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UHV用がいしの汚損耐電圧性能検証技術

  • 写真なし瀬田 泰助
  • 写真なし安井 充
  • 写真なし松村 晋
  • 写真なし内藤 克彦
UHV試験設備

図1 UHV試験設備

54トン懸垂がいしの連結長と耐電圧との関係

図2 54トン懸垂がいしの連結長と耐電圧との関係

UHVがい管・ブッシングの霧中耐電圧

図3 UHVがい管・ブッシングの霧中耐電圧

試験設備の主な仕様

表1 試験設備の主な仕様

 わが国の基幹送電線の送電電圧は、経済の成長とともに昇圧の道を辿ってきた。高度経済成長時にはエネルギーの中核として電力需要の増加が急激に進んだ。その後の経済成長は安定化の方向に向かったが、電力需要についてはまだ増加傾向にあることが予想され、長距離大電力輸送の必要性が高まったことから、これまでの最高送電電圧500kVの次世代の送電電圧として、1000kV(UHV)送電の検討が始められた。

 UHVの送電電圧に対する絶縁設計において、がいし連およびブッシング等の絶縁距離は500kV送電用のものに比べて格段に長くなることが予想され、送電設備の小型化を図ることが技術的・経済的に極めて重要な問題となった。特に問題とされたのは、汚損されたがいしの長さとがいしの耐電圧性能との間に比例関係があるかどうかであった。海外でもUHVクラスの電圧に対する研究が進められていたが、UHVクラスの電圧では、がいしの長さとがいしの汚損耐電圧とに比例関係が無くなるとの考え方が一部にあり、その確認が必要となった。

 そこで、当時日本にはUHVクラスの試験設備がなかったため、カナダの試験所で比例性の確認が行われた。しかし、当該試験設備の電源容量の問題から、十分な確証を得ることができなかった。このため、実規模でUHVクラスのがいしの汚損耐電圧試験が出来る試験設備がわが国にも必要との判断から、昭和54年に電力中央研究所の武山試験研究センターと日本ガイシの電力技術研究所の2カ所に試験設備が設置され、試験結果の比較検討が電力中央研究所および電力会社や学識経験者等をメンバーとしたUHV送電特別委員会で行われた。

 UHVクラスのがいしの汚損耐電圧を確かめる試験法は定印霧中法(自然条件下におけるがいしの汚損・フラッシオーバ現象を比較的良く再現できる人工汚損試験法)が用いられることになった。この試験法は以下のとおりである。

 屋外で使用されるがいし表面の汚損状態を模擬するため、食塩とトノコの混合液でがいし表面を汚し、乾燥させたものを汚損がいしとする。トノコの量は水1リットル当たり40gとし、食塩の量は汚損の度合いに応じて調整される。この汚損がいしを試験室に設置し試験電圧を印加した後、蒸気を試験室内に充満させ、汚損がいし表面を湿潤させる。汚損物の食塩は電解質であることから、湿潤するとがいしの表面抵抗が低下し、試験電圧ががいしの耐電圧性能より高い場合はフラッシオーバが発生する。このような試験を数回繰り返し、4回フラッシオーバしない電圧を耐電圧として評価される。

 このように定印霧中法は汚損されたがいしに高電圧を印加するとともにがいしの周辺を蒸気霧で充満させる必要があることから、大規模な試験室が必要となる。また、再現性の高い試験結果を得るためには適切な電源容量の高電圧試験装置とがいし表面の湿潤状態をコントロールできる蒸気霧の条件を把握することが重要となる。UHVクラスになるとがいしの長さは10mを超えることもあるため、試験室は非常に大きくなり、蒸気霧の発生方法や濃度の条件は、試験結果の再現性や実送電線におけるがいしの耐電圧特性との等価性の上で重要な要件となる。このため、図1および表1に示す試験設備が建設され、再現性の高い試験結果を得るべく、試験条件の検討が行われた。

 上記試験設備の建設後は、UHV用として新たに開発された大型がいしの汚損耐電圧試験が精力的に実施され、500kV級以下のがいしを対象としたこれまでの耐電圧試験結果との妥当性を確認するとともに、がいし長さと汚損耐電圧とに比例関係があるかどうかの確認が行われた。図2はUHV用380mmボールソケット形懸垂がいし(54トン懸垂がいし)の連結個数(連結長さ)と汚損耐電圧との関係を示したものである1)。がいし表面のよごれ具合、すなわち塩分付着密度の大小にかかわらず汚損された懸垂がいしの耐電圧はがいしの長さに比例している。また、UHV用のがい管およびブッシングについても耐電圧試験が実施され、図31)に示すように塩分付着密度と耐電圧との関係が明らかとなり、ブッシングの長さと耐電圧についても比例関係のあることが確認された。このほか、試験所間での試験結果のバラツキも小さく再現性の高い試験設備であることが検証された。

 以上の結果は、新たに開発されたUHV用の大型がいしの汚損設計に対し、従来の汚損設計手法をそのまま適用できるものであり、また汚損耐電圧性能が従来の試験法で評価できることをも意味する。そこで、試験結果をもとにUHV送電線のがいしの長さを試算したところ、例えば軽汚損地区(塩分付着密度が0.03mg/cm)でのがいしの長さは10m程度に収まることが確かめられ、UHV送電の可能性の一端が明らかになった。

 本研究の成果に対して、電気学会は、1982年、このように、UHV送電の実用化には、世界有数の大規模な試験設備を設置し、大型がいしの汚損耐電圧性能検証技術を築いたことが大きく貢献していることから、瀬田 泰助、安井 充、松村 晋、内藤 克彦に電気学術振興賞(進歩賞)を贈った。

文献

[1] 有働龍夫、瀬田泰助、鈴木俊男、桜井武一、Ⅲ.過電圧と絶縁、1982年、電気学会雑誌、昭和57年11月、「特集:UHV交流送電」

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キーワード

高電圧、送電、がいし、汚損、霧中試験、UHV、耐電圧、高電圧・大電流、送電
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