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大型カラーテレビ受像管用アンバーシャドウマスクの開発

カラーテレビ用シャドウマスク

図1 カラーテレビ用シャドウマスク

シャドウマスク型カラーテレビの構成図

図2 シャドウマスク型カラーテレビの構成図

20%冷間圧延材の(002),(110)極点図

図3 20%冷間圧延材の(002),(110)極点図

40%冷間圧延材の(002),(110)極点図

図4 40%冷間圧延材の(002),(110)極点図

80%冷間圧延材の(002),(110)極点図

図5 80%冷間圧延材の(002),(110)極点図

冷間圧延率20%,40%,80%の場合のフォトエッチングで開孔した電子線通過孔のSEM観察

図6 冷間圧延率20%,40%,80%の場合のフォトエッチングで開孔した電子線通過孔のSEM観察

焼鈍温度をパラメータとした試験温度と0.2%耐力の関係

図7 焼鈍温度をパラメータとした試験温度と0.2%耐力の関係

鉄シャドウマスクとインバー合金シャドウマスクを使用したカラー受像管におけるP-PD(電子線射突位置の移動量)比較

図8 鉄シャドウマスクとインバー合金シャドウマスクを使用したカラー受像管におけるP-PD(電子線射突位置の移動量)比較

シャドウマスク材料の組成

表1 シャドウマスク材料の組成

シャドウマスク材料の熱膨張係数

表2 シャドウマスク材料の熱膨張係数

 高輝度で表示面の平坦度に優れた大型CRTを実現するキー技術の一つとして、インバー合金を使用したシャドウマスクを実用化した。CRT内に内蔵されているシャドウマスクは、赤、緑、青の蛍光体ドット面に近接して配置されており、電子銃から射出された電子線はシャドウマスクに設けられた開孔部を通過して目的の蛍光体ドットを光らせる。電子銃から射出された電子線の蛍光体到達率は20%、残り80%はシャドウマスクに射突してシャドウマスクを昇温させる。昇温による膨張変形によりシャドウマスク孔と蛍光体ドットの相対位置がずれると、目的とは異なる色の蛍光体ドットに電子線が射突し色ずれを生じるため、熱膨張係数の小さい材料をシャドウマスクに用いることが必要である。従来のシャドウマスク材料である鉄(アルミキルド鋼)に対して、インバー合金は熱膨張係数が約1/10であるため50年代からマスク材料として着目されていた。しかしながら、シャドウマスクにインバー合金を使用するためには、①120μm径程度の電子線通過孔をシャドウマスク全面に開孔するための精密エッチング性、②CRTのパネル内面曲率に合わせて成型するためのプレス成型性、③光散乱を抑え、耐食性を付与するための黒化処理性、に課題があった。

 ところで、シャドウマスク用薄板は溶解・鍛造後に熱間圧延、冷間圧延の順で製造される。熱間圧延後の2.6mm厚のインバー合金薄板における結晶集合組織は(001)面が支配的である。その後冷間圧延によりシャドウマスクとなる板厚に圧延すると結晶軸が回転し板面の結晶集合組織は(110)となることがX線回折により分かった。そこで、冷間圧延率を20%,40%,80%で圧延したときの結晶集合度とフォトエッチング開孔を観察したところ、圧延率が増加するほど(001)結晶面の集合度合いは減少し、開孔形状が歪になることが分かった。一方、(110)結晶面に集合した80%冷間圧延材を再結晶化温度以上の1073K(800°C)で焼鈍すると、結晶集合組織は(001)となる。以上の実験から、冷間圧延率をなるべく大きくして板面の結晶面を(110)に集合させ、再結晶化温度以上で焼鈍することにより再度結晶軸を回転して(001)結晶面に揃えることで良好なエッチング性を得ることができた。

 また、良好なプレス成型性を得るためには、インバー合金の耐力を下げてスプリングバックを抑制する必要がある。943Kから1423Kまでの条件で焼鈍したインバー合金の室温から573Kまでの引張試験による耐力の温度変化の実験から、1173Kで焼鈍したインバー合金に約473Kの温間プレス成型を施すことで、耐力が160MPa以下となる良好なプレス成型条件を見出した。また、高温高圧水蒸気下で黒化処理を施すことで、ニッケルフェライト(NixFe3-xO4)の優れた黒化皮膜を得ることができた。

 鉄シャドウマスクを用いたCRTとインバー合金シャドウマスクを用いた画像静止時間に対する電子線射突位置の移動量(P-PD:Partial Purity Drift)を比較すると、インバー合金の採用によって従来の鉄シャドウマスクに比べて1/5の移動量を得ることができ、色ずれ問題を解消することが可能となった。

 本研究の成果に対して、映像情報メディア学会は、1987年、東芝アンバーシャドウマスク開発チームに技術振興賞開発賞を贈った。

文献

[1] H. Yamazaki, Y. Ohtake、Discoloration-Free Invar Mask Color Picture Tubes、1986年、Toshiba Review, 156, (1986) pp.29-32.
[2] M. Inaba, Y. Honma, T. Hatanaka, Y. Otake、Effects of the annealing conditions on the oxidation behavior of Fe-36Ni alloys、1986年、Applied Surface Science 27, (1986) pp.164-179.
[3] M. Inaba, K. Teshima, E. Higashinakagawa, Y. Ohtake、Development of an Invar (Fe-36Ni) Shadow Mask for Color Cathode Ray Tubes、1988年、IEEE Trans., ED-35, 10, (Oct., 1988) pp.1721-1729.
[4] 東中川恵美子,大竹康久,稲葉道彦,手島光一、インバー合金のシャドウマスクへの応用、1997年、まてりあ 36, 11, (1997) pp.1070-1074.

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キーワード

大型カラーテレビ、シャドウマスク、インバー合金、CRT、ディスプレイ、コンシューマエレクトロニクス
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