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ソフトウェア無線・コグニティブ無線技術の先駆的研究

  • 上原 一浩上原 一浩
利用シナリオの例[sup](7)[/sup]

図1 利用シナリオの例(7)

ソフトウェア無線機プロトタイプの例[sup](2)[/sup]

図2 ソフトウェア無線機プロトタイプの例(2)

 情報通信端末が広く世の中に普及し,無線の利用は増加の一途をたどっている.多種多様な無線の規格や方式,ネットワークが乱立する中,例えば,無線機の機能を動的に変更し単一のハードウェアを複数方式で共用可能としたり,あるいはヘテロジニアスなネットワークを最適に使い分けデータレートの高速化や負荷分散を図るなど,ユーザにとってもオペレータにとっても,効率的かつ経済的な利用・運用を可能としていくことが必要である.更に5G and beyondの世界に向けても,ひっ迫している周波数の一層の有効利用は,ICTの最重要課題の一つである.これらを解決する技術として,無線機能をリコンフィギュラブル・プログラマブル・ダウンローダブルにするソフトウェア無線技術が,更にその無線機能を,例えばユーザの要求や周波数利用状況等の外部環境を認識して動的に制御(変更や学習)し,最適なリソース利用を実現するコグニティブ無線技術の研究開発が進められてきており,幾つかのシステムで実用化もされている.
 受賞者は,このソフトウェア無線・コグニティブ無線システムの研究開発に従事し,多くの先駆的基盤技術を確立し,本分野をけん引してきた一人である.セルラ方式や無線LAN等の高速・広帯域の実システムに対する本技術のフィージビリティを,また小形・低消費電力のソフトウェア無線携帯端末実現に向けたヘテロジニアス型リコンフィギュラブルプロセッサのフィージビリティを,実機を試作し世界に先駆け実証するとともに本研究領域の課題や方向性を示した(1)~(3).ソフトウェア無線・コグニティブ無線技術を応用した,ヘテロジニアス無線システム構成技術及びリソース制御技術,協調型高精度干渉検出・回避技術等の先駆的システム技術を提案し実証した(4), (5).また,システム実現の鍵となるRF技術として,広帯域・高線形・低雑音という相反する三つの性能を両立する,UHF帯からマイクロ波帯までをワンチップでカバーした高周波モジュールや,単一のミクサで複数バンド・複数信号の同時周波数変換を行うマルチバンド一括受信ミクサ等を実現し,またマルチバンド同時送信を行う際の増幅器の非線形ひずみ補償技術も確立した(6).更に,電波利用状況の認識・可視化を効率的・高精度に行うための技術として,VHF帯からマイクロ波帯までのスペクトルを光アクセス回線を介して一括伝送する広帯域スペクトル圧縮光伝送技術(7)や,雑音フロア以下の信号の検出も可能とする波形相互相関を用いた分散広帯域協調周波数センシングシステム技術(8)を,またシステム設計ツールとして重要となる,任意指向性アンテナに対する屋内伝搬特性解析アルゴリズムを考案しアンテナ特性を厳密に考慮した屋内伝搬解析技術(9)を確立した.ソフトウェア無線技術の実利用に向け,内外法制化機関とも連携した法制度の検討にも参画し一定の方向性を示した(10).将来の一層の周波数有効利用にも資するこれらの革新的基盤技術を確立するとともに,動的な周波数共用技術の実利用に向けて,関係研究機関と連携し国家プロジェクトを立ち上げ新技術の有効性を実証し(8),電波資源拡大のための研究開発の進展に大きく貢献した.
 このように,受賞者は日本における本研究分野の立ち上げから発展まで大きく貢献し,ソフトウェア無線(現スマート無線)研究専門委員会委員長,英文論文誌小特集編集委員長(WDN及びCR)等を歴任するとともに,コグニティブ無線分野の国際会議CrownCom 2011を実行委員長として初めて日本に招致するなど,本分野の研究開発推進並びに世界への情報発信に大きく貢献した.また受賞者の業績は技術的に高く評価されており,電子情報通信学会論文賞(1997年度,2014年度(6))や通信ソサイエティ論文賞(2011年度(7),2014年度),電気通信普及財団賞・テレコムシステム技術賞(2003(2))等,様々な賞を受賞するとともに,電子情報通信学会フェロー称号が授与されている.これらの業績は極めて顕著であり,電子情報通信学会業績賞にふさわしいものである.

 本研究の成果に対して、電子情報通信学会は、2015年、上原 一浩(NTT)に電子情報通信学会 業績賞 を贈った。

文献

(1) 上原一浩,鈴木康夫,芝宏礼,田中裕之,淺井裕介,庄納崇,久保田周治,“マルチプロセッサ・アーキテクチャを用いたソフトウェア無線機における全二重リアルタイム通信を実現するためのソフトウェアの設計と評価,”信学論(B), vol. J84-B,no. 7, pp. 1208-1215, July 2001.
(2) H. Shiba, T. Shono, Y. Shirato, I. Toyoda, K. Uehara, and M. Umehira,“Software defined radio prototype for PHS and IEEE802.11 wireless
LAN,” IEICE Trans. Commun., vol. E85-B, no. 12, pp. 2694-2702,Dec. 2002.
(3) T. Shono, Y. Shirato, H. Shiba, K. Uehara, K. Araki, and M. Umehira,“IEEE802.11 wireless LAN implemented on software defined radio with hybrid programmable architecture,” IEEE Trans. Wirel. Commun.,vol. 4, no. 5, pp. 2299-2308, Sept. 2005.
(4) T. Shono, K. Uehara, and S. Kubota, “Proposal for system diversity on software defined radio,” IEICE Trans. Fundamentals, vol. E84-A, no.9, pp. 2346-2358, Sept. 2001.
(5) K. Akabane, H. Shiba, M. Matsui, and K. Uehara, “Performance evaluation of an autonomous adaptive base station that supports multiple wireless network systems,” IEICE Trans. Commun., vol. E91-B, no. 1, pp. 22-28, Jan. 2008.
(6) I. Ando, G.K. Tran, K. Araki, T. Yamada, T. Kaho, Y. Yamaguchi, and K. Uehara, “Nonlinear modeling and analysis on concurrent amplification of dual-band Gaussian signals,” IEICE Trans. Electron., vol. E96-C, no. 10, pp. 1254-1262, Oct. 2013.
(7) D. Lee, T. Yamada, H. Shiba, Y. Yamaguchi, and K. Uehara,“Combined Nyquist and compressed sampling method for radio wave data compression of a heterogeneous network system,” IEICE Trans. Commun., vol. E93-B, no. 12, pp. 3238-3247, Dec. 2010.
(8) 芝宏礼,山口陽,山田貴之,加保貴奈,中川匡夫,上原一浩,“ホワイトスペース利用実現に向けた広帯域周波数センシングシステムの提案と性能評価,”信学論(B), vol. J97-B, no. 12, pp.1224-1233, Dec. 2014.
(9) 上原一浩,関智弘,鹿子嶋憲一,“幾何光学的手法による任意指向性アンテナに対する屋内伝搬特性解析,”信学論(B-Ⅱ), vol.J78-B-Ⅱ , no. 9, pp. 593-601, Sept, 1995.
(10) Y. Suzuki, H. Harada, K. Uehara, T. Fujii, Y. Yokoyama, K. Oda, and R. Hidaka, “Adaptability check during software installation in software defined radio,” IEICE Trans. Commun., vol. E86-B, no. 12, pp. 3401-3407, Dec. 2003.

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