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GaNパワーデバイスを搭載した調光器対応LED電球用小形点灯装置の開発と実用化

GaNパワーデバイス搭載LED点灯回路の構成とスイッチング波形

図1 GaNパワーデバイス搭載LED点灯回路の構成とスイッチング波形

従来のインダクタ(上)と開発したインダクタ(下)の外観

図2 従来のインダクタ(上)と開発したインダクタ(下)の外観

従来形(左)およびGaNパワーデバイス搭載点灯装置(右)の基板

図3 従来形(左)およびGaNパワーデバイス搭載点灯装置(右)の基板

[従来技術]
 他の電力変換器と同様、既存のLED(発光ダイオード)電球用点灯回路に使用される半導体パワーデバイスは、Si(シリコン)を用いたMOSFET(金属酸化膜半導体型電界効果トランジスタ)が主流であり、これを数十kHz~100kHz程度でオン・オフ制御している。
一般に、回路方式やその動作条件は、使用するパワーデバイスの電気定格や能力に合わせて設定されるため、回路の性能はパワーデバイスに依存するところが大きい。Siパワーデバイスは実用化されて以来、電力変換器の高効率化や小形化、高機能化に大きく貢献してきたが、長年に亘る研究開発の結果、デバイスの特性を大きく改善することは限界に近づきつつある。従って、点灯回路のさらなる性能向上のためには、新たなパワーデバイスが不可欠である。

[解決すべき課題]
 本開発では、GaN(窒化ガリウム)が高速動作が可能であることに着目し、高周波数動作させることによって受動部品を小形化し、小形形状の点灯回路を開発することを目標とした。主な課題を下記2点に絞り、開発を行った。
・回路規模が小さく、高周波・低損失で動作可能な駆動制御方式を開発すること
・小形で低損失なインダクタを開発すること

[課題を解決するための手段と結果]
 GaNパワーデバイスは一般的にHEMT(High Electron Mobility Transistor)構造が採用され、ノーマリーオン特性を示す。スイッチングデバイスにはノーマリーオフ型デバイスが使用されることが多いが、GaNを用いたノーマリーオフ型デバイスは、GaNの低オン抵抗や高速スイッチング特性などを犠牲として実現することから、ノーマリーオン型を採用することとした。
●GaNパワーデバイス搭載のLED点灯回路および高周波での駆動制御技術
 点灯回路に採用した回路構成を図1に示す。回路方式は降圧コンバータの構成で、GaNパワーデバイスは2個のノーマリーオン型のFET(GaN1、GaN2)と、高速ダイオード(Di)で構成された専用のパワーモジュールである。また、GaNパワーデバイスを高速で駆動制御する小形自励駆動回路を搭載している。
回路動作について説明する。GaN1のゲート端子がインダクタL1の2次巻線に接続されており、GaN1のターンオンのタイミングを決定する。一方、GaN2はGaN1のターンオフのタイミングを決定するように動作する。GaN2のゲート端子は、LED電流をモニタするエラーアンプの出力に接続され、ゲート電位が制御される。この作用によって、GaN1およびGaN2に流れる電流ピーク値が決まり、結果としてLED電流が所望値となるようにフィードバック制御される。図1に示すように動作周波数は約1MHzである。また、電流臨界モードで動作するため、Diのリカバリ電流とL1のピーク電流値が抑えられ、高効率で動作できる。
●小形・低損失なインダクタの開発
 一般に動作周波数を高くすると、インダクタのサイズは小さくなるが、磁性材料の損失は増加する。そこで、高周波域での損失が少ない磁性材料を選定し、動作周波数とインダクタの体積をパラメータとして損失解析を行い、回路損失を最小とするインダクタの設計条件を算出した。その結果、図2に示すインダクタを開発、インダクタ損失を75%に、体積を20%にそれぞれ削減した。

[効果]
 LED点灯回路にGaNパワーデバイスを採用し、動作周波数を従来の10倍に高めることで、受動部品及び点灯回路を小形化した。これによって、位相制御調光回路を同一基板上に実装しながらも、図3に示すように基板面積を従来の点灯装置の40%まで小形化し、ランプ形状を白熱電球同等の大きさとすることができた。
 これらの技術を搭載し、位相制御調光器に対応したLED電球を2015年に実用化した(図4)。この製品は多くのメーカーから発売されている様々な調光器と組み合わせることが可能で、ちらつきの発生を抑制するとともに、明るさ0~100%の範囲で安定して滑らかに調光することができる。

[応用]
GaNパワーデバイスを搭載したLED電源として、本開発では扱う電力が比較的小さいLED電球用をターゲットとした。今後は、より大きな電力向けの電源へ展開するとともに、周辺技術の開発を行っていきたい。


 本研究の成果に対して、照明学会は、2016年、高橋 雄治(東芝ライテック)、大武 寛和(東芝ライテック)、吉岡 勇多(東芝ライテック)に照明技術開発賞を贈った。

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照明
(点灯装置)

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キーワード

窒化ガリウム、GaN、LED電球、電球形LEDランプ、調光
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