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WDM伝送用アレイ導波路回折格子波長フィルタの先駆的研究
髙橋 浩
井上 靖之
鈴木 扇太
今日のインターネットの爆発的な普及は,大容量の伝送帯域を安価に提供できる光ファイバ伝送技術により支えられている.その主要な技術として,1本の光ファイバ中に多数の波長の信号を多重伝送することで,光ファイバを数十〜数百倍にも有効利用できる波長分割多重(WDM: Wavelength Division Multiplexing)技術があり,世界中で導入されている.このようなWDM伝送システム実現には,多数の波長の信号を1本の光ファイバに多重(合波)し,または,多重された信号を複数の波長の光に分離(分波)する波長フィルタが必要不可欠である.
受賞者らは,WDM伝送システムのキー部品である波長フィルタとして,複数波長を一括で合分波することを可能とするアレイ導波路回折格子(AWG:Arrayed-Waveguide Grating)を考案し,1990年代初頭から石英系平面光波回路(PLC: Planar Lightwave Circuit)技術を用いて世界に先駆けて提案・研究開発してきた.AWGは多数の光導波路アレイから成る回折格子によって異なる波長の光を合分波する新原理の波長フィルタであり,高精度な光位相制御が可能な集積型光導波回路から構成される(図1).光導波路アレイの光路長差設計により高い波長分解能を容易に実現できるため,従来の回折格子や誘電体多層膜等を用いた方法では実現が難しかった数十〜数百GHzの狭い波長間隔を持つ8〜100波の光信号を扱う高密度WDM伝送用波長フィルタに適している.更に,AWGは光集積回路として小形・量産性・高信頼性であるとともに,設計自由度が大きく多チャネル対応や任意の波長間隔対応が容易という特長を有しており,1990年代後半からの高密度WDM伝送システムの発展に欠かせない波長フィルタとなった.
受賞者らの貢献は,世界で初めてAWGを小形シリコン基板上に石英系ガラスを用いてモノリシックに作製したのみならず,AWG設計理論を構築するとともに,実用上必須な偏波無依存特性や温度無依存特性などの性能向上技術を実現し,高密度WDM伝送システム用波長フィルタの実用化につなげ,大容量光ファイバ伝送システム構築に貢献した.
更に,光スイッチを集積した波長選択スイッチや,その他の光回路と集積した高機能な集積型光信号処理回路を提案するなど,光集積回路技術を先駆的にけん引してきた.その結果,数多くの研究機関がAWG研究を追随し,石英系ガラス以外の光学材料(ポリマー,InP,シリコン等)によるAWGに関する膨大な数の論文が発表されるなど,学術分野への貢献も顕著である(図2).
以上のように,受賞者らはアレイ導波路回折格子波長フィルタを世界で初めて提案・実現し,WDM伝送用システムの発展に貢献するとともに,その後もこれを核とした光集積回路の学術分野をけん引してきた.これらの成果は,発明協会全国発明表彰通産大臣賞,電子情報通信学会エレクトロニクスソサイエティ賞受賞など高く評価されており,受賞者らの功績は極めて顕著で,電子情報通信学会業績賞にふさわしいものである.
本研究の成果に対して、電子情報通信学会は、2013年、髙橋 浩(NTT)、井上 靖之(NTT)、鈴木 扇太(NTT)に電子情報通信学会 業績賞を贈った。
(2) Y. Inoue, Y. Ohmori, M. Kawachi, S. Ando, T. Sawada, and H. Takahashi, “Polarization mode converter with polyimide half waveplate in silica-based planar lightwave circuits,” Photonics Technol. Lett., vol. 6, pp. 626-628, 1994.
(3) H. Takahashi, S. Suzuki, and I. Nishi, “Wavelength multiplexer based on SiO2-Ta2O5 arrayed-waveguide grating,” J. Lightwave Technol., vol. 12, pp. 989-995, 1994.
(4) H. Takahashi, K. Oda, H. Toba, and Y. Inoue, “Transmission characteristics of arrayed-waveguide N x N wavelength multiplexer,” J. Lightwave Technol., vol. 13, pp. 447-455, 1995.
(5) S. Suzuki, A. Himeno, and M. Ishii, “Integrated multichannel optical wavelength selective switches incorporating an arrayed-waveguide grating multiplexer and thermooptic switches,” J. Lightwave Technol., vol. 16, pp. 650-655, 1998.
