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マルチポートアンプの発明とマルチビーム移動体衛星通信実用化への貢献

  • 江上 俊一郎江上 俊一郎
  • 川合 誠川合 誠
マルチポート方向性結合器(MDC)とマルチポートアンプ(MPA)の概念

図1 マルチポート方向性結合器(MDC)とマルチポートアンプ(MPA)の概念

マルチポートアンプ(MPA)を適用したETS-VI移動体衛星通信系ダウンリンクの構成

図2 マルチポートアンプ(MPA)を適用したETS-VI移動体衛星通信系ダウンリンクの構成

 衛星通信の最大の特徴は,サービスの広域性である.サービスの広域性と衛星搭載アンテナの利得は裏腹の関係にある.サービスの広域性を保ちながら衛星搭載アンテナを高利得化して端末の小形化を可能とし,更に周波数再利用によって加入者数を増大させた方式がマルチビーム方式である.ロケット及び衛星技術が,1970年代から1990年代にかけて急速に進展し,大形マルチビームアンテナを搭載したマルチビーム通信衛星の打上げが可能となった.
 しかし,マルチビーム方式では,ビームごとに通信トラヒックが異なり,かつ変動することに対処し,各ビームの信頼性を確保することが新たな課題となった.受賞者らが考案したマルチポートアンプは,マルチビーム方式におけるこのような課題を解決した画期的な発明である.
 受賞者らが考案したマルチポート方向性結合器(MDC)とマルチポートアンプ(MPA)の概念を図1に示す.では2,4,8ポートのMDCとそれを用いたMPAの構成を示している.MDCは2ポートの3dB方向性結合器の概念を2nポート(n:自然数)へ拡張したものである.MPAは2n個の増幅器の入力側と出力側に2nポートのMDCを対称に接続したものである.入出力ポート数は,実際には不要なポートをダミー終端すればよいので任意に選択できる.MPAの各ポートへの入力は,入力側MDCによって各増幅器へ分割され,各増幅器の出力は出力側MDCによって対応する各ポートへ合成出力される.対応しないポートへは出力されない.MPAの各ポートの最大出力は各増幅器の最大出力の合計となり,各ポートへの出力配分は任意である.また,増幅器の一部に故障が発生したとしても,故障数に応じて出力は低下するが,いずれかの出力が全断となることはない.
 受賞者らは,このMPAを1980年代に計画された国内移動体衛星通信方式に適用することを提案した.MPAを最初に搭載した技術試験衛星ETS-VIの移動体衛星通信系ダウンリンクの構成を図2に示す.ETS-VIは5ビームであったため5ポートを用いる8ポートMPAの構成としている.MPAへの入力電力は同一特性の各増幅器に均等に分配され,各増幅器の飽和出力を合わせた最大送信出力の範囲であれば,各ビームに対して任意の比率で出力すなわち通信回線数を割り当てることができる.また,各増幅器の故障は,最大送信出力の低下にはつながるが,特定のビームが使用不能となるような致命的な障害とはならない.
 MPAは,1994年に技術試験衛星ETS-VIに搭載されて宇宙実証され,1995,1996年に実用通信衛星NSTARa,b号機に搭載され,国内最初の移動体衛星通信サービスが開始された.次世代N-STARでも4ポートのMPAが3系統搭載され現在サービス中である.
 国内では運輸多目的衛星MTSAT,超高速インターネット衛星WINDSに用いられた.国外では,AMSC/MSAT(1995~1996),Inmarsat-3(1996~1998)などの多ビーム移動体通信衛星にすぐに適用されている.最近では大形反射鏡を照射する多数ビームのアレー給電系にも用いられ,アレー素子の電力分布変動への対応を可能にしている.受賞者らの衛星通信技術の進展への功績は極めて顕著で,電子情報通信学会業績賞にふさわしいものである.

 本研究の成果に対して、電子情報通信学会は、2014年、江上 俊一郎(静岡大)、川合 誠(立命館大)に電子情報通信学会 業績賞 を贈った。

文献

(1) 江上俊一郎,川合誠,”多端子電力合成形マルチビーム送信系,”信学論(B),vol.J69-B,no.2,pp.206-212,Feb.1986.
(2) S.Egami and M.Kawai,“An adaptive multiple beam system concept,”IEEE J.Sel.Areas Commun., vol.SAC-5,no.4,pp.630-636,May 1987.

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マルチポートアンプ、マルチビーム移動体衛星通信、マルチポート方向性結合器、移動体衛星通信方式
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