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常電導ゼロパワー吸引式磁気浮上制御の開発と実用化

  • 写真なし森下 明平
  • 写真なし小豆沢 照男
ゼロパワー磁気浮上制御方式のしくみ

図1 ゼロパワー磁気浮上制御方式のしくみ

永久磁石の吸引力特性

図2 永久磁石の吸引力特性

磁気浮上搬送システム

図3 磁気浮上搬送システム

搬送車とLIMの構成

図4 搬送車とLIMの構成

LIMコントローラと搬送車

図5 LIMコントローラと搬送車

 吸引式磁気浮上は、鉄製ガイドレールに対する電磁石の吸引力によって移動体などを非接触で支持する技術である。非接触状態の保持は一般に、浮上ギャップ長(浮上すき間の幅)や電磁石コイル電流を検出し、電磁石の吸引力を制御することによって行う。これに対して1988年、磁石ユニットを電磁石と永久磁石で構成する「ゼロパワー磁気浮上」方式が開発された。永久磁石の吸引力と浮上物体の重量がバランスするように、電磁石コイルの電流を制御するのがキーポイントである。磁気浮上といえば超電導磁気浮上鉄道(リニアモータカー)を思い浮かべるが、これは常温で扱えるので「常電導」と呼んで区別している。

 一つの磁石ユニットで負荷重量を浮上させる質点系の磁気浮上制御について説明しよう(図1)。いま磁石ユニットに負荷重量を加えると、ガイドレールとのギャップ(すき間)が広がり、電磁石が励磁されて磁石ユニットの吸引力が増す。吸引力が増せばギャップは狭まるが、これにより永久磁石による吸引力が増す。このとき、電磁石の励磁電流をゼロに収束させながら浮上状態を安定化させると、ギャップの狭まりで増した永久磁石の吸引力により負荷重量を支持することができる。つまり、支持荷重が増加すれば、磁石ユニットとガイドレール間のギャップが狭まって永久磁石による吸引力が増し、支持荷重が減少すれば、ギャップが広がって永久磁石による吸引力が減る(図2)。

 このゼロパワー制御では、浮上物体に加えられる外力が一定のとき、電磁石コイル電流はゼロに収束しており、外力が変動したときのみ電流が流れることになる。このため電力をほとんど消費することなく浮上物体を非接触で支持することができる。

 このゼロパワー磁気浮上制御の原理が初めて実用化されたのは半導体製造クリーンルーム内の磁気浮上搬送システムであった。このシステムでは、ゼロパワー制御で電力消費を最小とし、車載バッテリーからの給電により完全な非接触状態で搬送車を支持している。チリや騒音が発生しないので、クリーンルーム内の搬送に打って付けである。

 磁気浮上搬送システムは、クリーンルームの天井に敷設されたガイドウェイ、それに沿って浮上走行する搬送車、ウェハが収納されるウェハカセットを積み下ろしするステーションで構成される(図3)。磁石の吸引力により鉄製ガイドレールの直下に不即不離の状態で浮かぶ車両は、軌道の要所ごとに配置されたリニア誘導モータ(LIM=Linear Induction Motor)で加減速されて走行する。浮上用電源として車両にバッテリーが搭載されているので、集電装置を必要としない。支線分岐が非接触で容易に行えるのも特徴で、搬送経路上に退避線や追い越しレーンを設けることができる。

 搬送車を走行させるLIMは、車両側の二次導体板と軌道側の固定子で構成される(図4)。固定子はPWM (Pulse Width Modulation) 電圧形インバータとワンボードマイクロコンピュータを備えたLIMコントローラに接続されている。図5のように、車両に取り付けられたスケールを軌道側の光学式センサが読み取り、車両の位置と速度を基にLIM固定子の励磁周波数を演算して搬送車の走行制御を行う。

 走行制御には停止位置決め制御と速度制御の二つのモードがあり、上位のグループコントローラから指令される車両番号の搬送車を識別し、その搬送車に対して所定のモードで走行制御が行われる。また、所定の間隔で配置されるLIM固定子ごとにゾーンを設定し、複数の搬送車が同一ゾーンに進入しないように管理して衝突を防いでいる。

 その後、ゼロパワー磁気浮上制御方式を適用した製品やシステムが他の産業分野にも広がっている。

 本研究の成果に対して、電気学会は、1991年、森下 明平(東芝)、小豆沢 照男(東芝)に電気学術振興賞(論文賞)を贈った。

文献

[1] 森下明平,明石正邦,小豆沢照男、多点支持式剛体磁気浮上車両のゼロパワー制御、2000年、電学論D,Vol. 120, No. 4, pp. 509-519, 2000
[2] 森下明平,明石正邦、常電導吸引式磁気浮上系の浮上案内干渉制御、1999年、電学論D,Vol. 119, No. 10, pp. 1259-1268, 1999
[3] MIMPEI MORISHITA, TERUO AZUKIZAWA、A New Maglev System for Magnetically Levitated Carrier System、1989年、IEEE, Vol. VT-38, No. 4, pp. 230-236, Nov. 1989.
[4] TERUO AZUKIZAWA, MIMPEI MORISHITA、A Linear Induction Motor Control System for Magnetically Levitated Carrier System、1989年、IEEE, Vol. VT-38, No. 2, pp. 102-108, May 1989.
[5] 森下明平,小豆沢照男、常電導吸引式磁気浮上系のゼロパワー制御、1988年、電学論D,Vol. 108, No. 5, pp. 447-454, 1988
[6] 森下明平、磁気浮上搬送装置、1999年、計測と制御,Vol. 38, No. 2, pp. 579-580, 1999
[7] 森下明平、ゼロパワー制御によるウェーハカセット非接触搬送システム、1997年、トライボロシスト,第42巻,第11号,pp. 37-42, 1997

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磁気浮上、永久磁石、電磁石、励磁電流、ゼロパワー制御、磁気浮上搬送システム、非接触搬送、リニアモータ、クリーンルーム、産業電力電気応用、パワーエレクトロニクス、リニアドライブ
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