(6) 高橋浩,石英系AWG 波長合分波器の最近の技術進展,信学論(C), vol. J86-C, no. 5, pp. 491-499, May 2003.
受賞者らは,WDM伝送システムのキー部品である波長フィルタとして,複数波長を一括で合分波することを可能とするアレイ導波路回折格子(AWG:Arrayed-Waveguide Grating)を考案し,1990年代初頭から石英系平面光波回路(PLC: Planar Lightwave Circuit)技術を用いて世界に先駆けて提案・研究開発してきた.AWGは多数の光導波路アレイから成る回折格子によって異なる波長の光を合分波する新原理の波長フィルタであり,高精度な光位相制御が可能な集積型光導波回路から構成される(図1).光導波路アレイの光路長差設計により高い波長分解能を容易に実現できるため,従来の回折格子や誘電体多層膜等を用いた方法では実現が難しかった数十〜数百GHzの狭い波長間隔を持つ8〜100波の光信号を扱う高密度WDM伝送用波長フィルタに適している.更に,AWGは光集積回路として小形・量産性・高信頼性であるとともに,設計自由度が大きく多チャネル対応や任意の波長間隔対応が容易という特長を有しており,1990年代後半からの高密度WDM伝送システムの発展に欠かせない波長フィルタとなった.
受賞者らの貢献は,世界で初めてAWGを小形シリコン基板上に石英系ガラスを用いてモノリシックに作製したのみならず,AWG設計理論を構築するとともに,実用上必須な偏波無依存特性や温度無依存特性などの性能向上技術を実現し,高密度WDM伝送システム用波長フィルタの実用化につなげ,大容量光ファイバ伝送システム構築に貢献した.
更に,光スイッチを集積した波長選択スイッチや,その他の光回路と集積した高機能な集積型光信号処理回路を提案するなど,光集積回路技術を先駆的にけん引してきた.その結果,数多くの研究機関がAWG研究を追随し,石英系ガラス以外の光学材料(ポリマー,InP,シリコン等)によるAWGに関する膨大な数の論文が発表されるなど,学術分野への貢献も顕著である(図2).
以上のように,受賞者らはアレイ導波路回折格子波長フィルタを世界で初めて提案・実現し,WDM伝送用システムの発展に貢献するとともに,その後もこれを核とした光集積回路の学術分野をけん引してきた.これらの成果は,発明協会全国発明表彰通産大臣賞,電子情報通信学会エレクトロニクスソサイエティ賞受賞など高く評価されており,受賞者らの功績は極めて顕著で,電子情報通信学会業績賞にふさわしいものである.
本研究の成果に対して、電子情報通信学会は、2013年、髙橋 浩(NTT)、井上 靖之(NTT)、鈴木 扇太(NTT)に電子情報通信学会 業績賞を贈った。
文献
(1) H. Takahashi, S. Suzuki, K. Kato, and I. Nishi, “Arrayed-waveguide grating for wavelength division multi/demultiplexer with nanometre resolution,” Electron. Lett., vol. 26, pp. 87-88, 1990.(2) Y. Inoue, Y. Ohmori, M. Kawachi, S. Ando, T. Sawada, and H. Takahashi, “Polarization mode converter with polyimide half waveplate in silica-based planar lightwave circuits,” Photonics Technol. Lett., vol. 6, pp. 626-628, 1994.
(3) H. Takahashi, S. Suzuki, and I. Nishi, “Wavelength multiplexer based on SiO2-Ta2O5 arrayed-waveguide grating,” J. Lightwave Technol., vol. 12, pp. 989-995, 1994.
(4) H. Takahashi, K. Oda, H. Toba, and Y. Inoue, “Transmission characteristics of arrayed-waveguide N x N wavelength multiplexer,” J. Lightwave Technol., vol. 13, pp. 447-455, 1995.
(5) S. Suzuki, A. Himeno, and M. Ishii, “Integrated multichannel optical wavelength selective switches incorporating an arrayed-waveguide grating multiplexer and thermooptic switches,” J. Lightwave Technol., vol. 16, pp. 650-655, 1998.
(6) 高橋浩,石英系AWG 波長合分波器の最近の技術進展,信学論(C), vol. J86-C, no. 5, pp. 491-499, May 2003.
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