とこれから、1975年、低温工学,10,3,77-83,1975
[4] 京谷、浮上式鉄道宮崎実験線、1977年、電学誌,97,8,687-693,1977
[5] T.Ohtsuka and Y.Kyotani、Superconducting Maglev Tests、1979年、IEEE Trans.on Magnetics, MAG-15 , 6, 1416-1421,1979.11
[6] 宮崎、井上、前川、超電導磁気浮上式鉄道、1979年、電学誌,99,9,805-813,1979

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キーワード

リニアドライブ、リニアモーターカー、宮崎実験線、ML-500、電気鉄道、超伝導・超電導
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