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MPEG-2/H.264/H.265 コーデックの開発と実用化への貢献

  • 新田 高庸新田 高庸
  • 中村 健中村 健
  • 大西 隆之大西 隆之
MPEG-2/H.264/H.265 コーデックの利用例

図1 MPEG-2/H.264/H.265 コーデックの利用例

 映像符号化技術の発展に伴い,放送番組のデジタル化が世界各国で進められており,更に,通信・放送連携によりユーザエクスペリエンスの高度化が望まれていた.受賞者らは,図1に示すように,地上デジタル放送の展開,IP再放送の実用化,更には,8K試験放送など,一連の通信・放送連携を支える技術として,MPEG-2からH.264,H.265へと進展した映像符号化技術を活用した映像コーデックLSI及び装置の実用化を推進してきた.
 MPEG-2映像符号化LSI(VASA)は,2003年12月の地上デジタルテレビ放送開始に向け,日本の放送番組を支える素材伝送ネットワークであるテレビ中継網のキー技術として開発された.当時,MPEG-2 HDTV符号化/復号処理の1チップ化は,世界でも開発例がなく,2003年の日本の地上デジタル放送開始に大きく寄与した.地上デジタルテレビ放送が開始されて10年以上が経過し,日本では順調にアナログからディジタルへの移行も進み,更に,海外のメーカにも本技術が採用されるなど,長期にわたり,世界の産業界に貢献してきた.
 H.264映像符号化LSI(SARA)では,放送品質を保持したままMPEG-2をH.264にトランスコード可能な技術を開発することで,ネットワーク上での地上デジタル放送のIP再放送の普及に大きく貢献した.具体的には,IP再放送において,放送局が規定した厳しいガイドライン基準(2秒以下の低遅延によるリアルタイム処理と,主観評価による画像品質基準)をクリアしたMPEG-2/H.264トランスコーダ装置を開発した.優良コンテンツである地上デジタル放送を劣化なしに,ネットワーク配信することも一助となり,IP放送サービスの加入数は,現在,300万を超えている.
 更に,今後の主流として期待される8K放送の実現においては,より圧縮率の高いH.265方式による符号化の実現が不可欠であるが,処理チップの性能限界を補うために,マルチチップ並列エンコード制御技術を確立し,世界初の8K試験放送開始に大きく寄与した.動きベクトルの統計処理によりアダプティブに探索精度と探索位置を切り換えられる探索アルゴリズムなどにより,H.265の圧縮性能を十分に引き出す1チップ4K H.265エンコーダLSI(NARA)を開発するとともに,NARAを並列に動作させることで,放送の運用規格であるARIBに準拠した8K/60P符号化を実現した.並列化による画質劣化を低減させるために,チップ間で参照画像データを転送可能な高速なチップ間データ転送も確立した.H.265方式により4K IP放送開始を実現し,8K試験放送開始と併せて,通信・放送の将来の具現化に大きく貢献した.
 このように,受賞者らが,15年を超えて蓄積してきた業績により,高品質・高精細な映像サービスを広く社会に提供することが可能となり,人々の暮らしだけでなく,産業界に与えた影響も非常に大きい.8K放送は,本技術を基盤として,今後,通信・放送連携を推進するサービスに発展していくことが期待される.

 本研究の成果に対して、電子情報通信学会は、2017年、新田 高庸(NEL)、中村 健(NTT)、大西 隆之(NTT)に電子情報通信学会 業績賞 を贈った。

文献

(1) K. Nitta, T. Minami, T. Kondo, and T. Ogura, “Motion estimation and compensation hardware architecture for a scene-adaptive algorithm on a single-chip MPEG-2 video encoder,” IEICE Trans. Inf. & Syst., vol.E84-D, no.3, pp.317-325, March 2001.
(2) K. Nakamura, M. Ikeda, T. Yoshitome, and T. Ogura, “Global rate control scheme for MPEG-2 HDTV parallel encoding system,” Proc. Int’l Conference on Information Technology: Coding and Computing 2000, IEEE CS, pp.195-200. March 2000.
(3) 新田高庸,吉留 健,近藤利夫,岩崎裕江,長沼次郎,“MPEG-2ビデオ符号化LSIにおけるSIMD型マクロブロックプロセッサの改良,”信学論(C), vol.J87-C, no.4, pp.377-385, April 2004.
(4) J. Naganuma, H, Iwasaki, K. Nitta, K. Nakamura, T. Yoshitome, M. Ogura, Y. Nakajima, Y. Tashiro, T. Onishi, M. Ikeda, and M. Endo, “VASA: Single-chip MPEG-2 [email protected] CODEC LSI with multi-chip configuration for large scale processing beyond HDTV level,” Hot Chips 14, Aug. 2002.
(5) T. Onishi, K. Nakamura, T. Yoshitome, and J. Naganuma, “A distributed stream multiplexing architecture for multi-chip configuration beyond HDTV,” IEICE Trans, Inf. & Syst., vol.E91-D, no.12, pp.2862-2867, Dec. 2008.
(6) 大西隆之,新田高庸,佐野 卓,岩崎裕江,池田充郎,長沼次郎,上倉一人,“放送業界用H. 264/AVCエンコーダLSIにおける動き検出・動き補償部の構成法,”信学論(D), vol.J93-D, no.10, pp.2148-2155, Oct. 2010.
(7) K. Nitta, H. Iwasaki, T. Onishi, T. Sano, A. Sagata, Y. Nakajima, M. Inamori, R. Tanida, A. Shimizu, K. Nakamura, M. Ikeda, and J. Naganuma, “An H. 264/AVC high422 profile and MPEG-2 422 profile encoder LSI for HDTV broadcasting infrastructures,” IEICE Trans. Electron., vol.E95-C, no.4, pp.432-440, April 2012.
(8) M. Ikeda, H. Iwasaki, K. Nitta, T. Onishi, T. Sano, A. Sagata, Y. Nakajima, M. Inamori, T. Yoshitome, H. Matsuda, R. Tanida, A. Shimizu, K. Nakamura, and J. Naganuma, “Professional H. 264/AVC CODEC chip-set for high-quality HDTV broadcast infrastructure and high-end flexible CODEC systems,” Hot Chips 19, Aug. 2007.
(9) T. Onishi, T. Sano, Y. Nishida, K. Yokohari, J. Su, K. Nakamura, K. Nitta, K. Kawashima, J. Okakamoto, N. Ono, R. Kusaba, A. Sagata, H. Iwasaki, M. Ikeda, and A. Shimizu, “Single-chip 4K 60fps 4:2:2 HEVC video encoder LSI with 8K scalability,” Proc. 2015 IEEE Symposium on VLSI Circuits, pp.54-55, June 2015.
(10) H. Iwasaki, T. Onishi, K. Nakamura, K. Nitta, T. Sano, Y. Nishida, K. Yokohari, J. Su, N. Ono, R. Kusaba, A. Sagata, M. Ikeda, and A. Shimizu, “Professional H.265/HEVC encoder LSI toward high-quality 4K/8K broadcast infrastructure, ,” Hot Chips 27, Aug. 2015.

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