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コヒーレント光ファイバ通信の研究

  • 写真なし大越 孝敬
  • 写真なし山本 喜久
  • 写真なし菊池 和朗
コヒーレント光受信器の構成

図1 コヒーレント光受信器の構成

半導体レーザの周波数安定化装置

図2 半導体レーザの周波数安定化装置

遅延自己ヘテロダイン法の構成

図3 遅延自己ヘテロダイン法の構成

サイドトンネル型単一偏波光ファイバ

図4 サイドトンネル型単一偏波光ファイバ

コヒーレント方式の受信感度の比較

表1 コヒーレント方式の受信感度の比較

 いま普及している光ファイバ通信技術は「強度変調直接検波方式」である。これは装置が簡単ですむ半面、光波通信のもつ潜在力が感度と周波数帯域の両面で十分に発揮されない。これに対してコヒーレント光ファイバ通信は、ヘテロダインまたはホモダイン光受信方式、もしくはPSK(位相偏移変調)などのコヒーレント変復調法を併用することにより、受信感度と周波数多重度を著しく高める可能性をもつ(図1)。この新しい方式の光ファイバ通信をめぐって1980年代、各国で研究開発競争が展開された。

 1970年ごろ本格化した光ファイバ通信研究の歴史の中でコヒーレント方式は、半導体レーザを光源として用いる限り周波数安定度とスペクトル純度の点で実現は難しいと考えられ、その後約10年間にわたって忘れ去られていた。ところが1979年、日本人研究者の論文「光ヘテロダインもしくは光ホモダイン型周波数多重光ファイバ通信の可能性と問題点の検討」などによって、ヘテロダイン・ホモダイン光ファイバ通信実現のための条件が論じられ、すぐ研究を始めようと提唱された。間もなく半導体レーザのコヒーレンスがコヒーレント光伝送に使用するのに十分なことが明らかにされ、種々のコヒーレント変復調方式による感度改善効果の理論解析結果(表1)が報告された。さらに自動周波数制御(AFC)回路を開発して半導体レーザの発振周波数を5MHz/h程度まで安定化させることに成功し、半導体レーザを用いるコヒーレント光ファイバ通信の実現可能性を大きく前進させた(図2)。

 1980年代に入ると世界各国で長距離コヒーレント光ファイバ通信の研究が盛んになり、半導体レーザの雑音発生機構の解明、光ファイバの偏波制御技術、コヒーレント光通信システム技術などが飛躍的に進歩した。図3は、半導体レーザの線幅測定のために提案された遅延自己ヘテロダイン法の原理図である。この方法は高分解能スペクトル測定の標準的方法として、現在でも広く用いられている。

 図4に、絶対単一偏波を目指したサイドトンネル光ファイバの断面写真を示す。このファイバは実用化されなかったが、いま研究開発が進められているホーリーファイバの原型となった。

 1990年代に入ると、エルビウム添加光ファイバ増幅器(EDFA)の登場により、長距離化のためのコヒーレント光伝送技術の重要性が薄れ、世界的にコヒーレント光通信の研究開発は中断された。

 その後の光ファイバ通信の研究開発の方向は、EDFAと波長多重(WDM)技術に基づく強度変調・直接検波方式に回帰し、今日に至っている。しかし2005年ごろからDPSK(差動位相偏移変調)、DQPSK方式(差動四相位相偏移変調)が再度注目を集め、その実用化の機運が高まっている。

 本研究の成果に対して、電子情報通信学会は、1986年、大越 孝敬(東京大学、1989年に「モリス・リーブマン記念賞(IEEE)」、1993年に「日本学士院賞」を受賞)、山本 喜久(NTT)、菊池 和朗(東京大学)に業績賞を贈った。

文献

[1] 大越孝敬、光ヘテロダインもしくは光ホモダイン型周波数多重光ファイバ通信の可能性と問題点の検討 、1979年、電子通信学会光・量子エレクトロニクス研究会 OQE78-139
[2] 山本喜久、各種ディジタル変復調方式の基礎検討、1979年、電子通信学会通信方式研究会CS79-144
[3] 大越孝敬,菊池和朗、ヘテロダイン型光ファイバ通信を目的とした半導体レーザの周波数安定化、1979年、電子通信学会光・量子エレクトロニクス研究会 OQE79-1116

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光伝送、光通信システム、光エレクトロニクス、レーザ・量子エレクトロニクス、光ファイバ
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