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配位プログラミングを用いる電子・光機能分子システムの創製

  • 西原 寛西原 寛
 配位結合の特徴を生かして分子ユニットを設計どおりに連結・融合する「配位プログラミング」を用いて,金属錯体の多核化やπ共役系の拡張に基づく高次構造を構築すれば,多重物性の発現が期待できる。さらに錯体と界面との組合せで外部信号の入出力ができれば,化学素子に展開できる。西原氏は,そのような構造や物性の多様性を秘めた「π 共役・レドックス遷移金属錯体系」およびその関連物質系に関して,多重物性を発現する新規分子システムの創製からユニークな物性の発見・解析,ならびに化学素子への展開にいたるまでの新しい研究分野を開拓した。以下に業績を紹介する。

1. π共役レドックス錯体ワイヤ修飾電極の作製と電子移動解析 
 西原氏は,π共役ビス(テルピリジン)錯体をモチーフとして界面分子ネットワーク構造の精密合成に成功するとともに,電気化学的な手法と理論解析によって,分子鎖内レドックス伝導,超長距離電子輸送能,電子輸送における表面ジャンクション効果,末端レドックスユニット効果,分子鎖形状効果など,π共役レドックス分子ワイヤの電子移動・電子輸送の特性を系統的,定量的に解明した。これらの結果は,分子回路を構成する各分子ユニットの組合せで電子特性を定量的に評価できることを示しており,単一分子エレクトロニクスの研究分野に大きく貢献した。

2. 配位πナノシートの創製
 西原氏は,液-液や気-液のような二相界面における温和な条件下での錯形成反応を用いることによって,サブミクロン厚の多層からナノメートル厚の単層・数層のナノシートまで合成できることを示した。このボトムアップ的な合成法では,配位子と金属イオンの組合せで多種のナノシートの構築や物性・化学特性の発現ができる。同氏が最初に報告した系は,ニッケラジチオレンπナノシートであり,初のレドックス活性かつ金属的電子物性を示す配位ナノシートであることを示した。2013年に報告されたこの研究の論文は世界中の研究を活性化し,その後多くの関連研究が報告されている。例えば,単層ニッケラジチオレンπナノシートは,二次元トポロジカル絶縁体となることが理論予測され,新規概念のデバイス創製へ大きな展開力を秘めている。 
 さらに同氏は,導電性パラジウムジチオレンナノシート,良好なエレクトロクロミック特性を示すビス(テルピリジン)錯体ナノシート,光電変換機能を示すビス(ジピリナト)錯体ナノシートの作製にも成功し,機能性錯体ナノシートの研究分野を先導している。

3. 生体光合成コンポーネントを用いるバイオ共役フォトセンサの開発 
西原氏は生物学や電子工学の研究者とともに,世界に先駆けて,光合成の生体コンポーネントである好熱性シアノバクテリアのフォトシステムI(PSI)中のレドックス階段の途中から分子ワイヤを通して電子を抜き取る方法を用いた独自の高感度バイオ共役フォトセンサを構築した。さらに金ナノ粒子の単電子移動特性を増幅する疎水的環境や電極基板の微小化,レドックスカスケードに組み入れる人工レドックス分子構造のチューニングなどによる高感度化に成功した。

4. 拡張メタラジチオレン多核錯体系の創製と電子物性の解明
 西原氏は拡張メタラジチオレン系を大きく発展させ,新しい物質群を開拓した。その1 つはユニークな電子物性,レドックス特性を示す三角形メタラジチオレンπ共役三核錯体群であり,この研究は上記のメタラジチオレンπナノシートの合成に発展した。また,独自に見いだした金属-金属結合生成反応を用いて様々なヘテロ金属クラスター錯体の合成と物性解明に成功した。さらに,π共役多核錯体からの高次ヘテロ金属クラスター錯体の創製にも成功した。

5. 外場応答錯体や金属ナノ粒子の創製と物性・機能解析 
 西原氏は,π共役錯体のさらなる機能拡張に着眼し,外場応答部位を組み込んだ多重物性錯体分子システムを構築した。例えば,有機フォトクロミック分子を配位子とする遷移金属錯体に関して,単一光源可逆異性化,記憶の深さ制御,多重安定状態生成,レドックス駆動異性化,光による磁性制御などを実現した。また,アクセプター分子(A)のエチニルアントラキノンとドナー分子(D)からなる共役DA系が,プロトン化により新規な含ピリリウム縮合環を含む多重原子価互変異性系を生成することを見いだした。その他,ラジカル配位子を含む金属錯体のSOMO-HOMO レベル逆転現象やレドックスや発光特性と連動した単一分子スイッチなど,異なる特性が連動する系を創製した。 
 同氏は,特異な性質を示す金属ナノ粒子系についても,新規合成法の開発,基板固定,単電子移動観測,ナノ粒子ネットワーク構築,触媒反応開発を行い,錯体化学的なアプローチの有用性を示した。 

 以上のように,西原氏の研究は,独自の視点と着想で創製した「π共役・レドックス遷移金属錯体系」とその関連物質系に関するものであり,錯体化学,電気化学,光化学を基点とする物質科学,物性科学,ナノサイエンス,ナノテクノロジーなどの広い分野にも波及するものである。よって,同氏の業績は日本化学会賞に値するものと認められた。


 本研究の成果に対して、日本化学会は、2015年、西原 寛(東京大学)に日本化学会賞を贈った。

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配位プログラミング、電子・光機能分子システム、π共役・レドックス遷移金属錯体系、配位πナノシートの創製、機能性錯体ナノシート、バイオ共役フォトセンサ、拡張メタラジチオレン多核錯体系の創製、物質科学、物性科学、ナノサイエンス、ナノテクノロジー
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