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半導体製造用ネガ型有機溶剤現像リソグラフィープロセスの開発

  • 後藤 孝浩後藤 孝浩
  • 西山 文之西山 文之
  • 漢那 慎一漢那 慎一
  • 椿 英明椿 英明
  • 白川 三千紘白川 三千紘
 本技術は,有機溶剤で現像することを特徴とする新規なネガ型フォトリソグラフィープロセス(NTI プロセス)の開発とその実用化に関するものである。
 近年のスマートフォンやタブレット端末等に代表される電子製品の目覚しい進歩は,その心臓部にあたる半導体素子の高性能化により支えられている。半導体素子の高性能化のためには,微細な回路パターンを形成するフォトリソグラフィー技術の進歩が不可欠である。これまで,フォトリソグラフィーの微細化は露光装置光源の短波長化が牽引してきた歴史があり,現在は,波長193nmのArF エキシマーレーザーが量産適用されているが,ArF光源での微細化もすでに限界を迎えつつある。一方,次世代の微細化を担うと期待されていた波長13.5nmのEUV露光装置の導入は,当初の計画に対し10 年以上も大幅に遅延している。このような背景から半導体業界では,今後の微細化を可能とする新規なパターニングプロセスの登場が強く望まれていた。

1.NTI プロセスの開発
 受賞者らは,露光光源の波長はそのままに従来のポジ型アルカリ現像プロセスによる微細化の限界を突破する,革新的なNTI プロセスを考案した。
 フォトリソグラフィーでは,あらかじめ回路パターンが切り抜かれたマスクを通してフォトレジスト膜上にレーザー光を照射するため,マスク開口部の寸法が露光波長よりも小さくなると十分な光強度が得られず,パターンが解像できなくなる。微細な溝パターンやホールパターンを形成する際,従来のポジ型プロセスを用いるとマスクの開口部を露光波長以下に小さくする必要があるため微細化が困難であった。この問題を解決するためには,マスクの開口部を大きく設計できるネガ型プロセスが必要となるが,ネガレジストとして古くから知られている架橋反応を利用した系では,反応制御や現像不均一性の観点からパターニング精度が不十分であり,先端プロセスでの量産適用は不可能であった。これに対し受賞者らは,現像液を従来のアルカリ水溶液から有機溶剤へと変更することで,従来ポジパターンを反転したネガパターンを形成するという逆転の発想を着想した。これにより,反応制御技術として確立されている極性変換型ポジレジストの設計を活用できるとともに,架橋ネガレジストとアルカリ水溶液の組み合わせ時に大きな問題であったレジスト膜の膨潤による現像不均一化が起こりにくいという利点も得た。
 しかし,NTI プロセスにも,アルカリ水溶液を用いたポジ型プロセスに比べ現像時の溶解コントラストが小さい問題があった。受賞者らは,フォトリソグラフィーの素過程である①露光・酸発生工程,②加熱・脱保護工程,③現像工程の各工程でコントラストを最大化するための素材設計を検討し,NTI専用レジストおよび現像液を開発した。これら最適化された材料をNTIプロセスに適用することで,従来ポジ型プロセスでは困難であった微細パターンの解像力を飛躍的に向上させ,世界で初めてArF 露光による32nmパターンの解像を可能とした。

2.本技術の実用化と社会,環境への貢献
 本技術の優位性は業界内で広く認められ,多くの大手半導体メーカーが新たな標準プロセスとして,本技術を先端半導体製造へ適用することを決定している。本技術は,EUV露光装置開発の遅延の影響で不透明となっていた20 nm 世代以細の微細化を可能とし,14nm,10nm,7nm 世代と長きに渡り最先端半導体製造へ適用される見込みとなっている。来るスマート社会の実現のために半導体微細化は不可欠な要素であり,それを可能とした本技術の社会貢献度は非常に大きい。
 2020年には,世界中で現在の4倍にあたる500億個ものデバイスがインターネット接続されるとも言われており,エネルギー消費の増大は大きな懸念である。半導体の微細化は,1チップあたりの半導体製造コスト削減,および,製造された半導体素子の駆動電力削減を可能とする点においても重要である。また,本技術は,医薬用外毒物である従来ポジ用現像液(TMAH 水溶液)を使用しないという点においても環境負荷低減に寄与しており,省エネルギー化への貢献と合わせグリーン・サスティナブルな技術であると言える。


 本研究の成果に対して、日本化学会は、2014年、後藤 孝浩(富士フイルム株式会社)、西山 文之(富士フイルム株式会社)、漢那 慎一(富士フイルム株式会社)、椿 英明(富士フイルム株式会社)、白川 三千紘(富士フイルム株式会社)に化学技術賞を贈った。

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