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動的再構成プロセッサの研究開発とその画像処理機器応用

  • 本村 真人本村 真人
  • 粟島 亨粟島 亨
  • 藤井 太郎藤井 太郎
 システムLSIは,ディジタルテレビやディジタルカメラ,プリンタ等のディジタル民生機器の中枢処理エンジンとして広く使われ,性能や機能の向上及び電力やコストの削減により,その市場急拡大を支えてきた.しかしながら,近年のプロセス微細化によるLSI開発費の急上昇や,機能を固定回路(ハードウェア)化して集積すればするほどそのLSIの応用範囲が狭くなってしまう問題等により,よほどの出荷台数が見込める機器向けでなければシステムLSIの開発は難しくなってきている.一方,この問題を避けるために機能のソフトウェア化を進めると,性能や電力面での要求仕様達成が難しくなるという別の問題が生じる.このような「システムLSIのジレンマ」を救う手立てとして,ハードウェアとしての高性能・低電力性を保ちつつソフトウェア的な処理拡張・書換えが可能な「やわらかいハードウェア」技術の実現が強く望まれている.
 受賞者らは,1990年代後半から,いち早く現在のこの状況を予見し,今や「やわらかいハードウェア」の代表的技術となった動的再構成プロセッサの研究開発とその実用化に粘り強く取り組んできた.1997年には,LSIの動作中に回路構成を柔軟に変更できる世界で初めての「動的再構成」回路技術をSymposium on VLSI Circuitsで発表,続いて1999年のInternational Solid-State Circuits Conference ではその実動作LSIを発表した.これらをベースに2002年に発表したのが,プロセッサとメモリの二次元アレー上に擬似的なハードウェア群を構築し,それらを次々に切り換えて複数の機能を実現する動的再構成プロセッサ(DRP)である.
 受賞者らは,これらアーキテクチャ・回路面での研究開発と並行して,実用化の鍵を握るのはむしろ設計検証ツールであるとの理解のもと,長期的な展望に立ってその開発を精力的に推進した.LSI設計CADツールの高位合成技術を発展させ,C言語入力で一気に擬似ハードウェア群の設計検証をやり切る環境を実現した.この設計環境のユーザからは「これまで数人×数か月で行っていた複雑な設計が一人×一週間でできるようになり,生産性は桁違いに向上した」との高評価を得ている.
 更に,「やわらかいハードウェア」の実世界応用が,画像,音声等の大量のストリームデータを高速に処理する分野であることに着目し,DRP技術を同分野に絞り込んだSTP(Stream Transpose)エンジンとしてIPコア化した.この戦略と粘り強い事業開発活動が奏功し,2007年には業務用ビデオカメラに搭載された.更に,その後,大きな出荷台数を誇る民生用画像処理機器への適用も拡大している.いずれの機器でも,STPエンジン上の擬似ハードウェア群を入れ換えるだけで新しい機能が実現できることで,短期間での新製品投入や機能拡張に大きく貢献している.
 動的再構成技術は2000年頃に日米欧で多数のベンチャー企業が現れ過熱期を迎えたが,その後淘汰期に入り大きな産業的成長には至っていない.受賞者らは,過熱期前に研究に取り組み,淘汰期を乗り越え,独創的な着想を民生用製品にまで結実させ,大きな発展が期待されるレベルにまで成長させた.成功の要因としては,設計ツールが最終的な決め手と見据え,長期展望のもとでその完成度を高めた点,応用を画像処理中心に絞り,技術の新規性のみに頼らずユーザメリットの具現化に注力した点が大きい.本業績は,システムLSIの直面している限界を超え,LSIや電子機器の技術・産業の新たな発展をもたらすもので,学術面,産業面での貢献が顕著であり,電子情報通信学会業績賞にふさわしいものである.

 本研究の成果に対して、電子情報通信学会は、2011年、本村 真人(NEC)、粟島 亨(ルネサスエレクトロニクス)、藤井 太郎(ルネサスエレクトロニクス)に電子情報通信学会 業績賞 を贈った。

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動的再構成プロセッサ、システムLSI、やわらかいハードウェア、DRP技術
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