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分子複合化に基づく有機-無機ハイブリッド材料の創製

  • 中條 善樹中條 善樹
 中條善樹氏はこれまでに,有機高分子と無機物が分子レベルで複合化された新しい材料を創製してきた。これは従来の複合材料に見られる「貼り合わせ」ではなく,そのドメインを意識しないほどに組み合わせる「分子複合化」という新概念に基づくものであり,同氏はこの考え方を世界に先駆けて提示することにより,これまでにない新しい一群の有機︲無機ナノハイブリッド材料を生み出してきた。さらに,このハイブリッド化の概念を元素レベルにまで拡張することを提案し,「元素ブロック高分子材料」という新しい学術領域を開拓した。これらのハイブリッド材料は,これまでの有機高分子材料には見られない新しい光学・電子特性を有する先端機能材料として多くの応用が期待され,産業的に大いに注目されているとともに,材料化学の新分野を拓いたものとして学術的にも高く評価されている。以下に同氏の業績の概要を述べる。

1.有機-無機相互作用の設計によるナノハイブリッド材料の創製
 有機︲無機ナノハイブリッド材料の無機成分として,シリカ,アルミナ,チタニア,ジルコニア,バナジア等の種々の酸化物について,主としてゾル-ゲル反応を用いて有機高分子との対応する均一透明なハイブリッド材料の合成に成功した。その優れた均一性は,水素結合やπ-π 電子相互作用,イオン間相互作用,さらには疎水性相互作用,金属とリガンドの配位結合,ドナーとアクセプター間の電子移動,CH-π 電子相互作用,ホスト-ゲストの組み合わせ,ステレオコンプレックスの形成,などを利用できることが同氏によって明らかにされ,これらによりナノハイブリッド材料となる有機ポリマーと無機物の組み合わせが飛躍的に拡大された。
 さらに,無機物として金属ナノ粒子や炭酸カルシウムにも着目し,有機-無機相互作用を分子レベルで設計することにより,それぞれ対応する有機高分子とのナノハイブリッド材料を創出することができた。

2.新規機能性ナノハイブリッド材料の創出
 有機成分としてリグニンやキトサン,セルロースなどの天然有機未利用資源を出発物質としたハイブリッド材料を種々合成した。一方,ゾル-ゲル反応で無機マトリックスを形成させるのと同時に有機モノマーを重合させる,いわゆる「In-Situ 重合法」によっても均一なハイブリッド材料が合成できることを世界に先駆けて報告した。さらに,有機モノマーとして2 官能性のものを組み合わせることにより,有機マトリックスに架橋構造をもたせることもできる。有機ゲルと無機のシリカゲルが,お互いに共有結合はしていないが絡み合っている,いわゆるIPN(相互侵入網目)ハイブリッドと呼ぶべき材料となり,耐溶剤性に非常に優れているという特徴が見られた。有機︲無機ナノハイブリッド材料の一成分として,例えば,光応答性のアゾベンゼンやクマリン誘導体,Diels-Alder 反応可能なジエン,ジエノフィル等を有機高分子に導入して,シリカゲルとのハイブリッドを合成したところ,光や温度などの外部条件によって均一性,構造,組成等が変化するハイブリッド材料が得られた。動的共有結合を利用した刺激応答材料の先駆けとなる研究として特筆すべき成果である。

3.カゴ型シルセスキオキサン元素ブロック材料の創製
 カゴ型シルセスキオキサン(POSS)の剛直な立方体核から放射線状に有機側鎖が配置されているという特異な元素ブロック構造に世界に先駆けて着目し,その様々な特性を利用した新規材料を数多く創製した。例えば,POSS をポリスチレンやポリメタクリル酸メチル,ポリビニルアルコールなどの汎用プラスチックや高分子液晶などにフィラーとして少量添加することで,その熱的・機械的特性を飛躍的に向上させることに成功した。また,POSS の特徴を活かして,1 つの分子に8 個の電荷をもち熱安定性にも優れたイオン液体の合成に世界で初めて成功した。さらに,POSS の剛直な構造を利用した高感度・低毒性の新規MRI 造影剤の開発を行った。また,高フッ素化合物でありながら水溶性でもあるPOSS 材料の合成にも成功し,将来の19F MRI造影剤としての利用が強く期待されている。

4.ホウ素元素ブロックを用いた新規発光材料の創製
 ケトイミンホウ素錯体やジイミンホウ素錯体を元素ブロックとみなし共役系高分子に導入することにより,溶液状態では発光せず固体状態で強い発光を示す凝集誘起型発光(AIE)材料の合成に成功した。発光の波長(発光色)は構造設計(官能基の導入)により容易に制御することができ,近紫外から青~赤の可視光,さらに太陽光発電や生体プローブの分野で重要な近赤外発光,白色発光など,様々な発光色を発現することができた。また,有機成分である炭素と無機成分であるホウ素が分子レベルで複合化した元素ブロックであるカルボランに着目し,それを主鎖に導入した共役系高分子の合成に世界で初めて成功した。このポリマーも凝集誘起型発光を示す固体発光材料である。

 以上のように,中條善樹氏の研究は,これまでの複合材料に分子レベルでの相互作用の概念を積極的に導入し,有機化学的手法を用いることにより,新しい有機︲無機ハイブリッド材料を次々と生み出している点に特色がある。さらに,このハイブリッド化の概念を元素レベルにまで拡張した材料はこれまでにない光学特性や電子特性を示し,新しい学術領域を拓いた未来材料として国際的に大いに注目されている。

 本研究の成果に対して、日本化学会は、2015年、中條 善樹(京都大学)に日本化学会賞を贈った。

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キーワード

分子複合化、有機-無機ハイブリッド材料の創製、元素ブロック高分子材料、In-Situ重合法、刺激応答材料、カゴ型シルセスキオキサン元素ブロック材料、イオン液体の合成、凝集誘起型発光材料、共役系高分子の合成、固体発光材料
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