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気相軸付け法(VAD法)の研究開発

  • 写真なし伊澤 達夫
  • 写真なし枝廣 隆夫
  • 写真なし中原 基博
VAD法の概念図

図1 VAD法の概念図

VAD法によるプリフォーム製造装置の構成図

図2 VAD法によるプリフォーム製造装置の構成図

透明母材(プリフォーム)の例

図3 透明母材(プリフォーム)の例

 近年インターネットの普及、発展により、文字や画像、映像、音楽、高速デジタル情報など伝送する情報の形態の多様化、情報量の増大により通信の大容量化は必須と考えられている。このようなトラフィックの劇的増加に対応することができる光ファイバ通信は、大容量・高速の情報通信基盤ネットワーク技術であり、通信網の基幹回線として、またLAN等の特定範囲の回線として、さらには各家庭までの加入者回路にも導入されようとし、マルチメディアの時代に不可欠な通信方式として普及してきた。

 光ファイバは石英ガラス(SiO2)を主成分としてできている。この製造法には気相酸化技術が使われている。四塩化珪素(SiCl4)と酸素、水素を反応させSiO2微粒子である白い粉末状のすすを形成し、石英棒の周辺にこのすすをつけ、その後、高温で溶かしてゆっくり冷やすと透明な円筒状の石英棒、すなわち光ファイバの母材(プリフォーム)ができる。光ファイバの中心部(コア)は周辺より屈折率を大きくする必要があるが、これには四塩化珪素に四塩化ゲルマニウム(GeCl4)を混ぜてSiO2微粒子を形成する。そしてこの母材をさらに高温に熱して円筒の先端から細い糸状に引き、光ファイバを形成する。

 この光ファイバを均一に作るのにはコアの屈折率と直径を精密に制御する必要があるが、これは母材のであるゲルマニウムの入った中心部と周辺部の大きさを均一性によって決まることになる。

 昭和40年代後半に米国で実用的な光ファイバが開発されたが、当時はこの母材を製造するのに心棒にガスバーナから出したすすを付着させ、一層また一層と少しずつ太くする方法を採用していたため、量産性と経済性に難があった。

 本研究開発では、昭和51年、この課題を解決する量産性に富み経済的な新しい光ファイバ製造方法として気相軸付け法(VAD法)を発明した。VAD法は、回転している石英棒の下方から、四塩化ケイ素と四塩化ゲルマニウムを、酸素ガスや水素ガスと一緒に吹き付け、ガスバーナで火炎加水分解反応を起こさせて石英棒の下方にすす状の多孔質プリフォームを軸方向に成長し、そして石英棒を回転させながら上部に引き上げ、リング状ヒータで加熱することによって、多孔質プリフォームが透明ガラス化した母材(プリフォーム)を形成する方法である。従来の製法と異なり、石英ガラスの光ファイバ母材を軸方向に合成するという独創的な着想に基づくものであり、量産性と経済性に優れ、かつ大型母材の作製が可能である。VAD法は工程が単純で、連続製造、大型プリフォームの製造が可能であるなど優れた特徴を持っている。

 その後の研究開発で、VAD法による光ファイバの低損失化技術、広帯域化技術の確立に向け、新しい提案を行った。すなわち、VAD法では光ファイバ中に大量の水酸基(OH基)混入が避けられず低損失化が困難であると考えられていたが、新しい脱OH基処理技術を開発することにより、光ファイバ中に残留するOH基を徹底的に抵減化することに成功した。これにより1.2~1.7μmにわたる広い波長帯域で0.5dB/km以下の極低損失値を達成し、石英系光ファイバの究極的な損失特性を実現した。更に、屈折率分布は母材作製時の表面温度等によって決定されることを見出し、グレーデッド形光ファイバの広帯域化を実現した。これらの成果は、中・小容量光伝送方式現場試験用の光ファイバ製造技術として適用され、その有用性が確認された。又、VAD法による単一モード光ファイバの開発にも成功し、長距離大容量光伝送方式への適用も可能にした。

 このように、本研究開発は、気相軸付け法(VAD法)を提案し、その基礎技術を確立し実用段階にまで高め、我が国の光ファイバ製造技術および光伝送方式の向上に寄与した独創性の高い極めて優れた研究開発である。

                =電子情報通信学会光エレクトロニクス研究専門委員会編集=

 本研究の成果に対して、電子情報通信学会は、1981年、伊澤 達夫(当時:日本電信電話公社)、枝廣 隆夫(当時:日本電信電話公社)、中原 基博(当時:日本電信電話公社)に業績賞を贈った。

文献

[1] Tatsuo IZAWA, Shoichi SUDO, and Fumiaki HANAWA、Continuous fabrication process for high-silica fiber preforms、1979年、Trans. IECE Japan, vol.E62, no.11, pp.779-778, Nov. 1979.
[2] Takao EDAHIRO, Masao KAWACHI, Shoichi SUDO, and Nobuo INAGAKI、OH-Ion reduction in the opitcal fibers fabricated by the vapor phase axial deposition method、1980年、Trans. IECE Japan, vol.E63, no.8, pp.574-580, Aug. 1980.
[3] Shoichi SUDO, Takao EDAHIRO, and Masao KAWACHI、Sintering process of porous preforms made by a VAD method for optical fiber fabrication、1980年、Trans. IECE Japan, vol.E63, no.10, pp.731-737, Oct. 1980.
[4] Shoichi SUDO, Masao KAWACHI, Takao EDAHIRO, and Kazunori CHIDA、Transmission characteristics of long-length VAD fibers、1981年、Trans. IECE Japan, vol.E64, no.3, pp.175-180, Mar. 1981.
[5] Shoichi SUDO, Masao KAWACHI, Hiroyuki SUDA, Motohiro NAKAHARA, and Takao EDAHIRO、Refractive-index profile control techniques in the vapor-phase axial deposition method、1981年、Trans. IECE Japan, vol.E64, no.8, pp.536-543, Aug. 1981.

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光ファイバ、プリフォーム、気相軸付け法(VAD法)
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