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部分放電の「サイクル平均放電電荷」導入による絶縁破壊予知

  • 写真なし岡本 達希
  • 写真なし田中 祀捷
電極試料の形状

図1 電極試料の形状

部分放電特性による電極試料の分類

図2 部分放電特性による電極試料の分類

 高電圧送電の進展によって送電ロスが減り、大きな電力の長距離送電が可能になった。特に、地下や海底を通す電力ケーブルの高電圧化は、大電力を都市の中心部に送ることを可能にした。その半面、高電圧にしたため、電線間あるいは電線と周りの構造物との間で短絡が起きやすくなり、電力ケーブルや機器の破壊から送電停止につながる恐れも強まった。短絡の前駆現象として部分放電が発生するが、電力ケーブルや機器の高電圧絶縁の健全性を評価する手法の一つとして「部分放電試験」が注目されていた。

 部分放電は印加交流電圧の各サイクルで発生する。通常の測定時間(秒オーダー)に無数の部分放電が発生するので、かつては一定の発生頻度を超える放電の大きさ(最大放電電荷)を高電圧機器の劣化指標として用いていた。ただ、これによって高電圧機器に絶縁欠陥が存在することが分かっても、的確な絶縁性能の評価や破壊予知は難しい。ところが1980年代初め、部分放電に関する印加電圧の位相角の特性量を新たに導入することにより、部分放電の形態を系統的に分類する手法が提案され、絶縁破壊が予知できるようになった。

 ここで新しく登場した部分放電パルス群の特性は「サイクル平均φ-q分布」である。これは放電を発生させる印加交流電圧位相角φに対する放電パルスqの分布のことで、「ひずみ度S」と「尖度K」を導入して種々の電極形状について分布形の特徴を実験的に解析して考察を加えた(図1図2参照)。

 まず印加電圧位相角を例えば200等分して、1.8度(1周期360度÷200)ごとの「位相角ウインドウ」に印加電圧の正のゼロクロス(位相角が0度の点)に近いものから番号を振り、数百サイクルにわたって部分放電を測定してその大きさをすべて記録する。そして最後に位相角ウインドウごとに部分放電の発生で移動した電荷の総和を計算する。この総和を測定サイクル数で除した値を「そのウインドウにおけるサイクル平均放電電荷」と呼ぶことにした。

 この平均放電電荷とウインドウ番号の関係を表すのが「サイクル平均φ-q分布」であり、この分布パターンが欠陥の種別などによって変化することを利用して、欠陥の種別や劣化の進行具合を推定する方法を考案した。例えば、金属と絶縁媒体の間に生じたボイド(微細な空隙)や絶縁体に囲まれたボイドなど、放電が発生している個所の性質に応じてφ-q分布のパターンや印加電圧依存性が異なることを明らかにしたのである。また逆に、これらの情報からボイド欠陥の種類を判定することもできる。

 提案された手法は世界に例を見ないユニークなものであり、高電圧機器やケーブルの絶縁診断に広く適用できるものであった。この技術に用いられた印加電圧の位相角と発生部分放電の大きさの関係(φ-n分布あるいはφ-q分布)は、その後の部分放電劣化診断技術を飛躍的に向上させる基本技術として世界中に広まった。

 本研究の成果に対して、電気学会は、1983年、岡本 達希(電力中央研究所)、田中 祀捷(電力中央研究所)に電気学術振興賞(論文賞)を贈った。

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高電圧、電気絶縁、部分放電、統計解析、機器絶縁、誘電・絶縁材料、放電
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