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蓄積変換形ファクシミリ通信方式

  • 写真なし釜江 尚彦
  • 写真なし結城 皖曠
  • 写真なし秦 英遠
蓄積変換形ファクシミリ通信方式FICS-1の構成

図1 蓄積変換形ファクシミリ通信方式FICS-1の構成

蓄積変換形ファクシミリ通信方式FICS-2の構成

図2 蓄積変換形ファクシミリ通信方式FICS-2の構成

FICS方式のサービス機能

表1 FICS方式のサービス機能

FICS-2方式を構成する装置の機能

表2 FICS-2方式を構成する装置の機能

 漢字を多用する日本では、手書きの文字や図形を忠実に伝送できるファクシミリが広く定着している。ファクシミリ通信は小型で経済的な宅内用の機器としてスタートしたが、やがてオフィス用途として高速ディジタル化による蓄積変換形方式が開発され、全国の加入者が共同利用できるようになった。こうした世界に類例を見ない本格的なファクシミリ専用網は、日本で独自に開発された装置やサービス仕様で成り立っている。

 蓄積変換形ファクシミリ通信方式は、日本電信電話公社(現日本電信電話株式会社=NTT)が1981年に開始したファクシミリ通信網サービス(Fネットサービス)に用いた技術である。まず同年9月にFICS-1方式により東京と大阪でサービスを開始したが、1984年7月にFICS-2方式にバージョンアップしてサービスを全国に拡大し、2005年にはFネットサービスの登録端末は約100万件に達した。

 図1は、FICS-1方式の構成である。変調方式としてグループ2形ファクシミリと同じAM-PM-VSB変調方式を使ったA5判形のミニファクス(MF-1)のみを収容している。表1にはFICS-1とFICS-2に共通するシステムの機能を示す。処理装置の欄にE-STOCとあるのがFICS-1の機能である。

 端末からプレフィクスつきの相手番号をダイヤルすると、加入者線交換機(LS)が発信者番号を取得し、相手番号とともにTS-FXに送付する。TS-FXは相手番号がファクシミリ加入者かどうかを共通線信号経由で着信側TS-FXに問い合わせ(加入者照合)、照合されるとE-STOCにファクシミリ通信文を受け取るよう要請する。E-STOCはファクシミリ信号を復調・ディジタル化・冗長度抑圧符号化を施して受信・蓄積し、ファクシミリ画面の最上部に発信者番号と発信日時を付加する(日付番号付加)。それから着信側E-STOCに対して蓄積したファクシミリ信号を転送する。

 着信側E-STOCではTS-FXを通じ、呼び出しベルを鳴らさずに相手端末を呼び出してファクシミリ信号を着信させる(無鳴動自動接続)。そのあとファクス課金処理を発信側TS-FXで行う。相手端末がビジーのときは、自動再呼して相手端末への着信を試みる。それでも着信しないときは、着信側で不達通知用ファクシミリ画面を作成して発信端末に戻す。

 TS-FXには、相手番号のダイヤルを容易にするために短縮番号の登録機能がある。さらに複数の相手番号をグループ番号として登録し、1つの短縮番号で指定することもできる(短縮ダイヤル登録)。E-STOCには、1対1のファクス通信以外に同報通信を行う機能もある。

 図2は、1984年からの全国拡大に使用されたFICS-2方式の構成である。FCAPはE-STOCの変復調・ディジタル化・アナログ化・冗長度抑圧符号/復号化を行う中心部分を独立させたもので、FCAPから上位はすべてディジタル化されたことになる。STOCにはE-STOCのFCAP相当部分を除いた機能があり、E-STOCに比べて処理能力、蓄積容量が大きくなっている。

 FDICは情報センターとファクシミリを結んで行う情報サービスのための装置であり、テキストコードを文字パターンに変換し、ファクシミリ信号として組み立てるコード/パターン変換機能、逆にファクシミリ信号からマークを読み取ってコードに変換するパターン/コード変換機能をもっている。後にFDICは文字読み取りもできるように機能が拡張された。表2に、図2を構成する装置の機能と性能の概要を示す。

 このFICS-2方式では、親展通信と情報案内(表1参照)が新たなサービスとして追加された。親展通信は、ファクシミリ信号を自動着信させないで、着信していることを知らせる親展通知文が自動出力され、特定の利用者がパスワードを入力した場合だけ実際のファクシミリ信号を取り出せるサービスである。

 さらにFICS-2には、ファクシミリ端末としてA5判のMF-1端末以外に、A4判のMF-2端末や一般のグループ3ファクシミリ端末も収容する。

 このようなファクシミリ通信は世界に類例を見ないものであり、サービスそのものがオリジナルである。またFDICを用いたメディア変換サービスも、その後のビデオテックスサービスより先に実現されたものである。

         =5カ所の技術用語解説は、電子情報通信学会通信方式研究専門委員会による=

 本研究の成果に対して、電子情報通信学会は、1983年、これら一連のファクシミリ通信の開発に当たった釜江 尚彦(日本電信電話公社、日本電信電話株式会社=NTT)、結城 皖曠(日本電信電話公社、日本電信電話株式会社=NTT)、秦 英遠(日本電信電話公社、日本電信電話株式会社=NTT)に業績賞を贈った。

文献

[1] 大森、釜江、中林、加入ファクシミリ通信システムの構想、1981年、研究実用化報告 Vol.30,No.1, P.1
[2] 釜江、稲田、遠藤、鈴木、武田、加入ファクシミリ通信システム(FICS-1)の方式設計、1981年、研究実用化報告 Vol.30, No.1, P.9
[3] 大森,釜江,金谷,結城,石川、ファクシミリ通信方式機能拡充構想、1983年、研究実用化報告 Vol.32,No.1,P.1
[4] 結城、花辺、川出、FICS-1蓄積変換装置構成、1981年、研究実用化報告、Vol.30, No.1, p63
[5] 渡辺,遠藤,桐原,中嶋、ファクシミリ通信方式(FICS-2)の方式設計、1983年、研究実用化報告、Vol.32,No.1,p.9
[6] 広山、小杉、若原、小川、FICS-2ファクシミリデータ変換接続装置(FDIC)構成、1983年、研究実用化報告、Vol.32,No.1,p.127
[7] 鈴木、池田、鈴木、栗原、FICS-1蓄積変換プログラムシステム(STOC-101)通研実報、30, No.1, p135, 1981、1981年、研究実用化報告、vol.30, No.1, p135
[8] 遠藤,桐原,中嶋,渡辺、ディジタルファクシミリ通信方式、1984年、研究実用化報告、Vol.33,No.5,p.1077
[9] 稲森、南、山田、平野、FICS-2ファクシミリ・データ変換接続プロ  グラムシステム(FDIC-101)、1984年、研究実用化報告、Vol.33,No.7,p.1573
[10] Y. Yasuda, Y. Ymazaki, T. Kamae, K. Kobayashi、Advances in FAX、1985年、IEEE Proceedings Vol.73, N0.4, pp.706-730

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